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2014.10.17

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山下裕明さん(理工・博士後期2年)が「2014年光化学討論会」で「優秀学生発表賞(口頭)」ならびに「Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews Presentation Prize」を受賞

山下裕明さん(理工学研究科化学コース博士後期課程2年・阿部二朗教授研究室所属)が、2014年10月11日(土) ~ 13日(月・祝) 、北海道大学札幌キャンパスで開催された「2014年光化学討論会」(主催:光化学協会)において、「優秀学生発表賞(口頭)」ならびに「Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews Presentation Prize」を受賞しました。
これらの賞は、同協会が年1回開催する「光化学討論会」において、学生による研究発表の中から選出され、特に優れていると認められた研究発表に「優秀学生発表賞(口頭)」がおくられ、さらに「優秀学生発表賞(口頭)」を受賞した研究発表の中から最も優秀と評価された研究発表に「Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews Presentation Prize」がおくられます。
ちなみに、今年の討論会では30件の学生発表が行われ、「優秀学生発表賞(口頭)」6件、「Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews Presentation Prize」1件が選出されました。
山下さんの研究発表題目は、「新奇高速フォトクロミック化合物ペンタアリールビイミダゾール(PABI)の発見」です。
阿部研究室で開発された高速フォトクロミック分子*は光照射によって着色し、室温で速やかに元の無色に戻る、従来にない高速消色速度を有しています。太陽光の下でのみ着色する調光サングラスや実時間ホログラム**、さらには超解像蛍光顕微鏡***など、様々な分野での応用が期待されています。山下さんは、新たに簡便に合成可能な高速フォトクロミック分子を開発し、ナノ秒****から秒という幅広い時間領域にわたって消色速度を調節可能な分子系の開発に成功しました。これにより、目的に応じて適切な消色速度を有する高速フォトクロミック分子を簡便に合成することが可能になりました。
山下さんの研究は、簡便且つ様々な分野への応用が可能な新規高速フォトクロミック分子を発見したことに加え、プレゼンテーションのわかりやすさや質疑応答の態度が「優秀学生発表賞(口頭)」および「Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews Presentation Prize」に値すると評価されました。
なお、山下さんは、2014年6月にも「第35回光化学若手の会 優秀学生講演賞」を受賞しています。

*フォトクロミック分子とは・・・分子Aに特定の波長の光を照射することで分子の構造が変化し、分子Bへと異性化し、色や分子の性質が変化します。さらにその後、別の波長の光照射や、室温程度の熱を加えると元の分子Aに戻る分子のことを指します。阿部研究室で開発された高速フォトクロミック分子は従来にない消色速度を有しており、外に出た時のみ着色するサングラスや実時間ホログラム、超解像蛍光顕微鏡などへの応用が期待されています。

 

**実時間ホログラム(ホログラフィー)・・・一枚の画像に三次元情報を記録した画像(技術)のことをホログラムといい、特に物体の動きをダイナミックに表現できるものを実時間ホログラムといいます。見る位置、方向によって見える画像が変わり、自然な立体動画を作り出すことができることから、究極の立体映像方式と言われ、幅広い研究が行われています。

 

***超解像蛍光顕微鏡・・・従来の蛍光顕微鏡では光の波長の約半分程度の大きさまでしか観察できず、多くの細胞内小器官などの微細な構造を観察することができませんでした。超解像蛍光顕微鏡は従来の蛍光顕微鏡では観察することのできなかった微細な構造の観察が可能な新しい観測技術です。同分野を確立した研究者が2014年度ノーベル化学賞を受賞。

 

****ナノ秒・・・一秒の十億分の一の時間。