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NEWS(ジェンダー研究センター)

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2023.07.28

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[ジェンダーと表現]講演会 「ブーテ・ド・モンヴェル作『ジャンヌ・ダルク』に魅せられて」 開催報告

7月15日(土)14時から15時半まで、みつじまちこ氏による講演会「ブーテ・ド・モンヴェル作『ジャンヌ・ダルク』に魅せられて」を開催しました。翻訳家・みつじ氏は女子短期大学の卒業生で、絵本、アートの分野を中心に英語とフランス語の翻訳、執筆、編集に携わっていらっしゃいます。
本講演会のテーマであるブーテ・ド・モンヴェル作『ジャンヌ・ダルク』30部 豪華限定版は、短大図書館が所蔵した貴重図書「オーク・コレクション」の中でも最も貴重な1冊です。みつじ氏は、コレクションの基盤となる200冊余の1993年の受け入れから、その後のコレクション整備に深く関わられました。2008年にコレクションに加わった本書については、公益財団法人東京子ども図書館に託された石井桃子基金から自主研究のための助成金を得て調査を行われました。

本書は、モンヴェルが、テキストと絵から表紙の装丁までトータルなブックデザインを手がけた彼の代表作であり、絵本作家・堀内誠一が「世界でもっとも美しい絵本」と評しています。絵本作家として名を成していたモンヴェルが、自らの生まれ故郷オルレアンにゆかりのあるジャン・ヌダルクを取り上げて本書を生み出したのは1896年。講演では、フランスが普仏戦争に敗れナショナリズムに傾倒していた時代、モンヴェルがジャンヌの物語を一貫して理想化して、戦いの場面さえも美しく表現していること、その背景にある作家の思いなどが語られました。シーンごとの画像もプロジェクターで映し出され、その美しさを堪能しました。

最後に、堀内誠一が1971年刊行の雑誌an・anにおいて、「巻末絵本」として本書を初めて日本で紹介したこと、そのきっかけになったのは女子短期大学で兼任講師を務めていた児童文学作家・瀬田貞二であったことが紹介されました。講演会後、みつじ氏が持参されたこの雑誌を見る参加者から、こういう絵本がいわゆるファッション誌でとりあげられていたこと、印刷の質の高さ、堀内のこだわりに驚きの声があがりました。

講演会会場の近くにあるジェンダー研究センターギャラリーでは「図書館所蔵貴重図書 オークコレクション展 -モーリス・ブーテ・ド・モンヴェルと同時代の作家たち-」が開催され、本書も展示されました。ガラスケースの中、開いてあるのは1ページのみであるものの、本物の質感を見ていただきました。モンヴェルによるテキストも、矢川澄子による訳文を掲示しました(ほるぷ出版『ジャンヌ・ダルク』より)。全ページのスライドショーとともに、絵とストーリーを楽しんでいただけたことと思います。