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EVENT(学外講座)

SCHEDULED

2023.04.24 - 2023.05.08

TITLE

【青山アカデメイア(社会人講座)】江戸のネコ歩きー広重「名所江戸百景」と江戸のベストセラー

昨年話題となった梶よう子『広重ぶるう』(新潮社)は、江戸の浮世絵師安藤広重(「東海道五十三次」の作者)にスポットをあてた小説です。そんな彼の遺作とも言える「名所江戸百景」(120図)。斬新な構図の先に広がる、「幻の江戸」。本作に用いられた技法や謎を解き明かし、江戸っ子広重の思いに迫りたいと思います。東京は今、100年に1度とされる未曾有の変革期にあります。昔のEDOと今のTOKYOへ。変わるものと、変わらないもの。「名所江戸百景」を深く知ることで、ネコ歩きの楽しみが倍加すると確信しています。また、江戸期には多くのものが先取りされていますが、文学の商品化を背景に誕生した「ベストセラー」もその一つです。江戸人はどんな本を読み、売れる本を作るため書肆(出版人)はどんな企画・広告・販売戦略をたてたのか。ベストセラーは世の中を映す鏡。ベストセラーを介して江戸をじっくりと見つめ、現代にもつながる諸問題を総合的に考えます。具体的には最初のベストセラーとされる『好色一代男』、ベストセラー作者でコピーライターでもあった平賀源内(風来山人)の著作、21年ものロングセラーとなった『(東海)道中膝栗毛』(一九)、28年続いた『南総里見八犬伝』(馬琴)、現代のサブカルチャーブームを先取りする山東京伝の黄表紙、江戸弁が飛びかう『浮世風呂』(三馬)など、時間(能力)の許す限りお話ししたいと思います。                                                                                
実は今、「戯作」をテーマに論文を執筆中で、西鶴戯作者説(中野三敏)を念頭に置きながら上記の作品群を読み直しているところです。その成果次第で以下のシラバスに変更があることもお含みおき下さい。                                                          
三年に及ぶコロナ禍でわたしたちは、心のときめかない、刺激のない日常生活がいかに味気ないかを痛感しました。歴史を知れば数時間の街歩きでも、海外旅行なみの発見があります。それを念頭に、毎回ワクワクするような講義を目指します。                                                         
 本講座は「江戸のドレスコード1〜4(江戸のネコ歩き1〜2)」の続編です。これまでの受講生はもちろんのこと、初めての方も大歓迎です。一回完結方式ですので、お休みになっても支障はありません。お気軽にご参加下さい。前回同様にネコ歩き(文学散歩)のコースもご紹介しますので、お役立て下さい。新図書館も来春には完成します。新緑の銀杏並木で、お会いできることを楽しみにしています。

講座申し込み

目標、重点を置く学習内容

すぐには役立たないけれども、ちょっぴり人生を豊かにしてくれるもの。「教養」というものは、そうしたものかもしれません。何にでも興味を持ち、心をときめかせた幼い日々。「江戸」を介して幼時に回帰し、コロナ禍で痛んだ心身をリフレッシュしたいと思います。

受講対象者

どなたでも可能です。はじめての方はもとより、最新の研究成果を加味することで、予備知識をお持ちの方にもご満足いただけるような講義を心がけます。

必須テキスト・参考図書

◆必須テキスト(受講に際し事前購入が必要なテキスト)・・・
毎回、プリントを配布します。参考文献も講義の折に、入手しやすいものを適宜ご紹介します。
◆参考図書(講師推薦図書・購入は任意)・・・
講義の折にご紹介します。

受講に際しての注意事項など

ワクワクするような好奇心をお持ちになって、ご参加下さい。

講座スケジュール(各回の講義予定)

1

5月13日

13:20~14:50

「広重ぶるう」の謎と魅力

役者絵(含芝居)や美人絵が主流だった時代に「べろ藍(ペルシアンブルー)」を駆使し、名所絵の世界を拓いた広重。「東海道五十三次」が良く知られていますが、今回は「名所江戸百景」(1856〜59)にスポットをあてます。絵にまつわる幾つかの謎。たとえば、なぜそこに既に存在しない風景があるのか。江戸の定火消として街を守り、こよなく江戸を愛した広重は安政二年(1855)の大地震で失われた「幻の江戸」をそこに復元してみせたのでした。

また、「東海道五十三次」のもとになった十返舎一九『東海道中膝栗毛』や、遠近法を多用した大胆な構図や「ベロ藍」などで先行した、北斎の浮世絵についても触れ、創作の背景についても考えます。浮世絵は専門外ですが、その歴史を一から学び直し、広重の特質と魅力をお伝えします。

