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2010.11.05

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理工学部 物理・数理学科 吉田篤正研究室が参加している観測実験装置(MAXI)がさまざまな成果を挙げています

2009年7月に打ち上げられ、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に搭載された全天X線監視装置MAXI(Monitor of All-sky X-ray Image)がさまざまな成果を挙げています。MAXIのチームには本学理工学部物理・数理学科の吉田篤正研究室(高エネルギー天体物理、トランジェント天体研究)が参加しており、同研究室所属の中平聡志さん(理工学研究科博士後期課程3年)と山岡和貴助教(理工学部物理・数理学科)が取りまとめた2件の研究が宇宙航空研究開発機構(JAXA)・理化学研究所からプレスリリースされ、今後のさらなる展開が注目されています。

ひとつは2009年に出現したX線新星がこれまでにない性質を持つブラックホールであると判明したことです。この新星が出現して最大の明るさになる時期を経て消失するまでの8ヶ月間を、MAXIのモニターを利用して継続的に観察した結果、通常のブラックホールでは多量のガスが急激に流入し10日ほどで最大の光度になるのに対し、今回のブラックホールではガスの流入に90日ほどかかったことが判明しました。このユニークな性質から、“ガスをマイペースに食べる「草食系」ブラックホール”として、マスメディアに取り上げられました。

もうひとつは新たなX線新星の発見です。10月17日に発見されたこの新星は、MAXIが発見した新天体としては2番目のもので、推定数万光年以上の遠方にある中性子星もしくはブラックホールとみられています。MAXIによる発見後直ちに世界中に速報が出され、その後アメリカ航空宇宙局(NASA)の天文衛星が追跡観測を実施しました。この発見によってMAXIが銀河系の非常に遠方にある天体を発見する能力を持っていることが証明され、さらに詳しい観測を進めていく予定です。

今後、中平さんはこれらの結果を博士論文の一部に使用し、MAXIの成果を利用した博士論文第1号になる見込みです。

【 MAXIとは 】

 

宇宙で起こる様々な天体現象には、人間の目に見える光(可視光)より遥かにエネルギーの高いX線やガンマ線を通さなければ観測できない大質量のブラックホールや中性子星が数多く存在しています。しかしながら宇宙から届くこれらの光線は大気によって吸収されてしまうため、地球上では観測できません。そこで高度約400㎞の大気圏外から宇宙空間のさまざまな方向にわたってこれらの天体現象を観測するために、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と理化学研究所および本学のほか、複数の日本国内の大学が協力してMAXIを開発しました。

参考