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SDGs関連研究補助制度 2024年度採択課題

グローバル生産から国内生産への回帰:需要プロセスの分解によるデュアルソーシングモデルの提案

研究者:細田 髙道

本研究は、海外と国内(合計2か所)に生産拠点を持つサプライチェーンを想定し安定供給、コスト経済性そして持続的社会の実現を目指し、それらを同時達成するにはどのように国内外の2拠点を使い分け活用すべきかについて、主に数理モデルを活用・考察し施策を提案する。本研究の成果は、昨今の新型コロナウィルスや紛争によるサプライチェーン分断への対応についても応用することが可能である。また、既往の研究が見逃してきたコスト経済性とのトレードオフ関係の発生メカニズムや緩和施策、そして新たな対応方法の存在を数理的に見出すことも本研究の目的の一つである。

ポストヒューマニズム的視点からの持続可能な英語教育

研究者:菊池 尚代

ポストヒューマニズムとは、伝統的な人間中心主義的な考えから生態系の恩恵に視点を移すアプローチで学際的に応用されている。本研究では、このアプローチに基づいたトランスラングエージング(国や文化の枠を超え流動的で主体的な言語形式)にAI技術を取り入れた、高等教育向けの英語教育モデルの構築を試みる。まず英語とトランスラングエージングの発祥地であるブリテン島に住む人々の英語や英語に対する考え方の変化を調査する。続いて多文化・多言語の国や地域に留学をした日本人学生に、英語習得の経験を聞き分析する。さらに持続可能な社会的平等の実現を目的とする英語教育に最新のAI技術はどのように貢献できるのか、その活用法を探る。

環境調和型合成による新規光学活性アズレン誘導体の合成

研究者:武内 亮

アズレン骨格は多くの天然物に見られ、鎮痛作用などの薬理活性が知られている。光学活性アズレンには様々な薬理活性や新規な物性が期待されるが、光学活性体の効率的供給がなされないために、生物活性評価や物性評価が進展していない。本研究では、環境調和型反応を用いて、光学活性アズレンの効率的合成法の確立を行う。

「気候の安全保障」と国際平和活動:理論から実践まで

研究者:藤重 博美

本研究では、「気候の安全保障」に着目し、気候変動(特に地球温暖化)が引き起こす安全保障上の諸問題を、国際的な平和活動がいかに軽減できるかを明らかにするため(1)理論的検討と(2)実践的な改善策の検討を行う。(1)では、従来は社会経済的な課題としてとらえられてきた気候変動の問題が「安全保障」上の脅威とみなされるようになった経緯と概念上の変遷を「安全保障化(securitization)」の理論的観点から検証する。(2)では、気候変動によって生じる諸問題のうち、とりわけ深刻な武力紛争の増加に対し、国際的な平和活動(特に国連平和活動:UN Peace Operations)がいかに事態の改善に資するかを研究する。

学習における筆記行動のセンシングを可能とする下敷き型デバイスの開発

研究者:伊藤 雄一

学習者の学習状況を知ることは、学習者本人の手助けとなるだけではなく、教育者にとってもどのように教育を進めるかについて重要な手がかりとなる。情報技術を用いた学習状況の把握は、客観的なデータに基づくものとなり、様々な応用が考えられる。学習状況の把握のために、本研究では学習者の筆記行動に注目し、その筆記行動を様々なIoT技術を利用することで収集し、解析することで学習者にとって無意識に筆記行動をセンシングすることを目指す。得られた情報から筆記量や筆記速度、さらには筆圧変化などの特徴量を抽出し、理解状況推定や集中度推定、授業参加度推定などの応用への利用を目指す。

感覚過敏を有する精神障害の方々に適応した落ち着く環境調整の開発

研究者:木村 正子

 感覚過敏を有する精神障がい者らがパニックとなる要素を把握し、環境調整手法によりパニックを軽減させることで社会における活躍に繋げ、寛容で温かい共生社会のDEI(Disability, Equality, Inclusion:障害性、平等性、共生)を目指す。現在に至るまで、外部の刺激を遮断し心地よい多感覚刺激を提供する、落ち着くための空間「カームダウンスペース」を作成し実験を実施した。
 本研究では、生体センサ情報に合わせて照度を適応させるなど当事者一人ひとりに合わせたより深い安心感を与えるための手法を開発し、その効果を検証する。そして、より落ち着きを取り戻すことが可能な空間の創出を目指す。

繊維産地の持続的活性化に関する考察

研究者:宮副 謙司

 全国各地で繊維産地を形成する企業群は、地域経済の停滞、衣料需要の低迷を背景に、長年苦しい経営状況にある。一方で、その一部では独自の創造性や技術の専門性の高い企業が、海外評価も得て生き残り、存在感を高めている。また繊維産地の川上・川中企業がネットを介し消費者と直接つながり新たな販路を見いだす動きや、近年の民藝ブームから着目される繊維産地のクリエーターも増加している。 
 本研究は、そのような繊維産地の持続的活性化の動きを全体俯瞰するとともに、毛織物・綿織物・絹織物・合繊・ニットの5領域の代表的産地とその主要企業について事例研究を行い、持続的活性化の戦略モデルの導出を試みるものである。

タイとメキシコにおける国内格差:多面的な比較研究

研究者:咲川 可央子

 タイとメキシコにはいくつかの共通点がある。両国ともかつて対外債務危機に陥った後に構造調整を行い、経済自由化政策への転換が功を奏して自動車産業や電気電子産業を中心に海外直接投資を引きつけて経済成長を遂げた。国境を越えた工程間分業「グローバル・バリュー・チェーン」に盛んに取り込まれたものの、大きな国内格差という社会問題を抱えながら、なかなか先進国入りできずに停滞する「中進国の罠」にはまっていることも共通している。本研究では、共通点を持つものの比較研究されてこなかったタイとメキシコを事例に、国内格差の構造を多面的に比較しながら明らかにし、格差を縮小するためにはどのような政策が必要であるかを検討する。

大学生のグローバルリーダーシップ育成 ―JEARN Youth Projectでの国際協働学習におけるファシリテーションを通して―

研究者:勝又 恵理子

 国際社会で活躍できる人材を育成するために、大学生のグローバルリーダーシップ育成への関心は高まり続けている。本研究は、大学生のファシリテーションスキルとグローバルリーダーシップの育成について実践を通じて探るものである。
 研究対象は、海外の小学生~高校生とSDGsにつながるプロジェクトをベースに、オンラインでの国際協働学習を推進する「International Education and Resource Network (iEARN)」に参加した大学生である。異なるテーマ、年齢、国、交流形式におけるファシリテーションの成果と課題を分析し、グローバルリーダーとしてのスキル向上方法を明らかにする。