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NEWS(ジェンダー研究センター)

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2022.12.08

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講演会「アメリカの一大学美術館における 一日本女性の奮闘記」 開催報告

11月4日(金)13時20分から14時50分まで、大学17311教室にて、青山学院の校友でいらっしゃる大木貞子氏による講演会「アメリカの一大学美術館における 一日本女性の奮闘記」を、ジェンダー研究センター主催、文学部後援、英米文学科同窓会協力により開催しました。
大木氏は、青山学院大学文学部英米文学科卒業後に渡米、ミシガン大学大学院で美術史の博士号を取得、1999年から現在までイェール大学美術館で、日本美術キューレーターとして活躍されています。

イェール大学美術館は1832年に設立され、30万点におよぶ美術品を有するアメリカ最古の大学美術館です。アメリカ人の母校への崇高な愛着心、また美術品の寄付相当額が免税になるというアメリカの税制が、質の高い大学附属美術館の存在を可能としているとのことです。一方で、価値不足であると判断された美術品の寄贈の申し出を断ることが、キューレーターの仕事で一番難しいというお話もありました。

イェール大学の学部が女性を受け入れたのが1969年だったのに対して、芸術大学院は1869年にイェールで最初に女性を受け入れた教育機関であり、美術部門は女性が活躍しやすい機関であったとのことです。イェール大学美術館のキューレーター17人の内、女性が12人で、この職には女性が圧倒的に多く、それは他の大学美術館も同じ傾向であること、ただし主任など重要なポストには男性がつきやすい、しかしながらイェールの現館長が女性であるといった、キューレーター職におけるジェンダー事情も指摘されました。

大木氏がこのポストに就くに至った経緯をお話しいただいた中で印象に残っているのは、青山学院の一環教育のたまもので、初等部2・3年の頃から大学まで書道を継続していたことが、求められた資格・能力につながったというお話です。また、前職のコロンビア大学附属中世日本研究所の副所長時代に手がけた展覧会で、経験を積み、信頼を得たことが、イェール大学美術館の採用に必要な、良き推薦者をもつことになったとのことです。
このような大木氏も、2012年、美術館の増改築による財政上の危機が雇用問題を生じた際に、差別問題に直面されたというお話も伺い、実績が重視されるアメリカにおいても、性別、人種の壁があることをあらためて認識しました。個人的な人生経験のお話しにも触れ、女性の自立の必要性並びにそれに伴う社会的な壁に関しても指摘がありました。

ご講演では、ご自身が手掛けられた特別展で展示された素晴らしい日本美術品の数々、また美術館の建築、館内の空間など、ふんだんな画像資料も用いられ、お話の内容はもちろんのこと、視覚的にも堪能させていただきました。
当日は学生、校友、教職員など、100名強の参加がありました。告知にご協力いただいた文学部と英米文学科同窓会に感謝申し上げます。また英米文学科の学生ボランティア9名が運営のサポートを担当したことをご報告いたします。