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2014.09.24

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2014年度 第1回FD講演会開催(9月24日)

9月24日(水)青山キャンパス大会議室において、2014年度第1回FD講演会が開催されました。全学FD委員および学内希望者が参加した本講演会は、玉川大学教学部長 菊地重雄先生を講師として迎え「学生の主体的な学びの実現をめざして―新たなマネジメントシステムの構築―」というテーマの下に進められました。講演後は情報交換会が設けられ、菊地先生を囲んで実りある意見交換がおこなわれました。

【講演会次第】

日時  9月24日(水)14:30~16:00
場所  大会議室(青山キャンパス 総合研究所ビル12階)

司会進行  全学FD委員会 副委員長 杉谷 祐美子
開会挨拶  学務及び学生担当副学長
      全学FD委員会委員長 長谷川 信


【プログラム】

1. 講演
「学生の主体的な学びの実現をめざして―新たな教学マネジメントシステムの構築」
 講師:菊池 重雄先生(玉川大学教学部長・経営学部教授)

 (1)変化する大学教育
    ・概念としてのUndergraduateの誕生

日本で一般的に「学部教育」と言われる「学士課程教育」すなわち「Undergraduate」について着目し、講義が行われた。今この「学士課程教育」は世界的に「履修主義」から「修得主義」へと変化している。たくさんの単位を修得したのだからたくさんの知識が身についているだろうという考え方に基づく履修主義を見直し、生きていく上で必要なコンピテンシーをいかに大学時代で身に着けるかということに重点を置いた修得主義を目指す動きがある。たくさん単位を取ればいいのではなく、履修した科目をきちんと学んで自分の能力を開発する必要がある。

背景として、まず学問の高度化が挙げられる。学問が高度化した現代において、学問領域のピークに達するには博士課程まで進まない限り無理だと言える状況下で、学士課程は専門基礎教育にすぎないという見方がある。2つ目に、社会の変化すなわち産業構造の変化がある。大学時代は将来社会に出て、どんな仕事に就くにしても有益な汎用的能力、上述のコンピテンシーを身に着ける必要がある。最後に、グローバリゼーションの進展という背景がある。グローバルという言葉は、国と国との関係を示すトランスナショナルもといインターナショナルとは異なる意味で、外国に住む人と日本に住む人との関係を指す。グローバリゼーションは極端に言えばローカリゼーションの裏返しでもある。これらの社会背景をベースに、中教審でも2008年に「学士課程教育の構築に向けて」という答申が出され、修得主義の推進がうたわれている。

いざ修得主義を実践するにあたって、教職員の役割は学生の能力開発を支援することになる。知識量を増やすことも大事だが、併せて学生の能力開発に関わることが大変重要な課題だ。同時に、そのコンピテンシーの能力は世界的に通用するものでなければならない。日本独自のシステムで世界的に通用させる能力開発はおそらくできない。少なくとも世界と同じシステムを改良しながら能力を養成していくことが、急がば回れではあるが一番良いやり方ではないか。

今後、難関総合大学として生き残る大学と、そのおこぼれをもらって生きる大学と二極化が進むと言われている。その中で難関総合大学を目指す青山学院大学が、その目標を達成できるか否かはこの24年間にかかっている。2020年に生まれた人たちが18歳になるときが重要になってくる。

玉川大学でのコンピテンシーへの取り組みにおいて、「学修力」に重点が置かれている。特にその中でも、コミュニケーションスキルを磨くことに注力している。多くの学生はコミュニケーションスキルとは、単に人とうまくやっていく能力だととらえているが、玉川大学では駄文化、多様性を踏まえた真のコミュニケーション能力の育成を学生、教職員共に目指している。また、コンピテンシー育成のために、能動的な学修、すなわちアクティブラーニングを啓蒙している。玉川大学では、100億円をかけたアクティブラーニングにふさわしい空間づくりに取り組み、今年の12月には完成する。一方で、自学自習時におけるアクティブラーニングへの支援にも取り組んでいる。

学生にどのような能力を身に着けさせたいと考えているのか、ディプロマポリシーに掲げている。そのディプロマポリシーを、何らかの方法で測定可能な内容にすることで、社会で通用する能力を数値化している。そうするとディプロマポリシーに沿ってシラバスも変わってくることになり、授業内容よりも到達目標が重要となる。

玉川大学ではPDCAサイクルでコンピテンシーの修得に取り組み、まずプランのところで各学部が適切なディプロマポリシーを設定し、アクトでそれを実行する。それが問題ないかチェックし、もっと深めることができなるのではないか研究も進める。そして次の行動に移すという流れで回している。現在の課題としては、一つの学部に複数の学科があり、それぞれが異なるディプロマポリシーを設定しているにもかかわらず同じ学位を出していることが挙げられ、改良を図っている。


