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平野麻衣子さん(教育人間・博士後期3年)が、日本乳幼児教育学会「第14回 研究奨励賞」を受賞

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2016.12.5

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平野麻衣子さん(教育人間・博士後期3年)が、日本乳幼児教育学会「第14回 研究奨励賞」を受賞

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平野麻衣子さん(教育人間科学研究科教育学専攻 博士後期課程3年 小林紀子教授研究室所属)が、日本乳幼児教育学会「第14回 研究奨励賞」を受賞しました。

同賞は、同学会が発刊する機関誌『乳幼児教育学研究』の前年度発刊号に掲載された原著論文の中で、同学会が、日本の乳幼児教育の理論的および実践的な解明と進歩に役立つ研究を行ったと認めた新進の研究者に対しておくるものです。第14回研究奨励賞は、2015年度発刊の同誌第24号に掲載された論文の中から選出されました(なお同賞は、昨年度は受賞者が選出されておらず、2年ぶりの選出となります)。

受賞対象となった論文は「保育カリキュラムにみられる生活習慣形成プロセス -倉橋惣三と及川平治の『コンダクト・カリキュラム』の違いに着目して-」で、大正期の保育カリキュラムの中で、生活習慣に関する教育が、どのように位置づけられたかを探ったものです。


生活習慣は、明治時代までは保育内容としてみなされず、教育の対象外とされてきました。しかし、大正時代に入るといくつかの幼稚園では生活習慣を保育内容として位置づけ、生活を通して子どもたちに指導されるようになりました。それらの園では、アメリカの進歩主義教育の研究を進めると同時に、実践に活かす取り組みをしていましたが、平野さんは、その実践のひとつとして、倉橋惣三と及川平治の『コンダクト・カリキュラム』*1を活用した取り組みに着目しました。同カリキュラムは、基本的生活習慣の育成をカリキュラムに初めて位置づけ、目的的な活動を通して、社会的・道徳的な習慣を獲得させようとしたものとして知られています。倉橋と及川は、ともに子どもの生活習慣の形成に着目したカリキュラム編成を行いましたが、同カリキュラムの受容の違いから、編成内容や編成過程には大きな違いが見られました。平野さんは、双方の保育カリキュラム編成過程が、同カリキュラムをどのように受容しながら行われていったのか*2を幼稚園規則等から調べて比較分析し、その違いを明らかにすることで、大正期の保育カリキュラムにおける生活習慣教育の実態を解き明かしました。

平野さんの論文は、乳幼児教育学の今日的課題である「生活習慣の形成」を丹念な先行研究分析に基づき、歴史的に位置づけ、また今後の乳幼児教育において、ケアと教育の一元化議論や乳幼児教育の独自性である「遊びや生活を通じた教育」、乳幼児教育実践の在り方などを考察するうえで、示唆的な知見を提供していること等が評価され、同賞にふさわしいと認められました。

2016年11月26日(土)、神戸女子大学において授賞式が行われました。

*1: 20世紀初頭のアメリカでは、児童研究や心理学等の成果に基づいて、幼稚園および小学校の教育改革が進められ、幼稚園と小学校低学年が一つの教育系統とみなされ、同一の原理に基づく幼小連携カリキュラムの作成がなされた。その代表的なものとしてコロンビア大学のP. S.ヒルらによって作成された『幼稚園および第一学年のためのコンダクト・カリキュラム』(1923年)がある。

 

*2: 及川は、目的的な活動を通した望ましい習慣態度の形成を目的とし、その効果をスケールで測定する『コンダクト・カリキュラム』の思想をそのまま受容したカリキュラム編成を行った。他方、倉橋は、『コンダクト・カリキュラム』の実践上の問題として、社会に必要な習慣を子どもに身に付けさせることだけが教育の目的とされた場合に、生活の形骸化や子どもの興味や関心と離れた生活へと向かう危うさを認識していたことから、常に子どもの実際生活に着目し、個々の子どもの習慣形成における社会的意味を考慮したカリキュラムを構築した。