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2010.05.12

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理工学部化学・生命科学科の福井博喜助教が日本化学会第90回春季年会優秀講演賞を受賞

2010年3月26日から29日に近畿大学で行われた日本化学会第90回春季年会で、理工学部化学・生命科学科の福井博喜助教(木村純二研究室)の研究講演「軸性キラル化合物を用いたキラルアミン類の絶対配置決定法」が、優秀講演賞(学術)に選ばれました。

日本化学会は、1878年に創設され、化学に関係するあらゆる学問領域・分野の研究者を対象とした国内最大級の学会であり、会員数は3万人を超えます。優秀講演賞(学術)は、35歳以下の若手研究者を対象とした賞で、今後の一層の研究活動発展の可能性を有すると期待される講演に対して授与されます。本年度は176件の講演が審査対象となり、発表内容・プレゼンテーション・質疑応答への対応等から35件が選ばれました。

<研究発表概要>

生体物質の分子には、同じ成分であっても右手と左手のように鏡像関係があり、この左右の立体的な構造が毒にも薬にも変化する理由の一つになることもあります。福井助教は、特に核磁気共鳴スペクトル(NMR)という分析方法により、生理活性に大きく関わる物質(キラルアミン)の複雑な構造を決定する新しい方法の開発に取り組んできました。
従来の方法では、左と右の両方の物質を一度別の化学物質(アミド部分のジアステレオマー誘導体)と反応させたのちに、そのNMRを比較して構造を決定するというものでした。この方法の問題点は、測定が溶液中であるためにもともとの構造ではなく様々な配置をとってしまうので、左右の差が見分けにくいことでした。
そこで福井助教は溶液中でも分子の軸がぶれないような分子設計を試み、より明瞭に左右の構造の差が分かるような分析法の開発に着手し、成功しました。具体的には、バイナフタレン骨格をもつ新たな軸性キラル試薬を開発し、その両鏡像体を用いてキラルアミンを対応するイミンへと誘導化し、ジアステレオマー間のケミカルシフトを比較することで絶対配置を決定する方法を用いました。
これにより、従来の方法よりも簡便にキラルアミンの構造決定を行うことができるだけでなく、効率よく安定した目的物質に導くことができるため、天然由来の化合物の分析に対し広く用いられていくことが期待されます。

【 福井博喜助教のコメント 】

 

この度、第90回日本化学会春期年会において、指導教授である木村純二先生をはじめとする多くの方々のご支援により、優秀講演賞をいただくことが出来ました。

当研究室では、自然界より人の役に立つ化合物を見つけ出し、それらの構造や生物との相互作用を明らかにすることを目的として、研究を行っております。その中で、この賞をいただくことができ大変栄誉に感じております。これを励みとして、さらに研究を進めて人の役に立つ研究結果を残せるよう努めたいと思います。