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2025.12.04
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【比較芸術学科】「第13回比較芸術学会」にて「瀬戸山美咲氏 特別講演会」を実施
2025年11月8日(土)、青山キャンパス本多記念国際会議場にて、第13回比較芸術学会「瀬戸山美咲氏 特別講演会」を開催しました。
比較芸術学科では毎年、第一線で活躍する芸術家や研究者を招いて講演を企画しており、今年度は、現代日本演劇を牽引する劇作家・演出家の瀬戸山美咲氏をお迎えしました。瀬戸山氏は、小劇場からミュージカルまで幅広い分野で創作を手がけ、読売演劇大賞優秀演出家賞や菊田一夫演劇賞などを受賞。日本劇作家協会会長としても活躍されています。
「エンターテインメントと芸術」と題した今回の講演では、2025年の三作品――手塚治虫原作の舞台『火の鳥 異形編』、社会問題を扱うオリジナル作品『PERFECT』、平野啓一郎の小説をミュージカル化した『ある男』――を中心に、ジャンルを横断する創作のあり方が語られました。
それぞれ方向性の異なる作品でありながら、瀬戸山氏のお話を伺ううちに、一貫した姿勢が浮かび上がってきます。単純な善悪では捉えきれない人間の弱さや葛藤に向き合うテーマ、簡素化・抽象化によって観客の想像力を引き出す演出。そして観客がそれぞれに思考を深められるよう、あえて「わからない部分」を残す仕掛け。観客にどこまで理解させて、どれほどの余白を残すのか。その繊細なさじ加減は、美術の展覧会や楽器演奏にも通じます。
質疑応答では、創作現場の具体的なエピソードが紹介されました。ミュージカルでは主要キャストとアンサンブルを分け隔てなく同じ輪のなかで稽古を進めること。サッカーが出てくる作品なら、座組のメンバーでサッカーをするなど、稽古場を出てみんなで同じ体験をすること。効率よりも交流を大切にする姿勢が印象に残ります。講演終了後の懇親会でも、学生や卒業生からの質問が絶えることはなく、瀬戸山氏は一人ひとりに温かい励ましの言葉をかけてくださいました。
社会の分断が進み、芸術やエンターテインメントの趣味嗜好も細分化する今日にあって、瀬戸山氏は創作のジャンルや方法、さらには日々のふるまいにおいても、垣根を越えた対話を実践されています。その開かれたあり方にじかに触れることのできた講演会は、学科に新たな活力をもたらしてくれました。