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2025.12.16
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【地球社会共生学部】タイ留学中の学部生が国立コンケーン大学で日本語ワークショップを開催 —「曖昧な日本語」をテーマに日タイ学生が交流 —
2025年11月24日(月)、現在タイに留学中の地球社会共生学部の学生有志が、同学部の林拓也教授の引率のもと、タイ東北部に位置する国立コンケーン大学人文社会学部で日本語を学ぶ学生を対象に、日本語ワークショップを実施しました。今回は約60人のタイ人日本語学習者が参加し、日タイ双方の学生が共に学ぶ貴重な機会となりました。
地球社会共生学部では毎年度、2年次後期に約100人の学生がタイへ留学しています。バンコクで学ぶ本学学生が多い一方、地方都市で学ぶタイ人学生と直接交流する機会は多くありませんでした。こうした背景から、地域の多様な文化や価値観に触れることを目的として、コンケーン大学で日本語教育を担当している杉森奈美先生の協力を得て、本ワークショップが実現しました。
今回、杉森先生からは「会話を扱う内容にする」という方針が示され、本学学生はその方針をもとに、どのような切り口で会話を扱うかを検討しました。その結果、日本語の曖昧な表現に焦点を当てるというテーマを自ら立案し、約1ヵ月半にわたりオンラインで準備を進めました。企画内容、スライド資料、事前課題などはすべて学生が自主的に作成したもので、学生有志メンバーの中で役割を分担しながら、それぞれが主体的に運営を行いました。
山本美月さん ■学生有志メンバー チームリーダー:山本美月さん(地球社会共生学部2年)
準備段階では対面で打ち合わせる機会がなかったものの、リーダーを務めた山本美月さんはオンラインミーティングやSNSを効果的に活用し、メンバーの意見を丁寧にまとめながら計画的に準備を進めました。当日も、進行の判断や説明の補足を適切に行い、チーム全体を支えました。
山本美月さん ■「仏像クイズ」で自然な会話が生まれる
ワークショップの開始時には、日タイ双方の学生に緊張していた様子が見られました。導入として行われた「タイと日本の仏像の違い」に着目したクイズでは、表情・色・素材の違いについて日本語で話し合う活動が取り入れられており、このクイズを通して徐々に場の雰囲気が和らぎ、自然な会話が生まれていきました。
和田翠さん ■学生が考案したメインテーマ「曖昧な日本語」
メインとなるワークは、学生たちが自主的に設定した「曖昧な日本語」をテーマとして扱いました。参加者は、「大丈夫です」「いいです」「ちょっと」「まあまあ」など、曖昧だと感じる表現を書き出し、それぞれの表現について、どのような印象を受けるか、どのような場面で使われるかを日本語で話し合いました。声の調子や表情によって意味が変化する例を実演する場面もあり、日本語特有のニュアンスへの理解が深まる時間となりました。さらに、同じ表現でも文脈によって解釈が変わる理由について具体例を挙げて検討し、タイ語との比較を通して新たな気付きが生まれる場面もありました。
和田翠さん
■誤解の起きやすい場面をロールプレイで体験
後半の活動では、日タイ間で誤解が生じやすい場面をグループで考え、ロールプレイ形式で実演しました。学習者が日常で戸惑いやすい状況を扱うことで、言葉だけでなく、表情・声の調子・間の取り方といった非言語的な要素がコミュニケーションに大きく影響することを、体験的に学ぶ機会となりました。
■わずか2時間で縮まった距離
終盤には、各グループが学んだ内容を共有し、代表者が発表しました。「曖昧な表現の背景に文化があることを知った」「日本語を使って話すことがより楽しくなった」など、多くの感想が寄せられ、参加者の学びの広がりが感じられました。ワークショップ終了後には、学生同士が写真を撮り合ったり、連絡先を交換したりする姿も見られ、開始時の緊張がすっかり和らぎ、新たなつながりが生まれる様子がうかがえました。
■学生主体の学びが生んだ国際交流の場
今回の取り組みは、学生が自ら企画し、異文化環境で実践し、互いに学び合う場をつくった点で大きな意義がありました。準備から当日の進行までの一連の経験は、学生にとって実践的な学びとなり、言語を通して文化を理解し、人とのつながりを築く力を育む貴重な機会となりました。今後も本学部生による主体的な国際交流が続き、さらなる学びの広がりにつながることが期待されます。
