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2012.12.03

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2012年度 第2回 新任教職員研修会(9月26日)

青山学院大学全学FD委員会(委員長=長谷川 信副学長、経営学部教授)は9月26日、2012年度第2回新任教職員研修会を、青山キャンパス14号館11階第19会議室で開催し、新任及び任意参加の教職員総勢37名が参加しました。

この新任教職員研修会は、2012年度に任用された専任教員(教授・准教授・助教・助手)及び一般事務職員(大学以外の配属者も含む)を対象に年2回開催しており、2回目となる今回は前期を終えた時点での経験値をもとに、さらに教育効果をあげるための工夫を外部講師の講義により理解するとともに、今後の授業改善及びそれに伴う支援業務につなげてもらうことを目的としております。

研修会の冒頭、伊藤 悟大学宗教部長が開会祈祷を奉げ、それに引き続き、青山学院大学は「青山学院教育方針」に明言されているとおり、「キリスト教信仰にもとづく教育をめざし、神の前に真実に生き、真理を謙虚に追求し、愛と奉仕の精神をもって、すべての人と社会とに対する責任を進んで果たす人間の形成を目的とする」特別な大学であり、他の国公立や私立の大学と異なる最もユニークな点は、このキリスト教による教育方針にあること、その具現化のために本学では毎日礼拝が行われ、「キリスト教概論Ⅰ・Ⅱ」を全学部生に必修とするほか、学内におけるさまざまなキリスト教活動を通じて、学生や教職員が学院の建学の精神やキリスト教信仰の真髄に触れる機会を多く設けていることを話されました。

この開会祈祷の後、長谷川副学長による本日の講師・杉原先生の紹介があり、研修会が始まりました。

講師:杉原 真晃 先生(山形大学基盤教育院/教育開発連携支援センター 准教授)

まず始めに、今日のテーマ「学生の主体性をいかに育むか」を開講するにあたって、以下の目的を説明されました。

・学生の主体性(主体的学習)をいかに育むかについての意識を高める、理論や実践事例を知る。
・それをもとに、自身の講義型授業における不安、課題、工夫、楽しみ等について、考える。
・参加者間でそれを共有し、アイデアを交換する。それにより、教員・職員間の連携が深まる。

学生の主体性をいかに育むか

1. 主体的学習を求める社会的事情

1)中央教育審議会答申(2012.8.28)

「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」

2)学生参加型の授業が求められる背景(田中、2003)
(1)高等教育のユニバーサル化にともなう学生の学習意欲の低下への対応
(2)臨床場面で生きて働く臨床知の獲得や科学技術の爆発的展開にコミットできる高度な創造性の育成

3)ボーダーフリー大学の学生の認識(山田、2009)

4)ボーダーフリー大学の学生の逸脱行動(葛城、2012)

2. 主体的学習の支援にかかるBackground

2-1. 主体的学習支援の授業実践の位置づけ

2-2. どのような「主体的学習」を期待するのか

2-3. なぜ、主体的学習をしないのか

2-4. なぜ、学習意欲が向上しないのか

深刻な授業及び好評な授業の事例を、授業改善アンケート結果から紹介してゆく

グループディスカッション(1)

「学生の主体的学習」「学生の学習意欲」に関する、みなさん各々の授業(講義型授業)における課題
(1)授業においてどのような問題を抱えているか、どのような「学習意欲の低い学生」が見られるか
(2)学生は、なぜ学習意欲が低い・向上しないのか

ふたたび、講義

3. 講義型授業における学習意欲向上のための対応

3-1. 学生の声、教員の経験からのノウハウ集
   山形大学制作事例ビデオ「あっとおどろく大学授業NG集」

3-2. 学生の主体的学習を意識した授業計画
   シラバスの構造と学習を軸にしたシラバス

3-3. 学習意欲向上の理論
   学習意欲を高めるための「ARCS」モデル(Keller,J.M., 2010)

ARCSモデルとは、まず学ぶ人の注意をひきつけるAttention(注意)、学ぶ人が「役に立ちそうだな」と感じるRelevance(関連性)、学ぶ人が「これなら自分にもできそうだな」というConfidence(自信)、学ぶ人が「受けてよかったな」というSatisfaction(満足感)の4つの頭文字を取ったもの。

4. 講義型授業の実践事例

「保育課程総論」という科目の事例をみる

グループディスカッション(2)

(3)「学習意欲を向上させる工夫」について、再度グループで意見交換し、代表者が全体発表を行う。

 また、グループの発表記録は、参加者全員に返却し、今日の成果を共有できるようにする。

各グループよりグループディスカッション(1)(2)の結果が発表され、次のような意見が出されました。
(1)授業においてどのような問題を抱えているか、どのような「学習意欲の低い学生」が見られるか ・少人数授業の場合、グループワークを取り入れたくともできないことがある
・大人数授業の場合、教員の注意が十分に行き届かないことがある
・スマートフォンやタブレットPC等は、授業と関係があるのかどうか、見分けができない
・学習意欲の低い学生として、私語が多い、授業内容に興味が無い(必修科目や単位修得のためを含む)、知識が無い、実習・実験を人任せにする

(2)学生は、なぜ学習意欲が低い・向上しないのか ・授業内容が実生活、また自身の将来とどのように結びつくのかが理解できず目的意識が低いため、興味がわかない
・授業は、学問分野のある体系の中の一つを切り取ったものを教えざるをえないが、学生はその一部分の体系における位置づけが分からない
・教員の授業運営が十分に出来ていない。教室環境(サイズ、設備等)、学生のモチベーション維持等

(3)学習意欲を向上させる工夫 ・授業内容と実生活との関連、身近の事柄と授業内容との結びつきの事例を挙げ、興味を持ってもらう。また、他の授業、知識との関連を説明し、授業に対する目的意識を持たせる
・学生の知識量をケアする
・授業内容と学生の将来、キャリアとの関連を説明する共に、大学の学習における理想のキャリア、また卒業後の理想のキャリアを示し、自身との距離を実感させあせりを持たせることで、学習意欲を高める
・教員の教授力を向上させるプログラムを用意する
・教室環境を整える。大人数の授業であっても学生に注意が行き届く、私語等をコントロールできる仕組み等
・出席の扱いや成績評価等のルールを学生にあらかじめ明示し、学生の意識を変える

各グループの発表の後、杉原講師より、「今日は講義についてディスカッションをしたが、大学にはそれ以外の要素、図書館やe-learningシステム、教室設備、学習支援やカウンセリング等、全体で学生を育てていくことがあり、その一部でしかない。今後も継続的にこのような議論の場を持ち、様々なテーマについて共に学んでいっていただきたい」というコメントをいただきました。

最後に長谷川副学長より、今後ともこうした研修会を通じて教育環境の整備につなげてゆき、学生に対しより良い環境を提供したいので、引き続き協力をお願いする旨挨拶があり、2時間以上に及んだ第2回新任教職員研修会を終了しました。