2 5月27日

13:20~14:50

 『好色一代男』の謎と魅力

多くの人がその名を知り、人気も高い『好色一代男』ですが、なぜベストセラーとなったのでしょうか(ちなみに「ベストセラー」というのは近代の用語で、当時はこういった言葉は存在しませんので、本講座では「よく売れて話題となった本」という意味で使っています。ついでに言えば、何部売れたかという正確な資料もほぼ存在しません)。『一代男』については多くの研究書が出ていますが、いまだに多くの謎が残っています。当時、西鶴41歳。人生50年といわれた時代、隠居して悠々自適の生活を送ってもおかしくない年齢の彼が、なぜ『一代男』を書こうと思ったのか。この本のどこが画期的だったのか。西鶴が手掛け挿絵はどの程度のレベルだったのか。当時の出版界はどんな状況で、本書の出現でどう変わったのか。文化勲章を受賞した故中野三敏氏は「西鶴戯作者説」を唱えていますが、それは正しいのか。そうした様々な疑問の答えを探したいと思います。

3 6月10日

13:20~14:50

 江戸のマルチタレント 平賀源内                                                     井上ひさし『表裏源内蛙合戦』(新潮文庫)、田中優子『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫)。二人の名声を決定的にした演劇と評論。共通するのは平賀源内を扱うこと。演劇や評論にかぎらず源内関係の本は外れが少ないとされます。それは「源内」という素材自体が魅力的で、今なお多くの人々を引き付ける魔力を有しているからです。本草学の精華をまとめた『物類品隲(ぶつるいひんしつ)』の刊行、不燃の火浣布(かかんふ)、寒暖計、源内焼、うぬぼれ鏡の製作、エレキテルの復元、洋画を描き、焼畑農業、鉱山調査、金山、鉄山の経営をするなどマルチな才能をみせながらも、仕官することが出来なかった源内。そんな彼が「風来山人」の名で手掛けた「悲しき玩具」としての文学。『根南志具佐(ねなしぐさ)』や『風流志道軒伝』ににじむ、「憤激(ヂレ)」と「憤激(ワザクレ)」。それは多くの人々の共感を得て、前者などは3000部のベストセラーとなったとされています。なぜそれほどの人気を得たのか。源内のどんな思いが江戸人の心をとらえたのか。精読して考えたいと思います。
4 6月24日

13:20~14:50

 江戸のベストセラー1 京伝・馬琴・一九・三馬                                                  1「しょせん戯作は慰みもの、〜勧善懲悪、波乱万丈、善玉悪玉、英雄豪傑〜それで充分」、2「武器は〜駄洒落」、3「髪床や風呂屋の会話を、そして浮世のすべてを活写」。寛政の改革(1787〜93)を契機に路線変更を余儀なくされた戯作者たち。井上ひさし『手鎖心中』(文春文庫・直木賞受賞作)は、蔦屋重三郎方に集う三人の戯作者の言葉で結ばれています。1は『南総里見八犬伝』を代表とする読本の曲亭馬琴。2は第1回で触れた『東海道中膝栗毛』など滑稽本を手掛ける十返舎一九。3は江戸弁の会話を『浮世風呂』や『浮世床』に写しとった式亭三馬。上記の作品の他に、京伝の黄表紙『江戸生艶気蒲焼(えどうまれうわきのかばやき)』を加え、それらの魅力と、ベストセラーとなった理由とを考えます。
5 7月8日

13:20~14:50

 江戸のベストセラー2 京伝・馬琴・一九・三馬                                                読本・合巻という歴史小説に新しい可能性を探る馬琴や京伝。毒のない笑いに向かう、一九や三馬。第4回に引き続き上記の作品群に触れ、厳しい規制下でベストセラーを生み出した戯作者たちについて考えます。                                            上記の問題を詳述した佐藤至子『江戸の出版統制 弾圧に翻弄された戯作者たち』(吉川弘文館)には「行政による出版物の抑圧は、現代でも形を変えて続いている」とあり、それが古くて新しい問題であることを指摘しています。わたしたちをとりまく、目にみえない規制。そこを生き抜くヒントを、「江戸」に探りたいと思います。

1

5月13日

13:20~14:50

「広重ぶるう」の謎と魅力

役者絵(含芝居)や美人絵が主流だった時代に「べろ藍(ペルシアンブルー)」を駆使し、名所絵の世界を拓いた広重。「東海道五十三次」が良く知られていますが、今回は「名所江戸百景」(1856〜59)にスポットをあてます。絵にまつわる幾つかの謎。たとえば、なぜそこに既に存在しない風景があるのか。江戸の定火消として街を守り、こよなく江戸を愛した広重は安政二年(1855)の大地震で失われた「幻の江戸」をそこに復元してみせたのでした。

また、「東海道五十三次」のもとになった十返舎一九『東海道中膝栗毛』や、遠近法を多用した大胆な構図や「ベロ藍」などで先行した、北斎の浮世絵についても触れ、創作の背景についても考えます。浮世絵は専門外ですが、その歴史を一から学び直し、広重の特質と魅力をお伝えします。

