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2013.09.24

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理工学研究科化学コースの武藤克也さん(博士・後期2年)の研究発表が「2013年光化学討論会」で「優秀学生発表賞(口頭)」を受賞

理工学研究科化学コースの武藤克也さん(博士後期課程2年・阿部二朗教授研究室所属)の研究発表が、2013年9月11日(水) ~ 13日(金) 、愛媛大学城北地区で開催された「2013年光化学討論会」において、「優秀学生発表賞(口頭)」を受賞しました。
この賞は、光化学協会が年1回開催する年会で、特に優れた研究発表を行った学生発表者に贈られるもので、今年は28名の候補者の中から4名の学生が表彰されました。

武藤さんの研究発表題目は、「Photochromism of [2.2]Paracyclophane-Bridged Bis(imidazole dimer)([2.2]パラシクロファン架橋型ビスイミダゾール二量体のフォトクロミズム)」です。化学結合は、結合を形成していない2つの電子の相互作用により形成されます。阿部研究室で開発された高速フォトクロミック分子*は光照射によって不対電子を有する分子であるラジカル種を生成し室温で速やかに元に戻る、従来にない高速消色速度を有しています。武藤さんは、新たな高速フォトクロミック分子を合成することで、光照射によって2つのラジカル種が生成した後に化学結合が形成される様子を観測し、ビラジカル種とキノイド種**の間に熱平衡が存在するという概念を検討、証明することに成功しました。
武藤さんの研究は、化学結合形成に関わる興味深い知見を発見したことに加え、プレゼンテーションや質疑応答の態度が「優秀学生発表賞(口頭)」にふさわしいと認められました。また武藤さんは、これまでにも、「第34回光化学若手の会 優秀学生講演賞(2013年6月)」、「日本化学会第93春季年会 学生講演賞(2013年3月)」、「第23回基礎有機化学討論会 ポスター賞(2012年9月)」、「第33回光化学若手の会 ポスター賞(2012年6月)」を受賞しています。

*フォトクロミック分子
分子Aに特定の波長の光を照射することで分子の構造が変化し、分子Bへと異性化し、色や分子の性質が変化します。さらにその後、別の波長の光照射や、室温程度の熱を加えると元の分子Aに戻る分子のことを指します。阿部研究室で開発された高速フォトクロミック分子は従来にない消色速度を有しており、外に出た時のみ着色するサングラスやリアルタイムホログラムなどへの応用が期待されています。**ビラジカルとキノイド
ベンゼン環のパラ位に2つの不対電子を有する化合物は、不対電子が存在するビラジカルと、電子が全て結合を形成しているキノイドの2つの化学構造の記述ができます。この2つの構造は1つの状態を表しているというのが従来の考えの主流(共鳴理論)ですが、2つの構造それぞれが独立して存在するという考え(熱平衡)も存在しており、現在に至ってもどちらが正しいのか結論は出ていません。