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2014.07.25

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新井克敏さん(理工・博士前期2年)の研究発表が、「XXVth IUPAC Symposium on Photochemistry」で「BEST POSTER AWARD」を受賞

新井克敏さん(理工学研究科化学コース博士前期課程2年・阿部二朗教授研究室所属)の研究発表が、2014年7月13日(日) ~ 18日(金) 、Bordeaux Congress Center(フランス)で開催された「XXVth IUPAC Symposium on Photochemistry」において、「BEST POSTER AWARD」を受賞しました。
この賞は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry・国際純正・応用化学連合)が2年に1度開催する国際シンポジウムで、特に優れた研究発表を行った学生発表者におくるものです。
今回のシンポジウムでは、一般の研究者にまじって、約200名の学生が研究発表を行いましたが、うち5名に同賞がおくられました。
新井さんの研究発表題目は、「Fast Photochromic Naphthopyrans(高速フォトクロミズムを示すナフトピラン)」です。フォトクロミック分子*の一種であるナフトピラン**は、合成の容易さと発色と消色の繰り返しが他の分子に比べて長期間持続するため、調光レンズ***の色素として実用化されています。しかし、現存の調光レンズは消色速度が比較的遅い上に、発色が残存し、完全消色に数分以上要することが問題となっていました。その問題を解決するために、新井さんはナフトピランに嵩高い置換基(水素原子を他の原子団に置き換えたもの)を導入した分子を設計、合成し、嵩高い置換基による立体反発によって、消色速度の大幅な高速化と発色の残存の抑制を同時に実現しました。嵩高い置換基による立体反発を利用する手法は、ナフトピラン本来の利点である合成の簡便さと高い耐久性を保持しており、光量の変化に迅速に対応する調光レンズ開発への一つの大きな指針となりえます。
新井さんの研究発表は、秀逸な研究成果に加え、英語によるプレゼンテーションのわかりやすさや質疑応答の態度が同賞にふさわしいと認められました。

* フォトクロミック分子とは・・・
光によって分子構造が変化し、可逆的に色や分子の性質を変える分子のことをいいます。
** ナフトピランとは・・・
光照射により無色の消色体から二種類の発色体を生成するフォトクロミック分子です。生成した発色体は室温程度の熱で次第に消色体へと戻りますが、片方の発色体の消色速度が遅いため発色が比較的長い時間残存してしまいます。
** 調光レンズとは・・・
室外に出た時のみ紫外線によりレンズが着色してサングラスになり、室内に戻ると次第に無色になり普通の眼鏡として利用できるレンズのことをいいます。