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2012.07.11

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理工学研究科機能物質創成コースと株式会社ブリヂストンとの共同研究成果がICCG-9国際会議で「Poster Award 3rd Prize」を受賞

2012年6月24日(日)~28日(木)、オランダのブレダで開催された無機薄膜(金属や酸素などの無機物から得られた薄膜)に関する国際会議 (9th International Conference on Coatings on Glass and Plastics, ICCG-9)において、理工学研究科機能物質創成コース(重里有三研究室)と株式会社ブリヂストンで行った共同研究成果が「Poster Award 3rd Prize」 を受賞しました(*国際会議での講演題目については、以下を参照)。

この共同研究は、「三酸化タングステン薄膜」という機能性薄膜に関するもので、本学側では、重里研究室の渡邉将弘さん(2011年3月理工学研究科機能物質創成コース博士前期課程修了)が主として取り組んだものです(ちなみにこの研究成果は、渡邉さんが修士論文としてまとめあげました)。

今回のICCG-9には、27ヵ国から約300名の参加があり、全員の投票によって「Poster Award」 が選出されました。
金属のタングステンを酸化してつくった「三酸化タングステン」は、電子と結晶格子の相互作用が非常に強い性質(原子の中の電子が動くに従って、格子状に並ぶ規則的な原子の配列、結晶格子、をゆがめる性質)を持っており、またポーラロン吸収(特定の波長の光を吸収する)特性を示すため、エレクトロクロミズムやフォトクロミズム現象(電気や光で色をつける現象)を起こす材料として、最も信頼性の高いものとして注目されてきました。

本研究では、特殊なプラズマ(電離気体)を用いる薄膜生成手法(ホロカソードガスフロースパッタ法)を使って、「三酸化タングステン」から極めて感度の良い「アモルファス(非晶質=配列に規則性の認められない)三酸化タングステン薄膜」を高速で合成することに成功すると同時に、生成した薄膜で半径の小さなポーラロン**(スモールポーラロン)による高効率なエレクトロクロミック特性を発現させることにも成功しました。

重里研究室では、産学連携の取り組みとして、10年にわたって株式会社ブリヂストンの中央研究所(先端基盤技術研究ユニット)と共同研究を行っており、この連携が「企業における実践を射程に入れた基礎研究」「応用を想定した基盤技術の開発」を可能にしています。また、重里研究室では、大学院生に将来のキャリア・パスを考える機会を提供するとともに、実践的なオン・ザ・リサーチ・トレーニング(ORT)も積極的に行っています。

*本国際会議での講演題目
“Electrochromic WO3 Films Deposited by Hollow Cathode Gas Flow Sputtering with Very High Deposition Rate”
M. Watanabe1), N. Oka1), K. Sugie2), Y. Iwabuchi2), H. Kotsubo2), and Y. Shigesato1*)
1) Aoyama Gakuin University, 5-10-1 Fuchinobe, Chuo-ku Sagamihara, Kanagawa 252-5258
2) Chemical and Industrial Products Technology Division, Bridgestone Co., 3-1-1 Ogawahigashi, Kodaira Tokyo 187-8531

**ポーラロンとは
準粒子のひとつで、電子と分極した電場(イオン結晶格子)を結合させ、量子化したもの。電子―格子相互作用の強い物質系で重要な意味を持つ。

 

ICCG国際会議
ICCGは1994年に創設された、無機薄膜の情報技術や環境技術への応用およびその基盤技術に関する国際会議です。1996年の10月に、ドイツ・ザールブルッケン市で第1回が行われて以来、2年ごとに欧州の都市で開催され、EUのみではなく米国や多くのアジアの国々の大学、公的研究機関、企業の研究者や技術者、生産、事業関係者など、300~500名の研究者が集まり、関連した分野の基礎科学から応用にいたるまで活発な研究発表が行われます。

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