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2025.04.26 - 2025.06.21
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【青山キャンパスアカデメイア】江戸のドレスコード7「江戸のヒットメーカー」
2025 年のNHK大河ドラマは『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』ですね。横浜流星が演ずる、「蔦重」こと蔦屋重三郎。18世紀の半ば、活気ある経済都市として最高にきらめいていた江戸に生まれた蔦重(1750〜97)は天才的な編集・発行人・経営者であり、希代のヒットメーカー。
吉原生まれの、吉原育ち。そこは江戸随一の歓楽街。彼は地の利を生かして吉原遊廓のガイドブック(「吉原細見」)を手掛け、黄表紙、洒落本などを次々とヒットさせる一方、浮世絵界にも新風を巻き起こします。蔦唐丸(つたのからまる・青山学院との縁を感じます)の名で狂歌の世界に出入りし、そこで築いた豊かな人脈や幅広いネットワークを活用し、大田南畝、朋誠堂喜三二、恋川春町、山東京伝、曲亭馬琴、十辺舎一九らの諸作を世に送りました。常にポジティブな彼にとっては挫折体験(1791年に筆禍)さえもビジネスチャンスで、歌麿、写楽ら異能の浮世絵師を抜擢して、経営する店(耕書堂)を江戸随一の書肆(しょし)に押し上げました。それを可能とした18世紀の江戸とは、どんな時代だったのか。辛口の馬琴でさえも認めた、蔦重の「世才」とは何か。彼の死後、小説界はどう変わったのか。それらを総合的に考えます。
私の机には既に十指に余る「べらぼう」関連本が積み上げられ少し食傷気味ですが、それらはどこまで信用できるのか。大河ドラマの進行にあわせて考察(ファクトチェック)します。ドラマの終わりに紹介される蔦重ゆかりの江戸の街(1月には吉原大門前や日本橋に蔦重の「耕書堂」が再現されました)。そこのネコ歩き(散歩)も楽しみましょう。 「江戸のドレスコード」7とありますように、この講座も7年目。これまでの受講生の方々はもちろんのこと、初めての方も大歓迎です。一回完結方式ですので、お休みになっても支障はありません。お気軽にご参加下さい。今年度は暑さを避け、6月中に講義が終わるように日時を前倒ししました。新緑の銀杏並木。講義の前後の時間は、モダンな新図書館でお過ごし下さい。
目標、重点を置く学習内容
すぐには役立たないけれども、ちょっぴり人生を豊かにしてくれるもの。「教養」とは、そうしたものかもしれません。何にでも興味を持ち、心をときめかせた幼い日々。「江戸」を介してそこに回帰し、ご一緒に心身をリフレッシュできればと願っています。
受講対象者
どなたでも可能です。初めての方はもとより、最新の研究成果を踏まえることで専門的知見をお持ちの方にも満足していただけるような講義を心がけます。
必須テキスト・参考図書
特にありません。講義中にご紹介します。ドラマ「べらぼう」もご視聴下さい。
受講に関しての注意事項など
・最少催行人数を設けております。最少催行人数に達しなかった場合には、講座を中止させていただくことがございます。
・講座の録音・録画・写真撮影は、ご遠慮ください。
・講義中は、携帯電話の電源を切るかマナーモードに設定してください。教室内での通話はご遠慮ください。
講座スケジュール(各回の講義予定)
1 |
4月26日
13:20~14:50 |
蔦重とは何者か(*以下のシラバスはあくまでも予定です。ドラマの進行にあわせ変更の可能性があり得ることをお含みおき下さい) 1 今日のトピック(「べらぼう」の放送内容を振り返る一方、話題の本、演劇などを毎回ご紹介します)。2 エディター(編集者)の武器は、今も昔も人脈。人と人とのネットワークを蔦重はどう構築したのかを考えます。時あたかも、田沼時代。その経済政策を背景に繁栄を極めた吉原。才知に優れ、細かなことにこだわらず、信を以て人と交わる、豊かな社交性は、そこで培われました。吉原の申し子というべき蔦重。彼は吉原大門脇でのガイドブック(「吉原細見」)販売を手始めに出版事業を拡大し、10年ほどで日本橋にほど近い通油町(とおりあぶらちょう)に進出するほどの成功を収めます。田沼に代わり登場した松平定信政権下の逆風(筆禍)にもめげず、歌麿、写楽といった異才を抜擢し浮世絵界を一変させた経営手腕。蔦重という照射装置で18世紀後半の文化状況を浮かび上がらせます。 |
2 | 5月10日
13:20~14:50 |
