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人権がいかに国際機構を動かしているか――国際関係論の観点から

大道寺 隆也 [DAIDOUJI Ryuya]

大道寺 隆也 [DAIDOUJI Ryuya]

人権がいかに国際機構を動かしているか――国際関係論の観点から

第3回 2021/11/20(土)
法学部法学科 准教授
大道寺 隆也 [DAIDOUJI Ryuya]

国際機構 (international organizations、『国際組織』とも) とは、複数の国と国とが合同で設立する組織体のことである。国際連合(国連)や世界保健機関(WHO)、欧州連合(EU)といった機構は日々のニュースでも頻繁に取り上げられる。本講義では、国際機構と人権がどのような関係にあるか、とりわけ、人権がいかに国際機構を動かしているかについて、国際関係論(≒国際政治学)の観点から考えていく。
国際機構と人権のかかわりは深い。国際機構には「なんだか善い存在」というイメージがしばしば伴うし、当然人権を重視するものと思われがちである。例えば、国連は、「人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること」を目的の一つに掲げている(国連憲章1条3項)。これはただのお題目ではない。国連や、その他多くの国際機構が、世界の人々の人権を守るべく活動しているのは事実である。しかしそうした取り組みは、実を結ばないこともしばしばある。
そこで本講義は、次の3つの問いについて考察していく。第一の問いは、「そもそも国際機構はなぜ人権を守ろうとするのか」である。国際法学者は、「(まさに上述した国連憲章のような)法でそう定められているから」と答えるかもしれない。一方、国際関係論では、総じてもう少しシニカルに、「法で人権を守るように定めていても、実際に各国や国際機構がそうするとは限らない」と考える傾向がある。「人権を守るべきという法・規範の背後には別の意図があるかもしれない」とか、「人権を守るべきだという主張は口先だけのものかもしれない」などと考えて、まさに「人権がいかに国際機構を動かしているか」を問うのである。本講義前半では、国際機構における人権をめぐる政治について、国連やEUの例を引きながら考えてみたい。
さて、先ほど、「法で人権を守るよう定めていても、実際に各国や国際機構がそうするとは限らない」と考える傾向が国際関係論にはあると述べた。実は、国際機構が人権侵害を起こす例は実際にある。意外かもしれないが、国際機構は常に人権を守ってくれる善い存在ではないのである。そこから、本講義の第二・第三の問いが生まれてくる。第二の問いは「なぜ・いかに国際機構が人権侵害を起こすか」であり、第三の問いは、「国際機構による人権侵害をどう正すか」である。本講義後半では、テロや難民といった国際的難題を前にして生じた国際機構による潜在的な――ときに露骨な――人権侵害と、それを正す試みの例を紹介する。こうした作業を通して、最終的には、「なんだか善い存在」という国際機構のイメージをアップデートしていきたい。

プロフィール

青山学院大学法学部法学科 准教授
大道寺 隆也 [DAIDOUJI Ryuya]

東京外国語大学外国語学部卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、同博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員(DC2)、早稲田大学政治経済学術院助手、同助教、同講師(任期付)を経て、現在青山学院大学法学部准教授。専門分野は国際機構論。主な著作に、『国際機構間関係論――欧州人権保障の制度力学――』(信山社、2020年)など。