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服の売れ行きは“色”で決まる――統計家・西内氏によるアパレルDXの成功例

Statistics and Data Science

企業のDX推進やデータ活用支援において、数々の成果を上げてきた統計家の西内啓氏。これまでに手掛けた分析事例から、統計・データサイエンスの持つ可能性を解き明かします。

アパレル企業からの
切実な依頼

西内氏の元に寄せられた、とあるアパレル企業からの依頼。それは、地方を中心に店舗を展開する同社の「データを元に売り上げをアップさせる具体的な方法を考えてほしい」という相談だった。通常アパレルの売り上げ対策といえば、トレンドの把握や接客スキルの向上などが語られがちだ。西内氏はいかにして、売れる施策を導いたのだろうか。

データの海から発見した、「色の力」

西内氏が目を向けたのは、同社に蓄積されていた膨大な購買データだ。そこには、顧客がいつ、何を購入したか、ポイントカードを所持しているかなどの記録に加え、購入したアイテムの色情報(黒系、茶系、白系など)が含まれていた。年間を通じて購入金額の高い顧客に共通する購買パターンは何なのか。ヒントを探るべく、大量の情報を重回帰分析<用語解説>によって詳細に分析し始めた。

分析を進める中で、西内氏は特定の色のアイテムに注目する。「この色の商品を買った顧客は、来店頻度が上がり、継続的に買い物をするようになるため、その後の売り上げが伸びる」という関連性が見つかったからだ。特定の色が売り上げアップの鍵を握っていた背景には「着回しのバリエーション」との関連性が潜んでいた。

同店舗の顧客は、初めは着回しやすい黒や白といったシンプルな色で服を揃えるケースが多かった。しかし、特定の色味のアイテムを手にすることで、コーディネートの選択肢が広がる。このことが、同色にあう他のアイテムをほしい、もしくは別の色に挑戦してみようという意欲につながり、結果としてその店舗で継続的に買い物をするようになるのだ。つまり、特定の色のアイテムが、顧客がファッションの楽しさに目覚め、リピーターへと変化する「ジャンプ台」のような役割を果たしていたと言える。

無関係に見えるデータにも、「真実」は隠されている

西内氏はこの発見をもとに、「この色がおすすめ」というポップを店頭に掲示する施策を提案した。アイテム単体は高価ではなくとも、それをきっかけに来店頻度を高め、トータルの売り上げを向上させる狙いだ。

「時間を掛けてあらゆるデータを分析したことで、思いもよらない発見を得られました」と西内氏は語る。一見関係なさそうな要素であっても、間口を広く、丁寧にデータを加工していく。そのプロセスこそが、有意義な関連性を見つけ出し、ビジネスを成功に導くのだ。

< 用語解説 >「重回帰分析」とは?

複数の要因から結果を予測する

1つの要因から結果を予測する回帰分析に対し、複数の要因から結果を予測する統計手法を重回帰分析と呼ぶ。今回のケースでは、購入アイテムの種類や色といった要因から売り上げという結果を予測した。この手法を用いることで、多くの要因が複雑に絡み合うビジネスの現場においても、「どの変数を動かせば、目的とする結果を最大化できるか」を客観的に判断することが可能になる。

西内啓氏と
新学環開設準備室室長 荒木万寿夫教授による
対談記事はこちら

ARAKI Masuo

荒木 万寿夫

学長補佐(データサイエンス担当)
経営学部 経営学科 教授
新学環開設準備室室長

NISHIUCHI Hiromu

西内 啓

株式会社ソウジョウデータ
取締役会議長