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2022.12.01

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第10回比較芸術学会特別講演会「映画と笑い」濱口竜介トークを開催しました

文学部比較芸術学会は「映画と笑い」濱口竜介トークを、2022年11月19日(土)に青山キャンパス940教室で開催しました。

濱口竜介氏は、『ドライブ・マイ・カー』(2021)で、第94回アカデミー賞の国際長編映画賞、第74回カンヌ国際映画祭脚本賞ほか全4冠、第56回全米映画批評家協会賞 作品賞ほか4冠 、国際映画批評家連盟賞グランプリなどをつぎつぎと受賞した、いま世界で最も注目を浴びる映画監督の一人です。

比較芸術学科では、毎年、諸芸術分野の著名な芸術家や研究者の講演を企画してきましたが、本年度は映画を学ぶ学生からの熱い要望もあり、今回のトークが実現しました。テーマは「映画と笑い」。「世界のハマグチ」は映画の笑いをどう捉えているのでしょうか。

濱口監督がトークの中で抜粋上映したのは、『キートンの警官騒動』(1922)、ジャック・タチ『プレイタイム』(1967)など、コメディー映画の極め付きの名場面の数々です。しかし、それらの場面は、喜劇俳優のパフォーマンスも、空間造形も、あまりに独自の洗練をみているため、 私たちはすごいものを見ているという感動はまちがいなく得るものの、どこで笑えばいいかわからなくなることもあるのではないか、と問いかけます。実際、聴衆の反応もその通り。上映された映像に対し、一斉に笑いが弾ける、というのではなく、いったいこれは何だろう?……という賛嘆の入り混じった動揺がまず拡散し、次に、遅れて笑いがぽつぽつ起こっていました。

しかし、それこそが映画の笑いの最も貴重な点であると濱口監督は言います。これがおもしろい、という共通了解のもとにみなで笑う、という様式が大勢を占めるのがテレビだとすれば(例外もありますが、そのような傾向があります)、映画の笑いは、ときにそうした共通了解を突き抜けて未知の何かを出現させることがあります。バスター・キートンやジャック・タチがその好例です。そうした瞬間に触れ、笑いつつ唖然とすることを繰り返しながら、自分の映画作家としての感性が育まれていったのだと濱口監督は強調しました。芸術を勉強する学生のみなさんにも、そのような未知との遭遇をぜひ大事にしてほしい、とメッセージを述べて講演は締めくくられました。