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申 惠丰 [SHIN Hae Bong]

申 惠丰 [SHIN Hae Bong]

今日の国際社会と人権

第1回 2021/11/6(土)
法学部法学科 教授
申 惠丰 [SHIN Hae Bong]

第二次世界大戦後、今日に至る国際社会では、すべての人の人権尊重を掲げた国連のもとで、人権が普遍的な価値として共有されています。1948年の世界人権宣言は、国際的な人権基準として最も基本的なものですが、その後、多くの国が独立して国際社会の仲間入りをしたことや東西冷戦が終結したことをふまえてウィーンで開かれた1993年の世界人権会議でも、世界人権宣言が掲げる人権の普遍性が再確認されています。国連では、人権問題の主流化を受けて2006年に「人権理事会」が発足し、日本も長年この理事会の理事国を務めて、人権問題に対するコミットメントを国際的に表明しています。また、世界人権宣言は国家だけでなく国際社会のすべての人と機関にも向けられていることから、近年では、「ビジネスと人権」という文脈でも、企業がその活動において遵守すべき人権基準として、世界人権宣言をはじめとする国際的な人権基準が使われるようになっています。昨今日本でもよく耳にするSDGs(持続可能な開発目標)も、ジェンダー平等、貧困への取り組みなど、人権の視点と相通ずる内容を多く含んでいます。
 他方で、国際社会における人権の実現はいろいろな面で課題に直面していることも、多言を要しません。法的根拠もない武力行使によって自国のエゴを押し付け、他国の秩序を崩壊させる(米英によるイラク攻撃の例)ような、武力に頼るミリタリズムの跋扈とその悪弊(暴力の横行、子どもを含む民間人の多大な犠牲)は最たる問題の一つでしょう。イラク戦争の結果生まれたIS(イスラム国)勢力はその後、世界中でテロ行為を引き起こしています。その他にも、グローバル化した経済の中でますます広がる富裕層と貧困層の格差の拡大も深刻で、非正規雇用の増大や、技能実習の名目での低賃金外国人労働者の増加、子どもの貧困(=子育て世帯、特にひとり親家庭の貧困)の悪化など、日本でも、教育や家族生活、適切な労働条件などに十分にアクセスできない人々の存在が社会問題になっています。コロナ禍でのDV(家庭内暴力)や子ども虐待の増加も、世界共通の現象です。
 しかし、すべての人が人間らしく生きる権利をもつという人権の理念は、困難な状況でこそ大きな意味を持ち、力を発揮しうるはずです。この講義では、国際社会で認められている人権の考え方についてみた後、主に日本の人権状況に対して、憲法とともに、国際的な人権基準も用いて考えていきます。また、青山学院大学法学部の「ヒューマン・ライツコース」でのこれまでの授業実践も紹介しながら、人権を守るという目的意識を持って法を学び、活かすことの大切さにも言及したいと思います。

プロフィール

青山学院大学法学部法学科 教授
申 惠丰 [SHIN Hae Bong]

1966年東京生まれ。青山学院大学法学部卒業、ジュネーブ国際高等研究所修士課程修了、東京大学法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。現在、青山学院大学法学部教授、法学部長。専門は国際法・国際人権法。著書に『国際人権法―国際基準のダイナミズムと国内法との協調〔第2版〕』(信山社、2016年)、『友だちを助けるための国際人権法入門』(影書房、2020年)、『国際人権入門―現場から考える』(岩波新書、2020年)など。