TOP

NEWS

POSTED

2014.11.26

TITLE

磯崎勇児さん(理工・博士前期1年)、須古彩香さん(理工・博士前期1年)が「第38回結晶成長討論会」で「学生講演ポスター賞 優秀ポスター賞」を受賞

磯崎勇児さんと須古彩香さん(両名とも理工学研究科機能物質創成コース博士前期課程1年・重里有三研究室所属)が、2014年9月25日(木)~27日(土)、八王子セミナーハウスで開催された「第38回結晶成長討論会」(主催:日本結晶成長学会)において、それぞれのポスター発表で「学生講演ポスター賞 優秀ポスター賞」を受賞しました。
同賞は、同討論会でポスター発表を行った学生もしくは30歳以下の若手研究者の研究の中で、会場の活発な討論を引き出し、複数の審査員による採点の結果、一定の基準以上の高得点を獲得した研究に対しておくられるものです(原則として1件に授与)。

本討論会では、19件の発表が行われましたが、今回は、特に優秀な研究発表が多かったため、最終的に2件に「最優秀ポスター賞」4件に「優秀ポスター賞」がおくられました。
磯崎さんの研究発表は「反応性スパッタ法で作製したGaNエピタキシャル膜の熱物性解析」* です。磯崎さんは、自身で研究を重ねて編み出したGaの反応性スパッタ法という成膜技術を使って、サファイヤの単結晶基板上への結晶性の高い窒化ガリウム(GaN)** の結晶成長(エピタキシャル成長***)に成功し、単結晶膜を作製しました。さらに、薄膜の熱物性値の高精度計測を行うためにピコ秒サーモリフレクタンス法を用いた熱物性解析を行い、熱拡散係数の結晶方位依存性を解析しました。

他方、須古さんの研究発表は「アモルファスIGZOの結晶化に関する研究」* です。
須古さんは、近年発明され、透明アモルファス酸化物半導体(性能が優れていることから最近、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等に応用されている半導体)として利用されている酸化インジウム・ガリウム・亜鉛(a-IGZO)薄膜のホモロガス構造と呼ばれる層状の結晶成長過程を原子レベルで解明し、薄膜の電気特性や薄膜トランジスタ(TFT)のデバイス特性に与える影響を明らかにしました。

磯崎さんの研究は、エネルギーの高効率化をはかるために必要不可欠なパワー半導体の実用化に際して、ポイントとなる単結晶膜をスパッタ法で成長させると同時に熱拡散係数の結晶方位依存性を高精度で実測したこと、また須古さんの研究は、インジウム、ガリウム、亜鉛という全く異なる性質をもつ元素が複雑に組み合わされた酸化物結晶の結晶成長過程を原子レベルで解明したことが評価され、同賞に値すると認められました。

ちなみに両名は、9月17日(水)~20日(土)に北海道大学で開催された「第75回応用物理学会秋季学術講演会」に参加して講演と討論を行い、高い評価を得ましたが、さらに考察を深めることで今回の受賞にいたりました。

* 両名の研究では、ナノレベル(原子レベル)の結晶構造解析が重要な要素となっているが、これらの解析にあたっては、理工学部附置機器分析センターに装備されている透過型電子顕微鏡(400kV-TEM,JEM-4010)を使用。

 

** 窒化ガリウム(GaN)・・・青色発光ダイオードに実用化され、パワー半導体デバイスへの応用も期待されている半導体で、2014年度ノーベル物理学賞の受賞対象となった物質。

 

*** エピタキシャル成長・・・結晶構造が似ている単結晶基板の上に、結晶性の高い単結晶薄膜を成長させる方法。原子のナノレベルでの制御が必要となる。