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EVENT(学外講座)

SCHEDULED

2023.09.30 - 2023.10.28

TITLE

【青山キャンパス公開講座】教育現場の今

講座概要

対面またはオンライン配信
2023/09/30 ~ 10/28 毎土曜日 11:00~12:30(初回のみ12:40)

教育現場は、現在、大きな転換点にあります。とりわけ、新型コロナの流行を機に、変革の動きは一気に加速しています。近年の社会環境の変化を踏まえて、第1回から第3回までは、学校における情報教育、読書教育、障害のある子どもの支援について取り上げます。さらに、第4回は近年の大学教育改革について、第5回は生涯学習をめぐる様々な取組についてお話します。

講座申し込み

第1回 2023/09/30(土)情報教育の最前線

教育人間科学部教育学科 教授
杉本 卓[SUGIMOTO Taku]

「GIGAスクール」構想、電子黒板・デジタル教科書、プログラミング教育、コロナ禍でのオンライン授業など、情報通信技術が学校現場に導入され活用が進んでいることについては、様々なことを耳にしていることと思います。このような動きが進んでいるのは、「世の中で情報通信技術が広く使われるようになってきているから、それに対応するため」「コンピュータなど情報通信技術を使えるようになることが、将来仕事をしていく上で必要なため」というだけのことではありません。「学ぶ」「教える」ということについての根本的見直しが背景にあり、いまの世の中、そしてこれからの世の中で必要とされている学びを実現するための取り組みなのです。
この講義では、情報教育の具体的な実践を紹介しながら、「学ぶ」ということをどのように考えることが重要なのか、皆さんに考える材料をお示ししようと考えています。いま学校現場で起こっていることを知っていただくこと、学ぶということについて学問的にどのような研究が行われてきているのかを知っていただくことをもとに、皆さん自身の「学び方」や「学ぶということについての考え方」を見直すきっかけになればと思っています。
 「学ぶ」「勉強する」というと、知識という「モノ」を先生やテキストから受け取って頭にしまうことだという暗黙の概念が広く浸透してしまっています。暗記中心の教え込み型授業から脱却しなければということが盛んに言われてきました。そもそも知識というのは、与えたり受け取ったりする「モノ」ではありません。与えられた情報や既に知っている知識をもとに、学習者自身が他者と協働しながら新たな知識を作るプロセスが学習なのです。そして、そのプロセスを支援するのが、教師であり道具なのです。
 そのような枠組みのもと、青山学院の設置学校での実践にも触れながら、情報通信技術を活かした教育のあり方についてお話しいたします。

<プロフィール>
青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授
杉本 卓[SUGIMOTO Taku]
東京大学教育学部卒業、東京大学大学院・米イリノイ大学大学院単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、東京大学、千葉工業大学を経て、2013年より青山学院大学教育人間科学部教授。米イリノイ大学客員研究員、フィンランド・タンペレ大学客員教授を歴任。専門は、教育方法、情報教育。

第2回 2023/10/07(土)子どもの読書と学校図書館

教育人間科学部教育学科 准教授
庭井 史絵[NIWAI Fumie]

近年,子どもの「読書離れ」「活字離れ」が指摘されていますが,読書調査によると,昔と比べて、子どもたちが一概に本を読まなくなったというわけではありません。一方,デジタルネイティブ,GIGAスクールなど,子どもの読書を取り巻く環境は大きく変化し,読書の定義や位置付け,読書にいざなう取り組みや環境づくりには新しい動きが見られようになりました。
子どもが読書習慣を身につけるにあたっては,家庭だけではなく,学校教育も大きな役割を果たしていますが,その中でも「学校図書館」は注目すべき存在になっています。学校図書館は,学校の「情報センター」「学習センター」「読書センター」として,校内の読書推進活動の中心となり,教職員や家庭と連携しながら,学びに必要な「読む力」を育むことが求められています。
本講座では,子どもの読書の現状を踏まえながら,国内海外のさまざまな取り組みを紹介すると共に,子どもにとってもっとも身近な学校における読書教育のあり方や,学校図書館の重要性について考えてみたいと思います。

1. 子どもの読書の現状
・読書調査から見える「子どもの読書」の今
・子どもの読書をめぐる動き—国内外の取り組みから
2. 子どもの読書に対するさまざまな施策
・子どもの読書活動推進に関する法律
・国や地方自治体が推進する取り組み
3. 学校や学校図書館の役割
・学校教育における「読書」の位置づけ
・ICTの活用と読書
・学校図書館による読書支援
・家庭・学校・地域の連携によって生まれる「読書の場」

