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EVENT(学外講座)

SCHEDULED

2022.09.24 - 2022.10.22

TITLE

【青山キャンパス公開講座】ジェンダーと学問研究

講座概要

対面またはオンライン配信
2022/9/24 ~ 10/22 毎土曜日 11:00~12:30(初回のみ12:40)

2021年4月に設立したジェンダー研究センターは、青山学院と社会におけるジェンダー平等と性の多様性の尊重に貢献することを目指し、多くの学部、学問分野にわたる専任教員が関わって運営されている。今回の講座では、それぞれの学問研究にジェンダーの概念を取り入れることで、どのような変化が起きているかを語る。

講座申し込み

第1回 2022/09/24(土)グローバル社会とジェンダー人類学

地球社会共生学部地球社会共生学科 助教
菅野 美佐子 [KANNO Misako]

人類学という学問を耳にしたことはあっても、それがどういう学問なのか漠然としたイメージしかない人は多いのではないでしょうか。この学問では、世界の様々な地域の社会・文化的事象や観念について、フィールドワークを通じて情報を収集し、民族誌を記述しながら、事象の背後にある人々の思考様式や社会関係を探究します。日本人からすれば一見して不可解だと思うような行動や習慣も、それを実践する人々にとっては自明の理由が少なからず根底にあるものです。人類学者は特定の地域社会に焦点を当て、そこに暮らす人々と長期的に時間をともに過ごし、言語を習得し、信頼関係を獲得しながら、その理由を理解し、その社会に特有の文化現象の特定と、複数の地域社会に通底する汎用的な社会・文化的理論の構築を同時に試みるのです。
 では、この学問からジェンダーを捉えようとすると、どのようなことが見えてくるでしょうか?男と女、あるいは、その両方の性的特徴をもっていたり、そのどちらにもあてはまらない性を自認する人々の位置づけやイメージは、各社会で独自に構築されてきました。「結婚」という事象一つをとっても、婚姻関係の結び方、妻方/夫方などの居住形態、父系/母系といった相続形態などはそれぞれ違うものです。なかには死者との結婚が認められている社会や、女性同士の婚姻が慣習として執り行われる社会もあり、そこにはその社会ならではの合理性が働いているのです。
 この講義では、ジェンダーにまつわる観念や行為がいかに社会・文化的構築物であるのかを理解するとともに、それらを多様な社会文化の中に相対的に位置づけることの意義について考えます。このような人類学的視点は、グローバル社会の中でジェンダーに限らず、人種や階級を含めて他者を理解し、他者と共生するうえでも必ず役立つでしょう。

<プロフィール>
青山学院大学 地球社会共生学部地球社会共生学科 助教
菅野 美佐子 [KANNO Misako]

広島大学大学院修士課程、総合研究大学院大学博士課程修了。博士号(文学)を取得後、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京福祉大学講師、人間文化研究機構/国立民族学博物館特任助教を経て現職。専門は文化人類学、インド地域研究。
共著に、『21世紀国際社会を考える多層的な世界を読み解く38章』(旬報社、2017年)、『持続可能な開発における〈文化〉の居場所/「誰一人取り残さない」開発への応答』(春風社、2021年)、『現代アジアをつかむ』(明石書店、2022年)、『南アジアの新しい波・下巻―環流する南アジアの人と文化』(昭和堂、2022年)など。

第2回 2022/10/1(土)ジェンダーのデータを読む

社会情報学部社会情報学科 教授
寺尾 敦 [TERAO Atsushi]

「ジェンダー」と「調査」でGoogle検索をすると、内閣府男女共同参画局による「男女共同参画社会に関する世論調査」など、ジェンダーに関連したさまざまな調査が実施されていることがわかる。ジェンダーに関する現状を明らかにし、問題があれば解決を目指すために、調査は重要な役割を担っている。
この講義では、ジェンダーに関連した調査をいくつかとりあげ、その統計から得られた知見を説明する。さまざまな調査がある中で、統計法に基づいて国や地方公共団体によって実施される公的な調査に、特に焦点を当てる。こうした調査によって作成される統計を公的統計と呼ぶ。講義では、ウェブサイトで公開されている公的統計のデータや報告書など、公的統計の調べ方についても説明する。ジェンダーについては、内閣府男女共同参画局の「基本データ」にまずはあたってみるとよいだろう(https://www.gender.go.jp/research/)。ジェンダー問題に限らず、何らかの社会的な問題に関心があるとき、公的統計を調べることは重要である。そのための入口として、以下の2つのウェブサイトが挙げられる。この講義の予習として、少しのぞいてみてほしい。

政府統計の総合窓口(e-Stat)
https://www.e-stat.go.jp/
国立国会図書館リサーチナビ 日本-公的統計
https://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/JGOV-tokei.php

