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2025.12.19
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【理工学研究科】佐藤颯飛さん、三橋花楓さんが「第15回CSJ化学フェスタ2025」で「優秀ポスター発表賞」を受賞
(左)三橋花楓さん (右)佐藤颯飛さん
2025年10月22日(水)~ 24日(金)、「第15回CSJ化学フェスタ2025」がタワーホール船堀(東京都)で開催され、佐藤颯飛さんと三橋花楓さん(ともに理工学研究科 理工学専攻 化学コース 博士前期課程1年・阿部二朗教授研究室所属)が「優秀ポスター発表賞」を受賞しました。
本賞は、学生による口頭研究発表の中から特に優れたものに贈られるものです。今年度は1031件のポスター発表が行われ、この中から審査を希望するポスター発表に対して、1)研究に対して発表者が⼗分に寄与していること、2)質疑応答に優れていること、3)独⾃性が認められ、今後の発展が期待できること、の3つの観点から審査が行われ、188件の「優秀ポスター発表賞」が選出されました。
また、佐藤さんの研究成果はWileyの学術誌 “Angewandte Chemie International Edition” に受理されました(Angew. Chem. Int. Ed., 2025, e20871)。
(左)三橋花楓さん (右)佐藤颯飛さん 三橋さんは9月に開催された「2025年光化学討論会」で優秀学生発表賞(ポスター)、11月に開催された「第44回固体・表面光化学討論会」で学生優秀講演賞を受賞しています。また、三橋さんの研究成果は王立化学協会の学術誌 “Chemical Communications” に受理されました(Chem. Commun., 2025, 61, 15167)。
発表概要
発表題目:光応答性キラルドーパントを用いたキラルネマチック液晶の高速らせん制御
佐藤颯飛さん(理工学研究科 理工学専攻 化学コース 博士前期課程1年・阿部二朗教授研究室所属)
キラルネマチック液晶とは、分子が周期的に配列した液晶材料です。光を用いて、このらせん構造の周期やねじれの向きを光で高速かつ可逆的に制御できれば、高速応答型ディスプレイや高機能な光学センサーなどへの応用が期待されています。佐藤さんは、可視光照射によって高速に立体構造が変化し、液晶と強く相互作用する新しい光応答性分子を設計・合成しました。この分子をネマチック液晶に添加することで、可視光の照射だけで液晶のらせんピッチとねじれの向きを可逆的かつ秒オーダーでの切り替えを実現しました。本研究は、可視光で駆動可能な高速応答型液晶フォトニック材料の開発に向けた基盤となる成果です。
発表題目:水系環境におけるビナフチル架橋イミダゾール二量体の逆フォトクロミズム
三橋花楓さん(理工学研究科 理工学専攻 化学コース 博士前期課程1年・阿部二朗教授研究室所属)
可視光を照射すると色が消え、照射を止めると再び色が戻る。このような挙動を示す現象を逆フォトクロミズムと呼びます。紫外光に比べてエネルギーの低い可視光で制御できること、光照射により無色になるため内部まで光が届きやすくなることが利点であり、材料科学や生命科学への応用が期待されています。三橋さんは、この特性を水中でも発揮できるような分子設計を行いました。鍵となったのはピリジニウムイオン構造で、これを導入することで、水の割合が80%に達するような高極性環境においても可視光による構造変換が効率的に進行するようになりました。この成果は、従来の逆フォトクロミック分子では困難だった領域への道を拓くものです。水系材料や生体関連分野における光応答性機能の設計に新たな可能性をもたらす成果として位置付けられます。
※本研究は、日本学術振興会・科研費 JP23K26633(基盤研究(B))、およびJP23H04878(学術領域変革研究(A) メゾヒエラルキーの物質科学)の支援による研究成果です。
※フォトクロミック分子とは:光照射により可逆的に構造が変化し、色や性質が変わる分子のことです。阿部研究室では、色や性質が高速に変化する独自の高速フォトクロミック分子を開発しており、屋外でのみ着色するサングラスやリアルタイムホログラムなど、従来にない応用が期待されています。
受賞者からのコメント
佐藤颯飛さん(理工学研究科 理工学専攻 化学コース 博士前期課程1年・阿部二朗教授研究室所属)
「優秀ポスター発表賞」を受賞することができ、大変うれしく思っております。本研究を進めるにあたり、常に新しい視点や示唆を与えてくださる阿部二朗教授、相澤匠助教、そして日々ともに議論や実験に取り組んでくださる研究室のメンバーの皆さまに、心より感謝申し上げます。発表当日には、多くの先生方や学生の皆さまから活発なご質問やご意見を頂戴し、自身の研究を改めて見つめ直す貴重な機会となりました。今回の受賞を励みに、光と液晶の面白さをさらに深く追究し、より魅力的な研究成果として発信できるよう、一層精進してまいります。
三橋花楓さん(理工学研究科 理工学専攻 化学コース 博士前期課程1年・阿部二朗教授研究室所属)
このたび「優秀ポスター発表賞」を賜り、大変光栄に存じます。分野の異なる多くの方に研究内容をご評価いただけたことを、心よりうれしく感じております。日頃よりご指導くださる阿部二朗教授、相澤匠助教、そして日々支えてくださる研究室の皆さまに深く感謝申し上げます。本受賞を励みに、今後も研究に真摯に向き合い、より一層の成果を挙げられるよう努めてまいります。
指導教員からのコメント
阿部二朗教授(理工学部 化学・生命科学科)
このたびの受賞は、佐藤さんと三橋さんが日々の研究に真摯に取り組み、新しい発想と粘り強さで成果を積み上げてきた結果だと大変誇りに思います。逆フォトクロミズムを示す分子の開発は学術的にも応用的にも意義が大きく、今後の展開に大きな期待を寄せています。今回の受賞を励みに、さらに研究を発展させてくれることを楽しみにしています。