<プロフィール>
青山学院大学 教育人間科学部教育学科 准教授
庭井 史絵[NIWAI Fumie]
兵庫県西宮市公立小学校図書室,私立甲南高等学校中学校図書館を経て,2001年より慶應義塾普通部の専任司書教諭として男子中学校の図書館運営に携わる。2019年より青山学院大学教育人間科学部准教授,2022年より放送大学客員准教授(兼任)として,主に図書館司書,司書教諭,学校司書の養成に従事しながら,東京都港区や武蔵野市で「子ども読書活動推進計画」検討委員等を務める。修士(図書館・情報学,慶應義塾大学)博士(教育学,青山学院大学)。国際図書館連盟(IFLA)学校図書館分科会委員。

第3回 2023/10/14(土)子どもの学びの多様性と学校現場~心理職の視点から~

教育人間科学部心理学科 准教授
森脇 愛子[MORIWAKI Aiko]

みなさんは、学校での「学び」というと、どんな風景をイメージされるでしょうか。「学び」にも、いわゆる教化の学習から運動、芸術、対人関係までいろいろありますが、ご自身が小さいころ、学校に通っておられたころは、学校の中のどこで、どんな風に学んでいましたか。また、学びに必要なもの、例えば毎日持って行っていたものや、机の中にあったものと言えば何だったでしょうか。・・・もしかしたら、現在の学校、現在の子どもたちの「学び」の風景は、大人になったみなさんがいまイメージされていた風景とは、少しあり様が変わってきているかもしれません。
教室の中には多様な学び方の子どもたちが集まっています。体つきも、体の動かし方も、認知特性も、経験も、生活文化や生活様式も、パーソナリティだってそれぞれ違う子どもたちなのですから、当たり前と言えば当たり前のことです。そうだとすると、教室で学ぶときの姿勢や必要な道具が違うこと、学ぶ内容の順番や速度が違っていることもあるでしょう。あるいは“教室”や“学校”という枠組みを超えて、学びを広げている子どもたち(あるいはそれを模索している子どもたち)もいます。
私が心理職として学校現場に関わっていると、そうやって自分らしい学び方をしたいと考えている子ども、自分らしい学び方を探して試行錯誤している子ども、自分らしい学び方を身に付けて大きく飛躍した子どもたちを見ることがあります。その姿はたのもしく、楽しく、生き生きとして見えます。反対に、大人の側が経験してきた固定化された《イメージ通り》の学び方を押し付けられてしまうことで、自分らしい学び方ができずに困っていたり、決められた学び方に合わせようとするあまり苦戦していたり、学びそのものに期待ややる気が見出せなくなっている子どもがいることもあります。しかしそんな場合に、不安や心配から、“この子に支援が必要だ”と周囲の大人はどうも考えてしまうようです。・・・果たして本当にそうなのでしょうか?必要なのは何が変わることなのでしょうか?
私たちのすべきことの第一歩は、子どもひとりひとりが本当はどんな風に学びたいのかな、学ぼうとしているのかなと知ることなのではないでしょうか。この講座では、長い年月をかけて多くのことを学ぶ機会がある“学校”の姿と、いまとこれからの子どもの学びの多様性について、心理学の観点、そして心理職としての経験からお話したいと思います。

<プロフィール>
青山学院大学 教育人間科学部心理学科 准教授
森脇 愛子[MORIWAKI Aiko]
東京学芸大学大学院博士課程発達支援講座修了、博士(教育学)。教育委員会、小児専門病院、幼保・学校等で心理職として働きながら、国立精神・神経医療研究センター研究員、東京学芸大学講師、東京大学研究員を経て、現在は青山学院大学教育人間科学部心理学科准教授。専門分野は臨床発達心理学。主な授業として障害児・障害者の心理学や発達臨床心理学演習などを担当し、公認心理師養成にも関わる。近年は、障害のある大学生への支援、障害児者と災害時対応、発達支援領域の多職種連携や多職種連携教育に関心をもって研究を進める。著書『自閉スペクトラム バディ・システム スタートブック』(学苑社,2018)等。

第4回 2023/10/21(土)大学教育改革の行方

教育人間科学部教育学科 教授
杉谷 祐美子[SUGITANI Yumiko]