 青山学院および青山学院大学のウェブサイトでは、学部の職位・男女別教員数など、ジェンダー・バランスを検討するための基礎となるデータが公開されている。これらデータをもとに、青山学院法人役員(執行部、役員、評議員)、大学専任教員、大学役職員のジェンダー・バランスの現状を分析した。講義の最後に、この分析結果について紹介する。

<プロフィール>
青山学院大学 社会情報学部社会情報学科 教授
寺尾 敦 [TERAO Atsushi]

和歌山大学教育学部小学校教員養成課程卒業。東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻博士課程修了。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員(PD)、カーネギーメロン大学博士研究員、北海道大学博士研究員を経て、2007年度より青山学院大学に勤務。現在、社会情報学部教授。専門は認知科学、教育心理学、教育工学。

第3回 2022/10/8(土)ラテンアメリカ史研究と女性

文学部史学科 教授
安村 直己 [YASUMURA Naoki]

ラテンアメリカと聞いて思い浮かべるのはどんなイメージ だろうか。世代や ジェンダーにより答えは様々だとはいえ、「 マッチョ」な男たちの世界と言われてそれは違うと感じる日本人は少ないのでは ないか。「 マッチョ 」な 男たちが闊歩する社会というラテンアメリカ・イメージ は 、けっして 日本人の無知の産物などではない。反対に、かなり正確に現代ラテンアメリカ社会 およびその歴史を捉えているとみるべきだろう。
そもそも「マッチョ 」という単語自体、おそらくラテンアメリカから米国を 経由して第二次世界大戦後の日本に流入してきたと思われる。戦後日本社会 に奔流のように押し寄せた米国文化の一つのピースにすぎなかった「マッチョ」は、1970年代 以降、次第に大衆文化に浸透し、いまでは『 広辞苑 』 に収録されるにおよんでいる。注意すべきは、「マッチョ」が 、米国とラテンアメリカ文化との出会いを通じて形成され、流通したという事実である。 米国社会での「マッチョ」のメジャー化こそが、日本人のラテンアメリ カ・イメージを規定 しているのだ。
この講義では、日本社会においてすでに知られている米国社会における男性優位主義についてではなく、その原型としてのマッチョ、マチスモを生み出したラテンアメリカの歴史を紐解 いていく。そのうえで、ラテンアメリカ史 研究が長年ジェンダー規範に縛られ、マッチョ、マチスモの歴史をジェンダー視点から読み解 けなかったメカニズムを検討する。最後に 、ジェンダー視点、さらにはその派生系としてのLGBT視点などが近年、ラテンアメリカ史研究にいかなる新たな地平を開きつつ あるのかを、概観してみたい。
こ れは また、「ジェンダーと学問 研究」という本公開講座共通のテーマに 対し、一つの個別研究分野からアプローチしようとする、一つの試みでもある。

<プロフィール>
青山学院大学 文学部史学科 教授
安村 直己 [YASUMURA Naoki]

東京大学文学部卒、同大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学、国立民族学博物館、東京外国語大学を経て現在 青山学院大学文学部史学科教授。 専門は ラテンアメリカ 社会史、スペイン帝国史。
主な著書『岩波講座世界歴史14:南北アメリカ 大陸 』、『 コルテスとピサロ―遍歴と定住のはざまを生きた征服者 』、ほか。

第4回 2022/10/15(土)フェミニスト聖書解釈とは

理工学部 教授
福嶋 裕子 [FUKUSHIMA Yuko]

フェミニスト聖書解釈は、1960年代に始まった第二波フェミニズムの影響を受けて当時の聖書学者たちの中から新しい視点や解釈の仕方が提出され発展してきました。フェミニストの聖書学またフェミニスト神学が一様に確立された方法論や視点や目的を共有しているわけではありません。しかし女(フェミナ)という概念に疑問を投げかけるという点では一致しています。この講座では、理論と具体例の両面からフェミニスト聖書解釈について理解を深めていきます。
第一にフェミニズムについて概略的な理解を得ます。フェミニズムの多様な見解を整理するのは不可能に近いほどですが、その方向性から大きく四つに分けることができるでしょう。リベラル•フェミニズム、文化的フェミニズム、ラディカル•フェミニズム、社会主義的フェミニズムです。
第二に、1980年代から常にフェミニスト聖書学を牽引してきたエリザベス•シュスラ•フィオレンツァのフェミニスト聖書解釈が、他の聖書解釈とどのような点で異なるのかを「解釈のパラダイム」という点から理解していきます。聖書解釈には四つのパラダイム(教義的、歴史的、文化的、修辞的)があり、それらは互いに対立することがあります。ですが実際には解釈者は、複数のパラダイムの方法論を併用することがあります。フェミニスト聖書解釈は、基本的に修辞的パラダイムに属していますが、歴史的パラダイムの方法論を総合的に用いることがあります。
第三に、マグダラのマリアを具体例として取り上げます。中世に集大成された『黄金伝説』ではマグダラのマリアは「悔悛した娼婦」とみなされています。しかしこの伝説は、福音書の複数の物語を合成することで生じてきたにすぎません。マグダラのマリアと混同された七つの物語を概観し、マグダラのマリアが「悔悛した娼婦」ではないことを明確にしたいと思います。マグダラのマリアに関する記述は断片的ですが、その複数の短い記述がイエス•キリストの十字架•埋葬•復活の場面に集中することの意味を考えていきます。暫定的な結論ですが、マグダラのマリアを始めとして、十字架と埋葬と復活に立ち会った女たちの存在が復活信仰の引き金になったとするジェイン•シェイバーグの仮説を紹介します。
聖書は男性優位の言語で、家父長制の社会構造の中で書かれた文書群です。それゆえ聖書を読む価値はないと考えるフェミニストも大勢います。しかしフェミニスト聖書解釈者たちは、聖書の言葉に「揺さぶり」をかけ、おぼろげにではありますが、古代の現実の中で信仰を保持し、その時代状況に対して神の真実のために抵抗したり、格闘したりした人々の輪郭をつかもうとしていること、これがフェミニスト聖書解釈の意義ではないかと考えます。

