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2023.02.03

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杉本皓輔さん、八木浩樹さん(ともに理工学研究科)が第43回日本熱物性シンポジウムで学生ベストプレゼンテーション賞をダブル受賞

学生ベストプレゼンテーション賞を受賞した八木浩樹さん(左)と杉本皓輔さん(右)

杉本皓輔さんと八木浩樹さん(ともに理工学研究科理工学専攻機能物質創生コース博士前期課程2年・重里有三教授先端無機薄膜研究室)が、2022年10月25日(火)~27日(木)にオンラインで開催された第43回日本熱物性シンポジウム(主催:日本熱物性学会)で口頭発表を行い、学生ベストプレゼンテーション賞をダブル受賞しました。この賞は,基礎から応用にわたる熱物性分野の発展に貢献しうる優秀な口頭発表を行った学生に対して贈られるものです。受賞した講演の題目は以下の通りです。

学生ベストプレゼンテーション賞を受賞した八木浩樹さん(左)と杉本皓輔さん(右)
あいちシンクロトロン光センターのビームライン

「Ar-H2(3%) ガスによる Y-Mg 合金薄膜の水素化・脱水素化に伴う可逆的な熱輸送キャリア変化(Ⅱ)XAFSによるY原子周囲の局所構造」
杉本皓輔, 山下雄一郎, 八木貴志, 柏木誠, 小口有希, 竹谷敏, Iesari Fabio, 岡島敏浩, 竹歳尚之, 重里有三

あいちシンクロトロン光センターのビームライン
あいちシンクロトロン光センターin-situ構造解析装置

「Pd触媒を有するNi-Mg合金薄膜のガスクロミック反応による電気伝導率および熱伝導率の挙動(Ⅱ)」
八木浩樹, 八木貴志, 山下雄一郎, 柏木誠, 小口有希, Iesari Fabio, 岡島敏浩, 竹歳尚之, 重里有三

あいちシンクロトロン光センターin-situ構造解析装置

SDGsやカーボンニュートラルを実現するために様々な分野におけるエネルギー利用の高効率化に関する基盤技術を確立していくことは、現在、差し迫った重要な課題です。その中の一つとして種々のデバイス、燃焼機関、動力機関等において熱伝導率を幅広く制御できる薄膜材料の必要性は強く指摘されてきましたが、既存の物質では制御できる幅が小さく十分な性能を発揮することができませんでした。

杉本さんと八木さんは「調光ミラー薄膜」と呼ばれる機能性薄膜材料に着目し、熱伝導率を極めて広いレンジで制御できる熱スイッチへの応用が可能であることを実証しました。調光ミラー薄膜はパラジウム触媒を用いた電気化学的なプロトン(水素イオン)インターカレーション等による水素化・脱水素化に伴い可逆的に金属から半導体に相転移し、光学特性を大きく変化させることが可能なことから,建築物や車両・航空機用の調光ガラス(スマートウインドウ)としての研究がおこなわれてきました。

その中でも杉本さんは第二世代と呼ばれる希土類元素とマグネシウムの合金薄膜、八木さんは第三世代と呼ばれる遷移金属元素とマグネシウムの合金薄膜の合成を行い、水素化反応を行いながら、光学特性、電気特性、熱物性、結晶構造のその場解析(in-situ解析)に成功し、金属から半導体への相変化に伴い電気伝導率に対応した(Wiedemann-Franz則に従った)大きな熱伝導率変化を定量的に確認しました。

これらの薄膜熱スイッチに関する研究は、様々なデバイスや構造材料におけるエネルギーを高効率化する技術に貢献すると期待されています。研究発表は、研究内容の新規性、独創性、学術的な意味、実用化に向けた有用性、論理構成の妥当性、高度な構造・組成制御と構造解析並びに熱物性計測のデータの豊富さ、プレゼンテーションのわかりやすさ等について専門分野の審査員から高い評価を受け、同賞に値すると認められました。

八木さん(左)、杉本さん(右)あいちシンクロトロン光センターにて

本研究は、どちらも本学と産業技術総合研究所(産総研)との連携大学院における研究・教育の一環として行われたもので、産総研の客員教授・准教授の方々にin-situ熱物性解析に関して手厚く御指導をいただきました。また、あいちシンクロトロン光センター副所長の岡島敏浩博士、Iesari Fabio博士にはシンクロトロン光を用いたXAFS解析による原子レベルでのin-situ構造解析の御指導をいただきました。

なお、XAFS実験は、あいちシンクロトロン光センターのBL5S1で行いました。
(実験番号:202201006、202203007、202203071)

八木さん(左)、杉本さん(右)あいちシンクロトロン光センターにて