- MENU -
POSTED
2025.09.08
TITLE
【理工学研究科】三橋花楓さんが「2025年光化学討論会」で「優秀学生発表賞」を受賞
2025年9月4日(木)~ 6日(土)、立教大学 池袋キャンパスで開催された「2025年光化学討論会」において、三橋花楓さん(理工学研究科 理工学専攻 化学コース 博士前期課程1年・阿部二朗教授研究室所属)が「優秀学生発表賞(ポスター)」を受賞しました。本賞は、光化学協会が年1回開催する光化学討論会において、学生による研究発表の中から特に優れたものに贈られるものです。今年度は55件のポスター発表が審査対象となり、そのうち11名の学生が受賞しました。
三橋さんの発表は、優れた研究成果に加え、発表スキルや質疑応答における態度も高く評価され、本賞の受賞に至りました。また、この研究成果は王立化学協会の学術誌"Chemical Communications"に受理されました(Chem. Commun., 2025, DOI: D5CC04458H)。
発表概要
発表題目:ピリジニウムイオン構造を導入したビナフチル架橋イミダゾール二量体の逆フォトクロミズム
逆フォトクロミズムとは、着色状態に可視光を照射すると無色に変化し、照射を止めると元の着色状態に戻るという、希少な光応答現象です。紫外光に比べて生体へのダメージが少ない可視光を利用できることから、応用への期待が高まっています。
三橋さんは、水溶性を高めるピリジニウムイオン構造を導入した新規化合物を合成し、水含量80%の有機溶媒中においても可視光に良好に応答する逆フォトクロミック分子の開発に成功しました。ビナフチル架橋イミダゾール二量体は可視光照射により大きな構造変化を示すため、この性質を利用してタンパク質や核酸塩基の機能を光で制御できる可能性があります。今後は、タンパク質や核酸塩基に選択的に結合する認識部位を導入した誘導体を合成し、細胞内での光制御研究へと展開していく予定です。
※本研究は、日本学術振興会・科研費 JP23K26633、およびJP23H04878(学術領域変革研究(A) メゾヒエラルキーの物質科学)の支援による研究成果です。
※フォトクロミック分子とは:光照射により可逆的に構造が変化し、色や性質が変わる分子のことです。阿部研究室では、色や性質が高速に変化する独自の高速フォトクロミック分子を開発しており、屋外でのみ着色するサングラスやリアルタイムホログラムなど、従来にない応用が期待されています。

受賞者からのコメント
三橋花楓さん(理工学研究科 理工学専攻 化学コース 博士前期課程1年・阿部二朗教授研究室所属)
このたび「優秀学生発表賞」という栄誉ある賞をいただき、大変光栄に思います。イオン構造の導入は、当研究室において初めての試みであり、合成や光学測定において多くの困難に直面しましたが、根気強く実験に取り組むことで成果を得ることができました。今回の受賞は、日頃よりご指導いただいている阿部二朗教授、相澤匠助教、そして研究室の皆さまのおかげです。心より感謝申し上げます。今後は本受賞を励みに、一層研究に精進してまいります。

指導教員からのコメント
阿部二朗教授(理工学部 化学・生命科学科)
このたびの受賞は、三橋さんが日々の研究に真摯に取り組み、新しい発想と粘り強さで成果を積み上げてきた結果だと大変誇りに思います。逆フォトクロミズムを示す分子の開発は学術的にも応用的にも意義が大きく、今後の展開に大きな期待を寄せています。今回の受賞を励みに、さらに研究を発展させてくれることを楽しみにしています。