<プロフィール>
青山学院大学 理工学部 教授
福嶋 裕子 [FUKUSHIMA Yuko]

熊本大学文学部哲学科卒業。東京神学大学修士課程修了。ボストン大学神学部修士過程修了。ハーバード大学神学部博士課程修了。日本基督教団西方町教会協力牧師。専門分野は、新約聖書学。主な著書『ヒロインたちの聖書ものがたり』。訳書W.ブルッゲマン『叫び声は神に届いた』。

第5回 2022/10/22(土)アフリカ系アメリカ人女性と文学 

文学部英米文学科 教授 
西本 あづさ [NISHIMOTO Azusa]

今日、私たちはさまざまな分野で活躍するアフリカ系アメリカ人の女性たちを目にするようになっています。アメリカ文学においても、とりわけ公民権運動後の1970年代から、第二波フェミニズムの展開とも重なる時期に、アフリカ系の女性たちがほとばしるように作品を発表し始める時代が訪れました。彼女たちは──小説家であれ、詩人であれ、批評家であれ──、既存のアメリカ文学あるいは文学批評の中には自分たちがいない、白人でも男性でもない自分の経験を語るための言葉もそれを批評するための理論も存在しない、と感じて筆を執り、創造的にアメリカ文学の地平をおし拡げました。その結果、例えば、『カラー・パープル』(1982)でアフリカ系アメリカ人女性として初のピューリッツァを受賞したアリス・ウォーカー(1944-)や、1993年に黒人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスン(1931-2019)らは、かつてはアメリカ文学の正典には含められなかったさまざまな集団に属す他の作家たちとともに、日本の大学のアメリカ文学史の授業でも必ず取り上げられるようになっています。日本で研究されたり教えられたりする「アメリカ文学」も、この30年年余の間に大きく変化しました。
この講座では、70年代以降にアフリカ系アメリカ人の女性たちが一斉に声をあげ始める背景として、合衆国で奴隷制の時代以来、長らく人種と性の二重の差別によって社会の最底辺に位置づけられてきた黒い肌の女たちの苦難と闘いの歴史と、抑圧の下で彼女たちが残した声の系譜を概説してみます。その上で、70年代以降の作家たちに大きな影響を与え、ブラック・フェミニズムの先駆的作品として評価されるハーレム・ルネサンス期の作家ゾラ・ニール・ハーストン(1891-1960)の『彼らの目は神を見ていた』(1937)を紹介したいと思います。

<プロフィール>
青山学院大学 文学部英米文学科 教授 
西本 あづさ [NISHIMOTO Azusa]

青山学院大学文学研究科博士後期課程満期退学。青山学院大学文学部英米文学科専任講師、准教授を経て、現在は教授。専門はアメリカ文学、アフリカ系アメリカ研究。
主な共著に『カリブの風──英語圏文学とその周辺』(鷹書房弓プレス、2004年)、『新たなるトニ・モリスン──その小説世界を拓く』(金星堂、2017年)。訳書にP・R・ハーツ著『アメリカ先住民の宗教』(青土社、2003年)、共訳にヴァレリー・スミス著『トニ・モリスン──寓意と創造の文学』(彩流社、2015年)など。

講座申し込み

申込期間 2022年8月15日(月)~29日(月)
受講料 無料
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(3)開講1週間前を目安に、ご登録いただいたメールアドレス宛にマイページのID・パスワードをお送りします。受講のご案内を配信いたしますので、マイページ「お知らせ」をご確認ください。
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(2)お申し込み者1名につき、1メールアドレスにてお申し込みください。複数のメールアドレスを使用し重複してお申込みをされた場合、お申込み自体を無効とさせていただきます。
(3)1度のお申し込みで、1シリーズ(全5回)のお申し込みとなります。
(4)先着順ではありません。お申し込み者多数の場合は、抽選とさせていただきます。
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    青山学院大学庶務部社会連携課 公開講座担当

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