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EVENT(学外講座)

SCHEDULED

2023.11.11 - 2023.12.09

TITLE

【青山キャンパス公開講座】ジェンダーと学問研究Ⅱ

講座概要

対面またはオンライン配信
2023/11/11~ 12/09 毎土曜日 11:00~12:30(初回のみ12:40)

2021年4月に設立したジェンダー研究センターは、青山学院と社会におけるジェンダー平等と性の多様性の尊重に貢献することを目指し、多様な学問分野にわたる教員が運営、研究に関わっている。2022年度に続けて開講する本講座ではテーマも引き継ぎ、ジェンダー・イシューがあらゆる学問研究と関わること示し、それぞれの研究の取り組みからジェンダーについて語る。

講座申し込み

第1回 2023/11/11(土)忘却への抵抗: イタリアにおけるアクティビスト・アーカイブズを考える

経済学部 教授
SCHIEDER, Chelsea S. [SCHIEDER, Chelsea S.]

わたしたちはどのように過去について理解することができるだろうか。起こった出来事を探求するために歴史家は資料に頼る。しかし、歴史的な資料を収集し保存するという行為自体が、保存する側の、未来に何を伝えるべきか、という判断によってなされることも忘れてはならない。女性や性的少数者、民族的少数者など、周縁化された少数派の歴史を語ろうとする歴史家は、主流の歴史叙述によってしばしば排除されてきた歴史を語るために、国家が作成した公文書をうのみにせずに読むことが必要だと主張している。また、歴史的に周縁化あるいは抹殺されたストリーを保存することによって忘却に抗うアクティビスト・アーカイブもまた存在するのである。

この講座では、歴史を保存するアーカイブの役割を探ることを目的として、経済学部教授チェルシー・センディ・シーダーが青山学院大学ジェンダー研究センター・ギャラリーで10月23日から11月11日まで開催される展示内容を紹介する。この展示のねらいは、来場者にイタリアの様々な社会運動の具体的な歴史とアーカイブの実践との関係を理解してもらうとともに、歴史家や一般の人々とアーカイブの関係について考えるきっかけを提供することである。講座では、シーダーはこの展示を研究対象として、また、教育ツールとして説明するが、その際には聴講する皆さんに、将来の歴史家と自身とがどんな関係を取り結ぶのか、想像してもらうことを期待している。「あなたが生きている現在を次世代に伝えるために、あなたは何を大事にしたいだろうか」

<プロフィール>
経済学部 教授
SCHIEDER, Chelsea S. [SCHIEDER, Chelsea S.]
チェルシー・センディ・シーダーは日本における現代社会運動のジェンダー分析に焦点を当てた歴史家である。コロンビア大学博士課程修了。博士号(2014年東アジア言語文化、2014年)を取得後、明治大学経済学部特任准教授を経て、2018年度より青山学院大学に勤務。現在、経済学部教授。著書に、『Coed Revolution: The Female Student in the Japanese New Left』(『共学革命:1960年代日本の新左翼と女子学生』2021、未訳)。     

第2回 2023/11/18(土)過去に女性思想家は存在しなかったのか:知の主体とジェンダー

コミュニティ人間科学部 教授 
梅垣 千尋[UMEGAKI Chihiro]

学問世界は古くから、男性をその中心的な担い手としてかたちづくられてきました。中世ヨーロッパで生まれた大学という場は、何世紀にもわたって男性のみからなるホモソーシャルな空間であり続け、女性にたいしてようやく門戸が開放されるようになったのは、各国で女子高等教育要求運動が本格化した19世紀後半以降のことにすぎません。ですが、このような学問世界に、みずから知の担い手として参入しようとした女性たちが、過去にまったく存在しなかったのかと問われれば、答えはNOです。
たとえば、『哲学の女王たち──もうひとつの思想史入門』(レベッカ・バクストン+リサ・ホワイティング編、向井和美訳、晶文社、2021年)という本は、もっとも男性によって独占されてきた領域とみなされがちな「哲学」の世界で地歩を築いた20人の女性思想家たちに光を当てています。すでに現代では、「哲学者」といえば「白人の男性が肘掛け椅子で考えに耽っている」というイメージが定着してしまっていますが、それは「哲学」があまりにも狭く定義され、実際には「哲学者」と呼びうるような女性たちが、たんに「政治活動家」や「学のある女性」としてしか認識されてこなかったからである、と編者たちはいいます。
このように、近年ではとくに英語圏を中心として、いわゆる「正典(canon)」から排除されてきた歴史上の女性思想家たちの存在を掘り起こそうとする研究がさかんです。しかしその一方で、日本の思想史研究では──もちろん『女性解放思想史』(水田珠枝著、筑摩書房、1979年)という偉業はあるものの──少なくとも西洋思想を対象とする研究のなかで、女性思想家はきわめてマイナーな扱いを受けているといわざるをえません。
それでは、なぜ日本の思想史研究において、女性思想家はあまり取り上げられないのでしょうか。また、女性思想家を取り上げることによって、どのような新しい問題を提起することが可能になるのでしょうか。この講座ではこうした問いを、具体的にメアリ・ウルストンクラフト(Mary Wollstonecraft, 1759-1797)という女性思想家を例にあげて考えてみたいと思います。

