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2017.10.30

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南亮輔さんが、Best Poster Award」を受賞

南亮輔さん(理工学研究科理工学専攻基礎科学コース2年・松川宏教授研究室)が、2017年9月17日~22日、中国・Beijing International Convention Centerで開催された「6th World Tribology Congress」において、「Numerical Experiments on the Dynamics of Sheared and Pulled-Off Single Asperity and the Origin of Sliding Friction」という題目でポスター発表を行い、「Best Poster Award」を受賞しました。

この賞は、Chinese Tribology Instituteが主催する「6th World Tribology Congress」において、特に優れていると認められたポスター発表におくられるものです。

南さんは、摩擦に関して成り立つアモントン・クーロンの法則*の解明のため、原子・分子スケールの微小な突起に生じる摩擦について研究しました。摩擦は最も身近な物理現象の一つですが、そのメカニズムには不明な点が多く残されています。環境問題・省エネルギー問題の解決のためには、このような原子・分子レベルからの摩擦・潤滑・磨耗の機構の解明、制御が必要とされます。

南さんは、微小な突起に生じる摩擦を3次元モデルに基づきシミュレーションを行い摩擦力や表面エネルギーの計算をしました。微小突起を上下から押し付け、安定したところで上突起を右にせん断駆動させます。この時、上下の突起間には原子・分子間相互作用による凝着が起こっているため、駆動方向とは逆向きの摩擦力が生じます。図のように、摩擦力の部分的な減少(スティック・スリップ運動**)や微小突起間での原子の移動も確認することができます。摩擦力と接触面積の関係性を明らかにすることでアモントン・クーロンの法則の1つ「摩擦力は荷重に比例する」のメカニズムを明らかにしました。

南さんの発表は、摩擦法則を解明した研究成果と、優秀なプレゼンテーションや質疑応答の態度が評価され、「Best Poster Award」に値すると認められました。

  • * アモントン・クーロンの法則とは・・・

    固体間の滑り摩擦に関しては、以下に記す経験則が広い範囲で成り立ちます。
    1. 摩擦力は荷重に比例する
    2. 摩擦力は見かけの接触面積に依らない
    3. 動摩擦力は最大静摩擦力より小さく滑り速度に依存しない

  • ** スティック・スリップ運動とは・・・

    日常生活でよく経験する摩擦現象の1つで、滑りと静止を繰り返す運動です。例として床の上の積み木を、一定速度で動くバネで引っ張る場合を考えます。最初、バネの自然長の状態から始めると、時間と共にバネの力が増大し、それが最大静摩擦力を越えたとき積み木は動き出します。アモントン・クーロンの法則に従えば、動き出すと同時に摩擦力が最大静摩擦力から動摩擦力へと小さくなるので勢いよく滑り出します(スリップ)。滑るとバネの力が緩和し、ある程度滑ったところで積み木は止まり、再びバネの力が最大静摩擦力に達するまで止まり続けます(スティック)。このように、静止状態と滑り状態を繰り返す運動をスティック・スリップ運動といいます。この運動は、建て付けの悪い引き戸を開けるときや、自転車のブレーキの鳴きとして、私たちにもなじみ深いものです。