参加者からのコメント(いずれも地球社会共生学部2年生) ※( )内は当時の留学先大学
学生有志メンバー チームリーダー:山本美月さん(マヒドン大学)
今回のワークショップに参加した理由は、タイの文化や言語を学ぶだけでなく、タイの人々が日本の言語や文化をどのように捉えているのかを知りたかったこと、そしてコンケーン地域の人々との交流に強く惹かれたことにあります。準備はすべてオンライン上で進めました。初対面のメンバーもいるチームで一体感を持ってワークショップをつくり上げるためには、当日の流れをどれだけ具体的に想像し、予測し、準備できるかが重要だと感じました。しかし、コンケーン大学の皆さんがどのような反応を示してくれるのか、またコンケーンという土地がどのような雰囲気なのかなど、実際に現地へ行ってみないと分からないことも多く、行ったことのない異国の地でイベントを企画する難しさを身をもって体感しました。
ワークショップのテーマは「曖昧な日本語」です。「大丈夫です」「いいです」など、同じ日本語の表現でも、声の調子や表情、文脈によって「はい」にも「いいえ」にもなるという例を紹介し、教科書には載らない日本語の日常会話の曖昧さを体感してもらえるよう工夫しました。コンケーン大学の学生の皆さんは、こちらの話を丁寧に聞き、「そうなんですね!」と素直に受け止めてくれる温かく朗らかな、とても勤勉な方ばかりでした。
言語を通して文化を学び、文化を通して心を通わせる経験ができ、今回のワークショップは非常に有意義な時間となりました。また、他大学へ留学している地球社会共生学部の同級生たちと交流できたことも大きな成果でした。タイという異国の地でワークショップを企画し、実行した経験は、大きな達成感と自信につながりました。
松本花楓さん(タマサート大学)
先日のワークショップは、機内で思わず気持ちを書き留めたくなるほど、貴重で心に残る経験でした。このような素敵な機会をいただけたことに、心から感謝しております。林教授のおかげで、学生の皆さんと温かい時間を共有することができました。本当にありがとうございました。
初めはとても緊張していましたが、学生たちと関わるうちに、その気持ちは少しずつ和らいでいきました。そこにいた学生たちは、普段私が留学先で接している学生とはまた異なる雰囲気で、日本が大好きだという思いが自然と伝わってきて、心が温かくなりました。準備の段階では、現地に行ってみないと分からないことばかりで不安に感じることも多くありましたが、実際に足を運んでみると、想像をはるかに超える温かい雰囲気で歓迎してくださり、その優しさに触れた瞬間、不安はゆっくりと解けていきました。さらに、「もっと日本語が上手になりたい、もっと知りたい」と真剣に向き合い、たくさん質問してくれる姿は本当に嬉しく、何度も胸を打たれました。教える立場として訪れたはずでしたが、学生たちのまっすぐな思いに触れ、私自身が大きな力をもらうことができた一日でした。
今回の経験は、これからの学びや出会いに向き合う気持ちを、さらに前向きにしてくれたように感じています。
岩田七海さん(タマサート大学)
今回のワークショップで一番印象に残っているのは、グループ内で行った寸劇です。皆が声のトーンや表情を使いながら曖昧な日本語の意味をつかもうとしており、とても楽しく、このテーマにして良かったと感じました。今回の経験を通して、チームで一つのものを作り上げる達成感や、自分の伝えたいことを分かりやすく相手に伝える力を身に付けることができたと思います。参加できて本当に良かったです。ありがとうございました。
リ- エマ ロ-レン 蘭さん(タマサート大学)
今回のワークショップでは、コンケーン大学で日本語を学ぶ学生と交流することができ、とても充実した時間となりました。学生の日本語の表現力や、自分の考えを一生懸命伝えようとする姿勢に、私自身も大きな刺激を受けました。日本語の曖昧さについて話し合う中で、タイ語との意外な共通点が見つかる場面もあり、言語を比較する面白さを実感しました。また、自分の伝えたいことがうまく伝わらない時に、お互いに理解しようとする思いやりやジェスチャーの重要性を改めて感じました。今回の経験を通して、言語を学ぶ楽しさや、人と向き合う姿勢の大切さを実感しました。この学びを今後、言語や文化の異なる人と関わる際にも生かしていきたいです。
高山漣さん(カセサート大学)
今回のテーマは「曖昧な日本語を知ろう」というもので、難しいテーマに取り組むにあたり、何度も壁にぶつかりました。資料作成では、企画との認識の差を埋めることや、時間管理の難しさを痛感しました。しかし、複数回のフィードバックを経て目標と認識をみんなで共有できたと思います。一緒に取り組んでくれたリーダーと仲間に感謝しています。