蔦重のネットワーク1〈戯作者たち〉 鱗形屋が独占していた「吉原細見」。販売店に過ぎなかった蔦重がその版権を得て出版事業に本腰を入れはじめた安永4年(1775)、『金々先生栄華夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』が出版されます。赤本、黒本、青本と続く草双紙のイメージを一変させる、大人向きの絵本(黄表紙)。作者は小島藩江戸留守居役を務める恋川春町。発行元は鱗形屋。秋田藩の同役朋誠堂喜三二もそこで黄表紙を書いていました。 不祥事で衰微する鱗形屋。それを尻目に春町、喜三二らを擁し、人気の黄表紙を安永9年には8点も出し、洒落本も手がけた蔦重。活気のある磁場に吸い寄せられ、多くの才人たちが集います。浮世絵師北尾重政。その弟子政演(山東京伝)。馬琴も蔦屋で番頭、編集者として働き、十辺舎一九も身を寄せ、奉書紙にドウサを引く仕事をしていたとされます。蔦重のもとに集った戯作者たち。彼らの問題作をていねいに読み、そのおどけた世界を楽しみたいと思います。 |
3 | 5月24日
13:20~14:50 |
蔦重のネットワーク2〈狂歌師たち〉 蔦重のもとには多くの才能が集いましたが、事業を拡大するにはまだまだ書き手が足りません。蔦重が目を付けたのは、狂歌。時は天明(1781~89)。「天明狂歌」の黄金時代。狂歌壇には多くの有為な才能が集っていました。蔦重は蔦唐丸(つたのからまる)の狂名でそのネットワークに身を投じ、中心的存在だった幕臣四方赤良(よものあから・大田南畝)を介して多くの仲間を得ます。御家人・朱楽菅江(あけらかんこう)。田安家家臣・唐衣橘洲(からごろもきっしゅう)。内藤新宿の煙草屋・平秩東作(へずつとうさく)。旅籠屋・宿屋飯盛(やどやのめしもり・石川雅望)。名門酒井家の一族・酒井抱一(さかいほういつ)などなど。あまりなじみがなく、とっつきにくそうな狂歌ですが、知的でウイットに富んだ秀歌ぞろい。それらを紹介、解説し、天明狂歌を堪能したいと思います。 |
4 | 6月7日
13:20~14:50 |
蔦重のネットワーク3〈浮世絵師たち〉 「白河の清きに魚も棲みかねてもとの濁りの田沼恋しき」。田沼の自由経済を大幅に修正した松平定信。彼が進めた「寛政の改革」を諷刺した喜三二、春町が筆を折り、洒落本三部作で京伝が手鎖刑を蒙った、蔦屋冬の時代。版元として罪に問われながらも(一説には財産半分没収とも)、ポジティブなメンタリティで蔦重は浮世絵の世界を一変させます。「清長美人」と称される、長身女性を描いた鳥居清長。西村与八が世に送ったそれに対し、蔦重が手がけた歌麿の「大首絵」。高価な雲母刷の浮世絵28枚を一挙に刷り、衝撃的なデビューを図った謎の新人写楽(実労10ヶ月140点余)。そして、勝川春朗の名でかかわりを持っていた北斎など、蔦重と浮世絵師との関係をお話しします。 |
5 | 6月21日
13:20~14:50 |
蔦重以後〈シリーズ化する草双紙・長編合巻の楽しみ方〉 寛政9年(1797)に蔦重は亡くなりますが、ヒットメーカーを失った江戸の戯作界はどうなったのでしょうか。馬琴の読本『南総里見八犬伝』(1813~41・106冊)、一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』(続も含め1802~22・43冊)。ジャンルは違っても共通するのは、そのボリューム。柳亭種彦『偐紫田舎源氏』(にせむらさきいなかげんじ・1829~42・152冊)。『児雷也豪傑譚』(じらいやごうけつものがたり・1839~68・73冊。美図垣笑顔・一筆庵主人・柳下亭種員・種清)。『白縫譚』(しらぬいものがたり・1849~85・90編。種員、二代目種彦、種清)。気が遠くなるほど長く(私も何とか読了しました)、荒唐無稽な内容ながら、どこか魅力的で心ときめく長編合巻の妖しい世界をご紹介したいと思います。 |
1 |
4月26日
13:20~14:50 |
蔦重とは何者か(*以下のシラバスはあくまでも予定です。ドラマの進行にあわせ変更の可能性があり得ることをお含みおき下さい) 1 今日のトピック(「べらぼう」の放送内容を振り返る一方、話題の本、演劇などを毎回ご紹介します)。2 エディター(編集者)の武器は、今も昔も人脈。人と人とのネットワークを蔦重はどう構築したのかを考えます。時あたかも、田沼時代。その経済政策を背景に繁栄を極めた吉原。才知に優れ、細かなことにこだわらず、信を以て人と交わる、豊かな社交性は、そこで培われました。吉原の申し子というべき蔦重。彼は吉原大門脇でのガイドブック(「吉原細見」)販売を手始めに出版事業を拡大し、10年ほどで日本橋にほど近い通油町(とおりあぶらちょう)に進出するほどの成功を収めます。田沼に代わり登場した松平定信政権下の逆風(筆禍)にもめげず、歌麿、写楽といった異才を抜擢し浮世絵界を一変させた経営手腕。蔦重という照射装置で18世紀後半の文化状況を浮かび上がらせます。 |
