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森本 麻衣子 [MORIMOTO Maiko]

森本 麻衣子 [MORIMOTO Maiko]

戦争、貧困、差別・・・人権問題をどう語るか、教えるか

第5回 2021/12/4(土)
法学部法学科 准教授
森本 麻衣子 [MORIMOTO Maiko]

大学教育において「国際社会共通の価値としての人権」を教えるうえで、どのようなアプローチが有効だろうか?学生たちの主体的な学びを促すためには、人権という国際的価値が、今日の法、政治、報道、企業活動などのありかたを大きく左右する(だから学んでおかなければならない)、という外的な動機づけを示すだけでなく、彼らの価値観に内的に働きかけることもまた重要なのではないか?すなわち、人権の観点から私たちの世界の抱える諸問題を考え、語り、行動する態度は、他ならぬ「私」が他者とともに豊かに生きていくうえでの鍵となる、という実感を学生たちの中にいかにして育むか、という問いと、教員は真摯に向き合うべきではないか?だがそもそもそうした内的変容の契機を、教室という空間において、教員からの押しつけでなく、学生の個性と自発性に依って創り出すことは、どうすれば可能になるのだろうか?講座最終回となる本講義では、講師が上記のような問題意識にもとづき試行錯誤してきた大学教育実践について報告し、21世紀の世界が必要とする人権教育について、ご参加の皆様とともに考えたい。
講師は本学法学部で「戦争・紛争と人権」「貧困と人権」などの科目を担当し、また昨年度より教養科目にあたる「青山スタンダード」でもマイノリティの視点から日本の法と社会を考える科目を提供している。講義は内容的にはそれぞれ戦争、貧困、差別といった異なる人権課題を扱うが、方法論においては、そうした喫緊の人権状況を1.ドキュメンタリーなどの映像資料によって「可視化」し、2.紙上フォーラムやディスカッションにおいて学生相互間で「言語化」し、3.講義や文献課題によって長い時間的射程のなかに位置づけて「歴史化」する、という3本の柱を共有している。言い換えれば学生たちは、1.映像は現実を部分的に切り取ったものにすぎないという限界を意識したうえで、映像から人間の苦しみのリアルを最大限に汲み取るよう促され、2.映し出された人権状況はどう問題なのか、自分がいま生きている現実とどのようなつながりがあるのか、などを自由に考えて自分の言葉で表現し、クラスメートや講師からフィードバックを受けるとともに、3.それら人権課題の発生や解決模索の歴史的経緯について課題文献をひもときながら学んでいくことになる。本講義では、グローバル社会の一員としての主体的な人権の学びにおいて、上記の方法論がもつ意義や効果、今後に向けた課題について、具体的な授業実践事例を通じて、学生たちの実際の感想も紹介しつつ明らかにする。会場の皆様からのご質問・ご意見も(対面形式であれオンラインであれ)広く伺うことができれば幸いである。

プロフィール

青山学院大学法学部法学科 准教授
森本 麻衣子 [MORIMOTO Maiko]

東京大学法学部卒業後、独立ジャーナリストのグループであるアジアプレス・インターナショナルを経て、カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了(文化人類学博士)。専門分野は歴史人類学、法人類学。共著にヒューマン・ライツ教育研究会編『ヒューマン・ライツ教育:人権問題を「可視化」する大学の授業』(有信堂高文社、2015年)、金敬黙編著『越境する平和学:アジアにおける共生と和解』(法律文化社、2019年)、訳書にレイ・ベントゥーラ著『横浜コトブキ・フィリピーノ』(現代書館、2007年)等。