<プロフィール>
青山学院大学 コミュニティ人間科学部 教授
梅垣 千尋[UMEGAKI Chihiro]
一橋大学社会学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、英国ヨーク大学大学院18世紀研究所MAコース修了、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員(PD)、青山学院女子短期大学専任講師、同准教授、教授をへて、2021年4月より現職。専門はイギリス女性史・ジェンダー史、思想史。この講座に関連する主な業績として、『女性の権利を擁護する──メアリ・ウルストンクラフトの挑戦』(単著、白澤社、2011年)、『人間の権利の擁護/娘達の教育について』(メアリ・ウルストンクラフト著、共訳、京都大学学術出版会、2020年)、「女性思想家の〈マイナー性〉──「愛」をめぐるウルストンクラフトのバーク批判を事例として」『政治思想研究』21号(2021年)など。

第3回 2023/11/25(土)メソジスト・ヒストリーと女性

教育人間科学部 教授
大森 秀子[OMORI Hideko]

英国18世紀の信仰復興をもたらしたメソジスト運動は、ジョン・ウェスレーの「世界はわが教区なり」という言葉の通り、世界各地の宣教活動へと発展し、19世紀後半にはアメリカ・メソジスト監督教会が日本宣教を開始しました。伝道の手段とみなされた女子教育は個人の尊厳を認め、女性の地位を向上させることに寄与しましたが、福音を語ることに成功した女性宣教師の女性像は、時代的制約をもつジェンダー・イデオロギーとして機能したとも考えられます。
本講義ではまず、そもそもウェスレーの時代の組織体制やメソジスト・ソサイエティの規則がどのようなものであったかを示し、女性の置かれた位置や、信仰訓練と養育の観点からの子どもの教育などに触れてみたいと思います。
次に、19世紀中葉アメリカのメソジスト女性による教会や一般社会における改革運動に目を転じ、マザーフッドという概念を用いてその理想が家庭だけでなく、社会の悪徳・不義・不正を除去、矯正し、参政権の獲得にまで及んだことを概観します。と同時に、メソジスト女性の組織的な海外宣教の背景を探り、メソジスト特有のディコネス・ワークとそのトレーニングを受けて派遣された女性宣教師の例を紹介します。
さらに、日本におけるメソジスト女性宣教師の活動について、その対象が女性と子どもに焦点化されていた点に着目し、メソジスト女学校からどのような女性が生み出されたのか、理解を深めます。子どもや抑圧された女性のために家庭改善・社会改良を行うバイブル・ウーマンが養成された意味を確認した上で、それに対する日本人キリスト者の男性教師の見解も考察します。その後、初期の伝道ヴィジョンが女子高等教育へと変化し、超教派のカレッジ運動が展開される中、女性宣教師や日本人女性がそれぞれの立場から女性の家庭・職業・経済的自立についてどのように考えたのか、探ってみたいと思います。

<プロフィール>
青山学院大学 教育人間科学部 教授
大森 秀子[OMORI Hideko]

青山学院大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(教育学)。
青山学院大学文学部専任講師、助教授を経て、現在は同大学教育人間科学部教授。専門はアメリカ教育史、キリスト教教育史。
著書『成瀬仁蔵の帰一思想と女子高等教育』(東信堂、2019年)、『多元的宗教教育の成立過程』(東信堂、2009年)、他。論文「アメリカメソジスト派の伝道戦略と女子教育」(『教育研究』第65号、2021年)、他。

第4回 2023/12/2(土)子どもの育ちとジェンダー:発達心理学の視点から

コミュニティ人間科学部  教授
菅野 幸恵[SUGANO Yukie]