2 | 5月10日
13:20~14:50 |
蔦重のネットワーク1〈戯作者たち〉 鱗形屋が独占していた「吉原細見」。販売店に過ぎなかった蔦重がその版権を得て出版事業に本腰を入れはじめた安永4年(1775)、『金々先生栄華夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』が出版されます。赤本、黒本、青本と続く草双紙のイメージを一変させる、大人向きの絵本(黄表紙)。作者は小島藩江戸留守居役を務める恋川春町。発行元は鱗形屋。秋田藩の同役朋誠堂喜三二もそこで黄表紙を書いていました。 不祥事で衰微する鱗形屋。それを尻目に春町、喜三二らを擁し、人気の黄表紙を安永9年には8点も出し、洒落本も手がけた蔦重。活気のある磁場に吸い寄せられ、多くの才人たちが集います。浮世絵師北尾重政。その弟子政演(山東京伝)。馬琴も蔦屋で番頭、編集者として働き、十辺舎一九も身を寄せ、奉書紙にドウサを引く仕事をしていたとされます。蔦重のもとに集った戯作者たち。彼らの問題作をていねいに読み、そのおどけた世界を楽しみたいと思います。 |
3 | 5月24日
13:20~14:50 |
蔦重のネットワーク2〈狂歌師たち〉 蔦重のもとには多くの才能が集いましたが、事業を拡大するにはまだまだ書き手が足りません。蔦重が目を付けたのは、狂歌。時は天明(1781~89)。「天明狂歌」の黄金時代。狂歌壇には多くの有為な才能が集っていました。蔦重は蔦唐丸(つたのからまる)の狂名でそのネットワークに身を投じ、中心的存在だった幕臣四方赤良(よものあから・大田南畝)を介して多くの仲間を得ます。御家人・朱楽菅江(あけらかんこう)。田安家家臣・唐衣橘洲(からごろもきっしゅう)。内藤新宿の煙草屋・平秩東作(へずつとうさく)。旅籠屋・宿屋飯盛(やどやのめしもり・石川雅望)。名門酒井家の一族・酒井抱一(さかいほういつ)などなど。あまりなじみがなく、とっつきにくそうな狂歌ですが、知的でウイットに富んだ秀歌ぞろい。それらを紹介、解説し、天明狂歌を堪能したいと思います。 |
4 | 6月7日
13:20~14:50 |
蔦重のネットワーク3〈浮世絵師たち〉 「白河の清きに魚も棲みかねてもとの濁りの田沼恋しき」。田沼の自由経済を大幅に修正した松平定信。彼が進めた「寛政の改革」を諷刺した喜三二、春町が筆を折り、洒落本三部作で京伝が手鎖刑を蒙った、蔦屋冬の時代。版元として罪に問われながらも(一説には財産半分没収とも)、ポジティブなメンタリティで蔦重は浮世絵の世界を一変させます。「清長美人」と称される、長身女性を描いた鳥居清長。西村与八が世に送ったそれに対し、蔦重が手がけた歌麿の「大首絵」。高価な雲母刷の浮世絵28枚を一挙に刷り、衝撃的なデビューを図った謎の新人写楽(実労10ヶ月140点余)。そして、勝川春朗の名でかかわりを持っていた北斎など、蔦重と浮世絵師との関係をお話しします。 |
5 | 6月21日
13:20~14:50 |
蔦重以後〈シリーズ化する草双紙・長編合巻の楽しみ方〉 寛政9年(1797)に蔦重は亡くなりますが、ヒットメーカーを失った江戸の戯作界はどうなったのでしょうか。馬琴の読本『南総里見八犬伝』(1813~41・106冊)、一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』(続も含め1802~22・43冊)。ジャンルは違っても共通するのは、そのボリューム。柳亭種彦『偐紫田舎源氏』(にせむらさきいなかげんじ・1829~42・152冊)。『児雷也豪傑譚』(じらいやごうけつものがたり・1839~68・73冊。美図垣笑顔・一筆庵主人・柳下亭種員・種清)。『白縫譚』(しらぬいものがたり・1849~85・90編。種員、二代目種彦、種清)。気が遠くなるほど長く(私も何とか読了しました)、荒唐無稽な内容ながら、どこか魅力的で心ときめく長編合巻の妖しい世界をご紹介したいと思います。 |
補講日は6月28日(土)を予定しております。
講師紹介
篠原 進 青山学院大学名誉教授
専門は日本近世文学、メディア論。主な著書は『新選百物語』(監修・白澤社・2018)。共著『ことばの魔術師 西鶴』(ひつじ書房・2016)。「二つの笑いー『新可笑記』と寓言」(『国語と国文学』2008年6月)。「水銀幻想ー浮世草子のドレスコード」(『日本文学研究ジャーナル』21号・2022年3月)。「世之介の黒歴史ー戯作と転合書ー」(『日本文学』2023年7月)。*コメンテーター「ヒストリア 井原西鶴」(NHK 2012 年3月)。同「BS歴史館 井原西鶴」(同2012年5月)。
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