2 5月27日

13:20~14:50

 『好色一代男』の謎と魅力

多くの人がその名を知り、人気も高い『好色一代男』ですが、なぜベストセラーとなったのでしょうか(ちなみに「ベストセラー」というのは近代の用語で、当時はこういった言葉は存在しませんので、本講座では「よく売れて話題となった本」という意味で使っています。ついでに言えば、何部売れたかという正確な資料もほぼ存在しません)。『一代男』については多くの研究書が出ていますが、いまだに多くの謎が残っています。当時、西鶴41歳。人生50年といわれた時代、隠居して悠々自適の生活を送ってもおかしくない年齢の彼が、なぜ『一代男』を書こうと思ったのか。この本のどこが画期的だったのか。西鶴が手掛け挿絵はどの程度のレベルだったのか。当時の出版界はどんな状況で、本書の出現でどう変わったのか。文化勲章を受賞した故中野三敏氏は「西鶴戯作者説」を唱えていますが、それは正しいのか。そうした様々な疑問の答えを探したいと思います。

3 6月10日

13:20~14:50

 江戸のマルチタレント 平賀源内                                                     井上ひさし『表裏源内蛙合戦』(新潮文庫)、田中優子『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫)。二人の名声を決定的にした演劇と評論。共通するのは平賀源内を扱うこと。演劇や評論にかぎらず源内関係の本は外れが少ないとされます。それは「源内」という素材自体が魅力的で、今なお多くの人々を引き付ける魔力を有しているからです。本草学の精華をまとめた『物類品隲(ぶつるいひんしつ)』の刊行、不燃の火浣布(かかんふ)、寒暖計、源内焼、うぬぼれ鏡の製作、エレキテルの復元、洋画を描き、焼畑農業、鉱山調査、金山、鉄山の経営をするなどマルチな才能をみせながらも、仕官することが出来なかった源内。そんな彼が「風来山人」の名で手掛けた「悲しき玩具」としての文学。『根南志具佐(ねなしぐさ)』や『風流志道軒伝』ににじむ、「憤激(ヂレ)」と「憤激(ワザクレ)」。それは多くの人々の共感を得て、前者などは3000部のベストセラーとなったとされています。なぜそれほどの人気を得たのか。源内のどんな思いが江戸人の心をとらえたのか。精読して考えたいと思います。
4 6月24日

13:20~14:50

 江戸のベストセラー1 京伝・馬琴・一九・三馬                                                  1「しょせん戯作は慰みもの、〜勧善懲悪、波乱万丈、善玉悪玉、英雄豪傑〜それで充分」、2「武器は〜駄洒落」、3「髪床や風呂屋の会話を、そして浮世のすべてを活写」。寛政の改革(1787〜93)を契機に路線変更を余儀なくされた戯作者たち。井上ひさし『手鎖心中』(文春文庫・直木賞受賞作)は、蔦屋重三郎方に集う三人の戯作者の言葉で結ばれています。1は『南総里見八犬伝』を代表とする読本の曲亭馬琴。2は第1回で触れた『東海道中膝栗毛』など滑稽本を手掛ける十返舎一九。3は江戸弁の会話を『浮世風呂』や『浮世床』に写しとった式亭三馬。上記の作品の他に、京伝の黄表紙『江戸生艶気蒲焼(えどうまれうわきのかばやき)』を加え、それらの魅力と、ベストセラーとなった理由とを考えます。
5 7月8日

13:20~14:50

 江戸のベストセラー2 京伝・馬琴・一九・三馬                                                読本・合巻という歴史小説に新しい可能性を探る馬琴や京伝。毒のない笑いに向かう、一九や三馬。第4回に引き続き上記の作品群に触れ、厳しい規制下でベストセラーを生み出した戯作者たちについて考えます。                                            上記の問題を詳述した佐藤至子『江戸の出版統制 弾圧に翻弄された戯作者たち』(吉川弘文館)には「行政による出版物の抑圧は、現代でも形を変えて続いている」とあり、それが古くて新しい問題であることを指摘しています。わたしたちをとりまく、目にみえない規制。そこを生き抜くヒントを、「江戸」に探りたいと思います。

補講日は7月15日を予定しております。

講師紹介

篠原 進 青山学院大学名誉教授
専門は日本近世文学、メディア論。主な著書は『新選百物語』(監修・白澤社・2018)。共著『ことばの魔術師 西鶴』(ひつじ書房・2016)。「二つの笑いー『新可笑記』と寓言」(『国語と国文学』2008年6月)。コメンテーター「ヒストリア 井原西鶴」(NHK 2012 年3月)。同「BS歴史館 井原西鶴」(同2012年5月)。「水銀幻想ー浮世草子のドレスコード」(『日本文学研究ジャーナル』21号・2022年3月)。

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