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2023.09.30

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2023年度9月 大学院・大学学位授与式を挙行しました

2023年9月30日(土)、青山キャンパスのガウチャー記念礼拝堂にて、学位授与式を執り行い、164人の卒業生(学部142人、大学院22人) が新しい門出を迎えました。
式では、阪本浩学長が学位記を授与し、式辞を述べ、山本与志春院長が告辞を述べました。

阪本浩学長の式辞

ご卒業おめでとうございます。

皆さんのキャンパスライフは、初めからパンデミックの時期と重なってしまいました。辛いことも苦しい時もあったと思います。しかし皆さんは、学びを止めることなく、この危機を乗り越えて、今日ここに学位記を授与されるに至りました。困難を克服した分、皆さんには、他の世代にはない強さがあるように感じています。

本日ご卒業される皆さんに贈る言葉として、ダンテ『神曲』の冒頭部分を選んでみました。言葉というより、情景と言った方が良いでしょう。ダンテの作品に描かれる場面は、古くから芸術作品のテーマとなってきました。ドレの版画、ロダンの彫刻などは特に有名でしょう。つまり、絵になる文学作品なわけです。ここで紹介したいのは、冒頭のこんな場面です。

人生の道半ばで暗い森の中に迷い込んでしまったダンテでしたが、ようやく森を抜けて、とある丘の麓にたどり着きました。目を上げると丘の稜線は明るい太陽の光に包まれています。その明るいところへ向けて山の斜面を登り始めたのですが、そこに豹が現れ、行く手を遮ろうとしています。これをかわしたと思ったら、今度は獅子が現れ、こちらに向かって進んできます。次に、もっと恐ろしい牝狼がこちらに向かってきます。恐ろしさのあまり、丘に登る望みを捨てたダンテは、じりじりとあの暗い森の方へと退いてしまいます。そこで尊敬する古代の詩人ウェルギリウスに出会い、この師と仰ぐ詩人の道案内で遠回りをすることになり、『神曲』の物語が始まるのです。

この豹は、獅子は、狼は、それぞれ何を象徴しているのかと、専門家たちは議論を続けてきました。豹は肉欲、嫉妬、獅子は高慢、権力、暴力、牝狼は貪欲を象徴していると言われています。当時の政治状況との関連では、豹はフランス王国、獅子はフィレンツェ共和国、狼はローマ教皇庁を象徴しているとの説もあります。しかし、私にはそれよりも、この場面そのものが印象的で、その情景が忘れられません。何度も夢に見ました。悪夢です。私も光り輝く頂を目指して斜面を登ろうとするのですが、豹が、獅子が、狼が行く手を遮る、阻もうとするのです。「何故いつも邪魔をする、お願いだから通してくれ」と大声で叫んだところで夢から覚めます。悪夢だけではありません。現実でも何度も何度も、この情景を見る思いがします。何か目標に向かって前進しようとすると、必ず豹が現れ、それをかわしたかと思うと獅子、狼が登場して私の行く手を遮るのです。勇気がなければ、ダンテと同じように退くしかありません。

皆さんは、これからどのような分野に進もうとも、それぞれの目標に向かって新たな一歩を踏み出すことになります。もしかするとその過程で、豹が、獅子が、狼が現れてあなたの邪魔をするかもしれません。ここで紹介した情景を思い出すことになるかもしれません。しかし、皆さんなら大丈夫です。パンデミックの危機を乗り越えた若い皆さんなら、豹をかわし、獅子から上手に逃れ、狼を出し抜いて進んでいけるでしょう。光り輝く丘の稜線へ向かって、つまりそれぞれの目標へ向かって、苦しくとも斜面を登っていくでしょう。恐ろしいと感じても、勇気をもって前進してください。皆さんが、これからの時代の担い手として活躍されますよう期待しています。