当日の活動は驚きの連続でした。事前情報では分かっていたものの、実際に60人の学生を目の前にすると、やはり緊張しました。しかし、想像を超えるレベルで日本語を流暢に話すタイ人学生の姿に触れ、私自身も強く励まされました。「曖昧な日本語を知ろう」というテーマは難しく、ワークショップが滞ることも覚悟していましたが、学生たちは事前に配布した予習ワークシートにしっかり取り組んでくれて、私の拙い説明にも真剣に耳を傾け、理解しようとしてくれました。2時間という限られた時間の中で、曖昧な日本語への理解が確実に深まったと思います。
一方で、もっと分かりやすく伝えられた部分もあったと感じています。より簡単な日本語、より簡潔な説明、より適切な例を使えば、さらに理解を深めてもらえたのではないかとも思います。また、グループのタイ人学生が説明に協力してくれたことは本当に心強く、適宜確認を取りながら理解を共有してくれたおかげで、ワークショップを無事にやり切ることができました。
今回の経験は、私にとって大きな財産です。協力してくださった先生方、青学生、コンケーン大学の学生の皆さんに、心から感謝しています。
和田翠さん(カセサート大学)
ワークショップを通して、「相手を考慮して話すこと」は、自分ではできているつもりでも、実際にはとても難しいことだと感じました。タイ人学生と日本語で話し合ったり、日本語について青学生が説明したりする時間がありましたが、その際、ゆっくり話そう、分かりやすい言葉を使おうと心がけていたにもかかわらず、実際には早口になったり、難しい敬語を使ってしまったりしました。そのため、内容が理解しづらいと感じたタイ人学生もいたのではないかと思い、ワークショップ後にもっとできることがあったと振り返りました。この経験から、今後は物事を伝える際に「自分だったらどのように伝えてもらえたら分かりやすいか」を意識し、相手の立場に立って考えたいと思います。また、このような姿勢はとっさに身に付くものではないため、日常の会話の中でも意識していきたいと感じました。
今回のワークショップは、私の留学生活の中でも大きな活動となりました。さまざまな大学に留学している青学生と協力し、準備を進めてきた経験は大変なこともありましたが、終了後の達成感は留学生活の中で最も大きなものでした。このような貴重な機会をくださった林先生、杉森先生、そして学生の皆さんに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
世古隼翔さん(カセサート大学)
今回のワークショップでは、まず現地の学生たちが話す流暢な日本語に驚かされ、その努力を想像して私自身も良い刺激を受けました。グループワークでは、「曖昧な日本語」という実用的なテーマを通じて、多くの日本語を学んでもらえたと思います。議論を進める中で、私たちが普段何気なく使っている言葉の複雑さや奥深さを改めて実感し、私自身にも大きな学びがありました。短い時間でしたが、和気あいあいとした雰囲気の中で非常に充実した時間を過ごすことができました。国を超え、言語でつながった今回の交流を、今後も何らかの形で続けていきたいと思います。
引率者コメント(地球社会共生学部 林拓也教授)
今回のワークショップの実施にあたり、多大なるご協力をいただいたコンケーン大学の杉森奈美先生に、心より御礼申し上げます。先生のお力添えがあったからこそ、学生たちは安心して挑戦し、多くの学びを得ることができました。本学の学生にとって、バンコクの大学で学ぶタイ人学生と、地方都市で学ぶタイ人学生がどのように異なる価値観や生活環境の中で学んでいるのかを知ることは、タイという国をより立体的に理解するうえで大変重要です。今回の交流を通して、タイの若者たちの多様性に触れ、国全体への理解がより深まったことと思います。バンコクで暮らす本学部の学生にとって、地方の大学に通うタイ人学生と知り合う機会は決して多くありません。だからこそ、こうした交流は地球社会共生学部にとって大きな意味を持ちます。都市部だけでは見えてこない価値観や背景に触れることは、将来、学生たちが多文化社会で生きていく上で大きな財産となります。今回出会ったコンケーン大学の学生の皆さんとのつながりを、参加した本学部生にはぜひ大切にしてほしいと願っています。この出会いが、今後の学びや人生において、新たな視点や進路を開くきっかけになることを期待しています。