 (2)能動的学修(主体的学修)を促進する教学マネジメントシステム

玉川大学が能動的学修を促進するマネジメントシステムを構築するにおいて、目標として下記の3つが挙げられる。

 ・学修時間の確保
 ・学生の主体的な学びを支援する仕組みづくり
 ・学修プロセスのアセスメント

第1に学修時間を確保する、その中核になるのは授業である。きちんと受講することはもちろんのこと、予習が必要になる。MOOCsに代表されるような反転授業で、予習として講義を聴いておいて、授業ではアクティブラーニングを行うということも始まっている。授業が終わった後には復習、言い換えると研究が必要となる。さらには大学を離れてインターンシップや海外に行くこと等も必要になってくるだろう。

大学設置基準で明確に決められている、学生の総学修時間をいかに確保するかが重要になってくるのだが、玉川大学においては通学時間だけで往復4時間を超える学生も多く存在するが、これはすべての日本の大学にとっての課題だろう。そのような生活下において学修時間を確保するために、玉川大学では2013年度から16単位を上限とする、16単位キャップ制を取り入れている。その過程では教授会から猛烈な反対の声があがったが、教職課程、つまり教員養成に重きを置く玉川大学が生き延びるためには、法律である設置基準を無視するような大学であっていいのかと説得を繰り返し、その結果実現に繋がった。教職科目も別枠にせず、既定の単位内の中で免許が取得できるシステムとなっている。

また、玉川大学では卒業時にGPAが2.00を満たしていない学生は卒業させないシステムがある。さらには2.00を割り込んだ学期が3回続くと、その段階で退学通達が出て、通達が出た後はもう復学もできないという厳しいルールで動いている。7800人いる学生の中で退学する学生が250名おり、その半分がGPAを満たしていないが故の退学者である。

また、学修時間を増やす一つのポイントとして重要となってくる自学自習を支えるため、きちんとした教材、教科書を整備することにも注力している。玉川大学では出版部があるので、必要な教科書は作成できる環境があり、電子化の支援もしている。学生の学修時間は自学自習が中心で、授業はそれを手助けするものという感覚に切り替えないと、学修時間を増やすことは難しい。そう考えるにおいて、授業案内としてのシラバスも重要となってくる。

いざ学生に1日8時間学修させるにあたって、帰宅後の学生の監督まではできない。そこで、学生が8時間学内に滞在するような仕組みをつくっている。例えば授業と授業は連続して取れないシステムにして、その間を学修できるような状況にしている。また、昼休みは設定せず、授業も1時間刻みで設定する等の工夫がされている。空き時間に予習、復習ができるように、現在多くのティーチングアシスタント、スチューデントアシスタントも用意し、とにかく大学に滞在させ、家では勉強しなくても済むようなシステムを構築している。

いざ学修時間を確保すると、次には学修させる空間を用意する必要が出てくる。一番重要なのは、学生にとって学びやすい学修空間になっているかにある。同時に、これからの時代はグループ学修も強化しなくてはならない。そう考えると、学修空間として通常の教室や図書館を用意するだけではなく、もっと拡大させて考える必要があるだろう。たとえばSTARBUCKSやTully's Coffeeで勉強している学生達にヒントを得て、学生が快適に学習できる場所としてカフェをつくった。その他にも、8時間キャンパスに滞在させるのであれば、学生の健康のために、今までは単に昼食を食べる場所にすぎなかった学食で朝食や夕食も提供するようにしている。大学が快適なはずだと思う空間を提供するのではなく、学生が快適と感じる学修空間を提供することが重要なのだ。
このように学修時間を確保すべく取り組んだ結果、学生が学修した結果をチェックするシステムとして玉川大学ではポートフォリオを用意している。学生に自分でどういう力が身についたかを、コンプテンスにしたがってレーダーチャートで判定してもらい、学修成果を把握してもらう。同じように自分の学生生活に関しても分析し、最終的には学生に自分のURLを持たせて各学生の4年間がここに全て載っているというように整備し、就職活動の際にそれらを発信できるようなシステムを目指している。

また、これらの履修マネジメントシステムが独りよがりなものにならないよう、現在、教学評価体制、IRネットワークによる学士課程教育の質保証事業を文部科学省の補助金で実施している。主に英語力調査と卒業生調査が中心となるが、これを通して玉川大学の立ち位置や、学生が育っているかどうかを把握している。玉川大学が目的としているのは、学生を1人の市民として社会に送り出すことである。その核となるのは初年次教育から始まり、2年次教育、3年次教育そして4年生のゼミナールである。入学時は親に依存している学生たちが、卒業時には親からの援助なしで生きていけるように育てたいと考えている。


2. 情報交換会(16:00~17:00)
  会場:総研ビル11階・ホワイエ
  FD講演会終了後に講師を囲んで茶話会形式で実施。


◆講師プロフィール◆

菊池 重雄氏
玉川大学 教学部長 同大学院FD委員長
1953年生

【略歴】
1980年 南メソジスト大学パーキンス神学大学院修了(M.Th)
玉川大学文学部英米文学科助教授を経て、同大学経営学部国際経営学科教授(現職)

【研究分野】
北米地域研究(アメリカ南部におけるキリスト教諸教派の形成が主テーマ)
近年、Martin Luther King, Jr.を中心とする公民権運動と南部各州の都市とのかかわりを中心に研究。
高等教育の研究分野:大学組織論、初年次教育、FD、IRなど(初年次教育学会理事)