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第3回 2022/11/19(土)
経済学部経済学科 教授
矢吹 初 [YABUKI Hajime]

GISでは、さまざまな情報を地図上に提示することで、従来わからなかった新しい知見を獲得することができます。
わたしたちは生活の中でさまざまなものを見ています。店舗での買い物では、まず商品を見ることから始めるのです。また携帯端末上に表示されるさまざまな情報も見ることから始まります。このようにわたしたちは見ることからさまざまな情報を得ています。視覚から得る情報である視線情報は、認知情報の中でももっとも重要なものです。
GISシステムで、地図に視線情報を統合することで有益な知見が得られることが期待できます。
現在、自然災害に対して多くの防災行政が実施されています。防災掲示や安否確認などの多くは見ることから始まります。また道路などもその形状や環境などから事故が発生しやすい場所があることが知られています。対向車が見づらい道路形状や景観のため注意が散漫になりやすいといった事故原因は視線情報がもたらすものといえます。
地図情報に視線情報を加えることで、地図のみではわからない知見を得ることが期待できます。
 本講座では、文部科学省私立大学戦略的基盤形成支援事業(2015年採択)において実施した「視線情報と地理情報の統合」研究成果をもとに、GISと視線情報の統合によって得られた結論の一部を紹介します。
人間の知覚には順化効果やアナウンスメント効果、非注意性盲目などが知られています。馴化効果とは日常生活のなれのことです。アナウンスメント効果とは、事前の情報により個人の行動が変化するという現象です。非注意性盲目とは、特定の対象物に視線が集中することで、周辺視野が縮小して、周辺に存在しているはずのものを認知できなくなる現象です。
 これらの認知特性は、防災や交通事故などにも影響を及ぼす重要な性質である。地理情報と視線情報の統合を通じて、地理的環境と認知特性の関連性を検証する。
参考文献
矢吹初、高橋朋一「視線計測のエラー率の傾向-視線情報と地理情報の統合-」『経済研究』Vol.12, PP.83-109, 2020.
矢吹初「視線計測実験による認知特性に関する一考察」『経済研究』Vol.12, PP.111-134, 2020.

プロフィール

青山学院大学 経済学部経済学科 教授
矢吹 初 [YABUKI Hajime]

東京大学経済学研究科博士後期課程満期退学
現在、青山学院大学経済学部教授。専門分野は財政学。主な著書に『地域間格差と地方交付税の歪み-地方財政の外れ値の探索-』(共著 勁草書房 2008年)、『市町村合併のシナジー効果-改革時代の自治体「意識」の分析-』(共著 日本評論社 2012年)などがある。