みなさんは、「オトコ」「オンナ」として過ごすなかで、生きにくさ(面倒くさい、煩わしいなど)を感じたことはありますか。
ひとはこの世に生まれ落ちると同時に、オトコかオンナに振り分けられ、それぞれの性を生きるように育てられます。「男は女より背が高い」「男は女より力が強い」といった性差は、人間をオトコとオンナという二つのグループに分けて比べたときに見いだされる違いであり、個々人の違いとは別のものです。しかし、周囲は出生時に割り振られた性に基づいて子どもを扱います。養育者は自分の子どもがオトコなのかオンナなのかを知っているだけで、我が子のふるまいに“男らしさ”“女らしさ”を見出します。生後数時間の新生児に対しても、です。意識する・しないに関わらず、子どもの“性”によって異なる働きかけをしてしまうのです。教育期待も子どもの性別によって異なります。絵本やテレビ、アニメなど子どもが触れるメディアは現実以上にジェンダー化されています。学校は、制服が選べる学校も増えていますが、性別を意識させるしくみはまだまだ残っています。これら周囲の扱いや期待と、子ども自身の好みや、やりたいことが一致しないときには違和感が生まれます。
子どもは2,3歳になると自分や他者の性について意識し始めます。心の性(自分はオトコなのかオンナなのか、あるいはどちらでもないのかという認識)は、出生と同時に振り分けられた性と一致するとは限りません。心の性と出生時に割り振られた性が一致しない場合(いわゆる性的マイノリティのひとつ)、もの心がついたころから違和感があり、成長と共に一層強くなります。ただその違和感は周囲に理解されるものではなく、子どもはその思いを封じ込めてしまい、生きにくさがさらに強くなってしまいます。
発達心理学は、ひとが生まれてから亡くなるまでのこころを扱う学問分野です。今回の講座では出生から第二次性徴を迎える思春期くらいまでの子どもの育ちと養育者の関わりをジェンダーの観点から見ていきます。

<プロフィール>
青山学院大学 コミュニティ人間科学部 教授
菅野 幸恵[SUGANO Yukie]

2003年より青山学院女子短期大学児童教育学科(2006年から子ども学科)に奉職し、2021年から現職。専門は発達心理学。著書に『あたりまえの親子関係に気づくエピソード65』(新曜社)『甘えれば甘えるほど「ひとりでできる子」に育つ』(PHP)『つながりの子育て』(共著・理工図書)がある。

第5回 2023/12/9(土)19世紀アメリカの禁酒運動とジェンダー

コミュニティ人間科学部 准教授
後藤千織 [GOTO Chiori]

アメリカ合衆国における禁酒運動と言えば、合衆国憲法修正第18条に基づき、1920年1月より施行された全国禁酒法が思い浮かびます。全国禁酒法は禁酒社会を生み出すどころか、酒類の違法入手、潜り酒場の盛況、ギャングの活動、ひいては法律無視の風潮を社会にもたらしました。全国禁酒法は大恐慌下の1933年に廃止されますが、現在も地域レベルでは様々な規制があります。飲酒が個人や家族、そして社会に与える影響を法律によって取り除くという考えは、どのように生まれたのでしょうか。
全国禁酒法を求める運動が発達したのは20世紀初頭ですが、アメリカの禁酒運動は19世紀前半から盛んで、多くの女性を惹きつけました。女性の権利運動を率いたスーザン・B・アンソニー、アメリア・ブルーマーらは、禁酒運動に関わった経歴があります。また、1874年に結成された婦人キリスト教禁酒同盟(WCTU)は、同時代の女性組織のなかで最大の会員数を誇りました。禁酒運動というトピックに注目することで、アメリカ社会の特質だけでなく、ジェンダーの作用を考えることができます。
今回の講義では、1840年代から1850年代にかけてのアメリカの禁酒運動を、ジェンダーに注目して分析します。禁酒運動は様々な場面で、男らしさ/女らしさの概念を動員しました。例えば、「大酒飲み」の女性も存在しましたが、禁酒運動は男性の暴飲に注目することが多く、女性は「大酒飲み」男性が振るう暴力の犠牲者として描かれる傾向がありました。19世紀半ばに州レベルの禁酒法が提唱された際、どのように男らしさ/女らしさの概念が作用したのでしょうか。本講義では、アメリカの禁酒運動という事例を通じて、歴史研究でジェンダーというカテゴリーを使う意義、人種や階級などの差異とジェンダーの関係性を考えます。

<プロフィール>
青山学院大学 コミュニティ人間科学部 准教授
後藤千織 [GOTO Chiori]

西南学院大学文学部国際文化学科卒業、一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。青山学院女子短期大学専任講師、同准教授をへて、2020年4月より現職。専門はアメリカ社会史、ジェンダー史。「1840年代初頭のアメリカにおける禁酒運動とジェンダー : マーサ・ワシントニアン運動の事例から」『青山学院大学コミュニティ人間科学部紀要』第2号(2021年)、『アメリカン・レイバー 合衆国における労働の文化表象』(共著、彩流社、2017年)。

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