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新井夏帆さん(理工学研究科)、野々下大輝さん(理工学研究科)が2019年光化学討論会で「優秀学生発表賞(ポスター)」を受賞

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2019.10.15

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新井夏帆さん(理工学研究科)、野々下大輝さん(理工学研究科)が2019年光化学討論会で「優秀学生発表賞(ポスター)」を受賞

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2019年9月10日(火)~ 12日(木)、名古屋大学・東山キャンパスで開催された「2019年光化学討論会」において、新井夏帆さん(理工学研究科理工学専攻化学コース博士前期課程2年、阿部二朗教授研究室)と野々下大輝さん(理工学研究科理工学専攻化学コース博士前期課程1年・鈴木正教授研究室)が、それぞれ「優秀学生発表賞(ポスター)」を受賞しました。

この賞は、光化学協会が年1回開催する「光化学討論会」において、学生による研究発表の中で、厳正な審査を経て特に優れていると認められた研究発表に贈られるものです。


新井さんの研究発表題目は、「近赤外光応答性ビピレニル架橋型イミダゾール二量体の逆フォトクロミズム」です。フォトクロミズムとは、紫外光照射によって着色し、紫外光照射を止めると元の無色状態に戻る現象のことで、阿部研究室で開発された高速フォトクロミック分子*1は、従来にない室温程度の熱による高速消色速度を有します。さらに、着色した安定な状態に可視光を照射すると無色になり、照射を止めると元の着色状態へと戻る、珍しい色変化を示す逆フォトクロミック分子も発見されています。

新井さんは、従来の逆フォトクロミック分子が応答できる可視光よりも、よりエネルギーが小さく、生体を透過しやすい近赤外光に応答する新規フォトクロミック分子の開発に成功しました。さらに、そのフォトクロミック反応について、従来の逆フォトクロミック分子に見られる二つの異性体に加え、それらとは異なるもう一つの異性体を含めた、三つの異性体が関与していることを見いだしました。


野々下さんの受賞研究発表題目は、「フェニルエチニル基を導入したチオウリジン誘導体の新規合成と励起状態」です。野々下さんは、DNAの構成要素であり生物の遺伝情報を担う核酸塩基に硫黄原子を導入し、さらに不飽和結合をもつ置換基で化学修飾した「チオ置換核酸塩基誘導体」を分子設計からスタートし、新規合成に成功しました。また、様々な分光法を駆使して、その励起状態について詳細な研究を行いました。

この「チオ置換核酸塩基誘導体」は、二光子吸収特性*2をもつとともに、一重項酸素という細胞毒性が高い活性酸素種を効率よく生成することを明らかにしました。この性質を利用することによって、光で癌を治療する「光線力学療法」が可能となります。この研究成果によって、「チオ置換核酸塩基誘導体」が、レーザーによる二光子吸収によって癌を治療する「光線力学療法」の新たな薬剤となる可能性が初めて見いだされました。

新井さんと野々下さんの各研究発表は、研究成果及びプレゼンテーション、質疑応答、ポスターデザインが高く評価され、「優秀学生発表賞」にふさわしいと認められました。


*1フォトクロミック分子:光によって可逆的に分子構造が変化し、色や分子の性質を変える分子のことをいいます。阿部研究室で開発された高速フォトクロミック分子は、色や分子の性質が高速に変化するといった従来のフォトクロミック分子にはない性質を持っており、外に出た時のみ着色するサングラスやリアルタイムホログラムなどへの応用が期待されています。


*2二光子吸収特性:分子は特定の波長の光を吸収しますが、レーザー光などの強い光の下では、本来吸収が起こらない波長の長い光を吸収することがあります。この現象は二光子吸収と呼ばれます。波長の長い可視光(赤い光)から近赤外光は、組織への透過率が高く、組織の中まで浸透することができます。二光子吸収特性をもった薬剤分子の開発が注目されています。