近年、大学をめぐっては、入学者選抜制度の改革や修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)の開始・拡充などが話題になっています。大学教育においては、文理横断・文理融合教育が推進されるとともに、コロナ禍以降、急速に広がったオンライン授業を対面授業とどのように併用しながら、学修の質を保証していくかなども議論されるところです。
実は、こうした数々の動きは今に始まったことではなく、大学に関する問題は以前から教育政策においてきわめて重視されてきました。日本では1990年代以降に本格化した大学改革の流れを受けて、今日まで、大学の教育研究、管理運営面にまで及ぶ様々な改革が矢継ぎ早に行われています。これらの改革の主眼は、大学および大学生の「量的拡大」が一定程度達成された段階に入り、いかに「質的充実」を図っていくかということにあります。
日本では、大学・短大への進学率が戦後60年間に約5倍も増大し、10人に1人が進学する時代から2人に1人が進学する時代へと大きく移り変わってきました。2022年度の大学進学率は56.6%。かつてのように進学者層が限られた場ではなく、大学は国民的な関心事となっています。特に、社会に出る前の教育の最終段階として、どのような資質・能力を伸ばし、成長をもたらすかは学生本人の将来にとってはいうまでもなく、今後の社会経済の発展ともかかわり、国家や地域社会、さらには産業界にとっても重要な課題です。国際的にみても、変化の激しい社会において大学の教育研究機能の強化はますます求められています。
この講義では、「教育」から「学修」への転換の呼び声のもとに、「学修者本位の教育の実現」を目指して政策的に進められてきた大学教育改革の取組を紹介します。あわせて、進学率の増大に応じて変化してきた学生の学修・生活の実態調査の結果なども取り上げながら、現在の改革の意義と課題について考えたいと思います。参加者のみなさんが見聞きしている、あるいは経験したことのある「大学」と照らし合わせながら、その存在を見つめなおし、社会にとっての大学の意味を考える契機としてもらえればと思います。

<プロフィール>
青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授
杉谷 祐美子[SUGITANI Yumiko]
早稲田大学大学院文学研究科教育学専攻博士後期課程満期退学。早稲田大学第一・第二文学部助手、日本学術振興会特別研究員、青山学院大学文学部教育学科専任講師、同准教授等を経て現職。文部科学省中央教育審議会大学分科会質保証システム部会臨時委員、文部科学省大学設置・学校法人審議会大学設置分科会専門委員・特別委員等を歴任。専門は高等教育論、教育社会学。
主な著書に、『大学の学び 教育内容と方法』(編著、玉川大学出版部、2011)、『大学のFD Q&A』(共編著、玉川大学出版部、2016)、『高等教育の質とその評価』(共著、東信堂、2016)、『大学評価の体系化』(共著、東信堂、2016)、『進化する初年次教育』(共編著、世界思想社、2018)、『学士課程教育のカリキュラム研究』(共著、東北大学出版会、2021)、『思考を鍛えるライティング教育 -書く・読む・対話する・探究する力を育む』(共著、慶應義塾大学出版会、2022)など。

第5回 2023/10/28(土)人生100年時代と生涯学習

教育人間科学部教育学科 教授
山本 珠美[YAMAMOTO Tamami]

公開講座「教育現場の今」最終回は、地域社会で展開されている社会教育から高等教育機関でのリカレント教育まで、人々の生涯学習を支援する取組の現状と課題についてお話しいたします。
内閣府「生涯学習に関する世論調査(2022年7月)」によれば、回答者(18 歳以上)のうち1年間全く学習活動をしなかった人は4人に1人であり、約75%の人は何らかの学習活動を行っています。過去1年間の学習経験は「仕事に必要な知識・技能や資格に関すること」が最も多く、「健康やスポーツに関すること」「家庭生活に関すること」「趣味に関すること」が続きます。子どもだけではなく大人も、様々な場面で、様々な内容を学んでいることがわかります。
1965年ユネスコ成人教育推進国際委員会でポール・ラングランが唱えた「生涯教育」という概念は、またたく間に世界中に広まりました(現在では、学習者の側に立った「生涯学習」という用語が一般的です)。日本では1980年代半ばの臨時教育審議会で生涯学習体系への移行が21世紀の教育施策の柱として謳われ、2006年の教育基本法全部改正では第3条に生涯学習の理念が新設されました。近年では、リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著『LIFE SHIFT:100年時代の人生戦略』や自民党政権の施策もあり、学校教育を終えて一旦社会に出た後、再び学校に戻って専門的・体系的な教育を受ける「リカレント教育」にも注目が集まっています(ただし「リカレント教育」の考え方自体は1970年代から議論されています)。
これらの動向に先立ち、日本では1949年に社会教育法が制定され、学校の教育課程を除く組織的な教育活動である「社会教育」が行われてきました。実際生活に即し、教養の向上や健康の増進、地域課題の解決等を目的に展開される「社会教育」は、乳幼児から高齢者まであらゆる世代を対象としており、地域社会の中で人々の生涯学習を支えています。教育を考える際には、学校教育だけではなく、社会教育の取組へも目を向けて欲しいと思います。

<プロフィール>
青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授
山本 珠美[YAMAMOTO Tamami]
東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。博士(教育学)。香川大学生涯学習教育研究センター専任講師、准教授を経て、2019年4月より青山学院大学教育人間科学部准教授、2021年4月同教授。専門は生涯学習論、社会教育学。主な著書は『近代日本の大学拡張:「開かれた大学」への挑戦』(単著、学文社、2020年)、『社会教育経営の基礎』(熊谷愼之輔・松橋義樹との共編著、学文社、2021年)。

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