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2011.06.08

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長谷川美貴教授(化学・生命科学科)が日本希土類学会奨励賞(足立賞)を受賞

長谷川美貴教授(化学・生命科学科)が、日本希土類学会奨励賞(足立賞)を受賞しました。この賞は、日本希土類討論会、またはこれに準ずる学会においてすぐれた研究発表を行った若手研究者に贈られるものです。
長谷川教授の受賞した研究題目は、「希土類錯体の分子内・分子間の構造とエネルギー状態の相関に関わる光化学研究」です。

この研究は、まずレアメタルに有機分子を結合させた錯体*の中でのエネルギー移動の速さの法則を錯体の発光現象を利用して明らかにしました。さらに、この速さの法則を利用し、レアメタルを含んだ分子を規則的に並べた膜(新しい仕組みを持つ物質)を開発しました。長谷川教授の開発した新たな物質は、たとえば、携帯電話等で用いられている「のぞきみ防止の偏光フィルム」を、フィルムを張るのではなく画面そのものに組み込み、軽量化と製造工程の効率化にも結び付ける等、今後、さまざまなものに応用できる可能性を秘めています。
これらを踏まえ、レアメタル錯体のこれまでわからなかった分子内のエネルギー状態(法則)を世界で初めて明らかにしたことが、科学的意味が高いと評価されるとともに、この法則を使って、新しい仕組みを持つ物質(レアメタルを含んだ分子を規則的に並べた膜)を開発したことが、日本希土類学会奨励賞(足立賞)に値すると認められ受賞にいたりました。

2011年5月12日に第28回希土類討論会において授賞式があり、13日に受賞講演が行われました。

長谷川研究室では、主にレアメタルの関わる希土類錯体の開発とその光現象や光機能の研究を行い、他の研究者が永久に参照するような原理の追及を目指しています。この姿勢は、種々の材料設計の指針をみちびくものとしても注目されており、企業との共同研究も積極的に進めています。

【 長谷川美貴教授の日本希土類学会奨励賞(足立賞)受賞に際してのコメント 】

 

理工学部 化学・生命科学科 長谷川美貴

このたび、学生とスタッフの前向きでひたむきな努力の証しとして、日本希土類学会足立賞を受賞することができました。大変光栄に存じます。

日本希土類学会は、昨今ニュースなどで話題となっているレアメタルに関わる物質科学の最先端を議論する場であり、ここでの受賞は本当にうれしい限りです。また、これまで希土類の科学は、発光だけでなく磁性や伝導性なども固体(固い)状態での機能が重視されていましたが、私どもの主分野である錯体化学との境界領域を切り拓くことで、溶液や高分子などソフトな状態での機能へも未来材料としての可能性が見えてまいります。今回は、特に私ども独自の方法を用いた希土類錯体の光機能の原理解明と分子設計指針に関わる研究が注目され、受賞に至りました。

本学では学科の枠を超えたメンバーで構成される秋光COEプログラムや先端科学技術センタープロジェクトなどで、多くの先生方からよい刺激を頂き、有益な議論を展開してこられたことは、資金面だけでなく私どもの研究の推進に追い風となりました。

学内外の共同研究者や支えてくださったすべての皆様に感謝し、御報告申し上げます。これにおごることなく、今後も一層真摯に教育・研究に取り組みます。

 

* 錯体とは・・・金属イオンに配位子(ligand)と呼ばれる分子やイオンが結合したもの

 

* レア・アースとは・・・希土類元素とも呼ばれ、スカンジウム、イットリウムと、ランタンからルテチウムなどの17元素の総称です。レア・アースは、少し添加するだけで、材料の特性を変えることができたりすることができるため自動車、家電製品、携帯電話、パソコン、カメラなど、私たちの周辺のいたるところで利用されています。

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