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2015.06.24

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「日本化学会第95春季年会(2015)」において、武藤克也さん(当時、理工・博士後期3年)が「学生講演賞」、岡島元助教(理工 化学・生命科学)が「優秀講演賞(学術)」を受賞

2015年3月26日(木) ~ 29日(日) 、日本大学理工学部船橋キャンパスで開催された「日本化学会第95春季年会(2015)」において、武藤克也さん(理工学研究科博士後期課程3年(学年は当時)・阿部二朗教授研究室所属)の研究発表が「学生講演賞(CSJ Student presentation Award 2015)」、岡島元助教(理工学部化学・生命科学科 坂本章教授研究室所属)の研究発表が「優秀講演賞(学術)」を受賞しました。

「学生講演賞」は大学院博士後期課程に在籍する学生発表者を対象に、「優秀講演賞(学術)」は2015年の4月1日時点で満36歳に達していない研究者を対象として、日本化学会が年1回開催する年会で優れた研究発表を行った発表者におくるものです。第95春季年会では、「学生講演賞」が325件の研究発表のうち97件に、「優秀講演賞(学術)」が220件のそれのうち44件におくられました。

武藤さんの研究発表題目は、「PMMA-b-PBAブロック共重合体にドープした高速フォトクロミック分子のフォトクロミック特性」です。阿部研究室で開発された高速フォトクロミック分子*1は、光照射による高速発消色特性を利用することで調光レンズや実時間ホログラフィー*2(リアルタイム三次元画像)材料への応用が期待されていますが、ポリマー(重合体)*3中における発消色効率の改善が課題となっています。武藤さんは、硬いポリマーと柔らかいポリマーの2成分から成るブロック共重合体にフォトクロミック分子を加え、2成分の相分離を利用することで発消色効率の改善を試みました。その結果、柔らかいポリマー相に高速フォトクロミック分子が優先的に存在することで発色効率が向上し、さらに高速熱消色特性を維持できることを見出しました。この研究により、高速フォトクロミック分子を使った調光サングラスやセキュリティインクなどの実用化が可能になります。

他方、岡島助教の研究発表題目は、「架橋した芳香環同士の大振幅振動の選択的観測:[34](1,2,4,5)シクロファンラジカルカチオンの近赤外共鳴低振動数ラマン分光」です。[34](1,2,4,5)シクロファン*4は、2つのベンゼン環が上下に架橋された分子であり、πスタックした二量体のモデルです。この分子から電子1つを取り去った陽イオン(ラジカルカチオン)は、正電荷1つを上下のベンゼン環で共有します。これまで、坂本研究室では、このラジカルカチオンの赤外吸収を報告していましたが、岡島助教は、上下のベンゼン環に共有された電荷による赤色の電子吸収に共鳴したラマン分光*5を行うことにより、 2つのベンゼン環が近づいたり離れたりする分子全体の大きな振動だけが増強して観測されることを発見しました。この結果は、分子全体に共有されている(非局在化している)電荷と、それに関与した分子全体の振動との関係を理解する上で重要な意味を持ちます。

武藤さんの研究は、フォトクロミック分子の実用化に向けた興味深い知見を発見したこと、岡島助教の研究は、分子内部で非局在化している電荷による分子全体の特定の振動の増強を明らかにしたことが評価され、さらに両名ともプレゼンテーションや質疑応答の態度が優れていたこと等が各賞にふさわしいと認められました。
なお、武藤さんは、2013年3月の日本化学会第93春季年会でも「蛍光色素を有する高速フォトクロミック分子を用いた蛍光スイッチング」の研究発表題目で学生講演賞を受賞しており、博士後期課程の在籍中に行った3回の研究発表のうち、学生講演賞を2回受賞しています。
また、岡島助教も「分子科学会 第2回分子科学討論会 優秀講演賞(2008年9月)」「日本分光学会 2008年度年次講演会 優秀学生ポスター賞(2008年11月)」、The Coblentz Societyの「博士論文賞:2010 Coblentz Student Award(2010年10月)」を受賞しています。