総合研究所は、1988年の創設時の意思を継承しつつ、全学的視野にもとづいて、本学に所属する教育職員を対象に、さまざまな研究支援事業を行っております。青山学院大学の優れた研究を育成・支援し、その豊かな研究成果を広く発信していくことは、学内のみならず学界や社会において、総合研究所が担う重要な責務です。2018年より統合研究機構の中に位置づけられ、研究推進部と数名の教職員で構成される運営委員会でその役割を担っております。
総合研究所の研究活動の中心を担うのが、「研究ユニット」です。「研究ユニット」は、その予算規模によってA・B・Cの三段階に分けられ、人文科学・社会科学・自然科学・キリスト教の諸分野における先駆的・意欲的なテーマを創出し、学内のみでなく、学外の第一線で活躍する研究者を交えて2、3年かけて行う共同研究です。2025年度は新規ユニット6件と継続ユニット8件の計14件のプロジェクトチームが稼働し、着実にその研究成果を上げています。各研究チームは最終年度の翌年には、報告書や書籍として、その研究成果を公表し、学界や大学・社会に広く貢献することになっております。これまでの研究は『青山学院大学総合研究所叢書』『研究成果報告論集』としてその成果が蓄積されてきており、研究推進部には今まで発行された叢書・報告書が一覧できるようになっております。
また、若手研究者の育成・支援も総合研究所の重要な使命の一つです。2024年度から、若手研究支援であるアーリーイーグル研究支援制度を大幅に改革し、助手・助教を対象として、研究成果の発信に重点を置いた目的型の支援の強化、博士後期課程学生を対象としては、従来のプロジェクト申請型をさらに充実した内容に変更し、その活性化を試みました。2025年度は申請者が倍増するなど、その成果は着実にあがりつつあります。このほか、科学研究費取得をめざす教員を対象とする基盤研究強化支援制度も毎年多くの申請があり、ご活用いただいております。
これらの総合研究所の研究活動や研究成果は、毎年発行される『NEWS SOKEN』・『総合研究所所報』・総合研究所ホームページなどで紹介しておりますので、その内容をご覧いただくことができます。引き続き、ご支援、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
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| 研究課題 (略称) | ユニットリーダー | 所属・職位 | 構成員数 |
| ⾃然科学的⼿法を⽤いた古代東北社会の考古学的研究(東北古代社会) | 菅頭 明⽇⾹ | ⽂学部 史学科 教授 | 2名 |
| 世界史におけるトランスカルチュレーションの比較史的考察(比較史的考察) | 安村 直己 | 文学部 史学科 教授 | 11名 |
| 「できる」を支える「知る」が身に付くために、どう教員養成をするのか 国際比較検討(でき知る養成) | 柳田 雅明 | 教育人間科学部 教育学科 教授 | 4名 |
| 青山学院所蔵「津川主一コレクション」のデジタルアーカイブ化及び音楽活動の検証(津川主一研究) | 山本 美紀 | 教育人間科学部 教育学科 教授 | 3名 |
| 文化・芸術・スポーツ・学びの相互交流とインクルーシブ社会デザインによる地域創生(未来地域創生) | 高松 朋史 | 経営学部 経営学科 教授 | 13名 |
| スポーツ・アントレプレナーシップ養成プログラム開発~社会課題解決事業の創出~(スポアン開発) | 宮崎 純一 | 経営学部 マーケティング学科 教授 | 5名 |
| 移民統合におけるスポーツの役割に関する研究(地域移民統合) | 奥村 キャサリン | 国際政治経済学部 国際コミュニケーション学科 准教授 | 3名 |
| 「資源の呪い」を解明するミクロ実証分析(資源の呪い) | 山下 直輝 | 国際政治経済学部 国際経済学科 教授 | 2名 |
| 遷移金属系超伝導関連物質の微小ラメラ試料に対する精密物性測定(微小ラメラ) | 北野 晴久 | 理工学部 物理科学科 教授 | 2名 |
| 段階的多光子励起された分子の反応制御と時間分解赤外分光による構造解析(多段励起赤外) | 坂本 章 | 理工学部 化学・生命科学科 教授 | 3名 |
| がん放射線治療の最適条件を探るための酸素プローブ開発研究(酸素プローブ) | 田邉 一仁 | 理工学部 化学・生命科学科 教授 | 2名 |
| 感染症流⾏動態の数理モデリングと数理解析(MDD) | 中田 行彦 | 理工学部 数理サイエンス学科 准教授 | 2名 |
| 画像計測と逆問題解析を用いた複数の独立した粘弾性材料特性の同時評価(粘弾性材料) | 米山 聡 | 理工学部 機械創造工学科 教授 | 1名 |
| キリスト教大学と平和構築(平和構築) | 藤原 淳賀 | 地球社会共生学部 地球社会共生学科 教授 | 4名 |
| 研究課題 (略称) | ユニットリーダー | 所属・職位 | 構成員数 |
| ⾃然科学的⼿法を⽤いた古代東北社会の考古学的研究(東北古代社会) | 菅頭 明⽇⾹ | ⽂学部 史学科 教授 | 2名 |
| 世界史におけるトランスカルチュレーションの比較史的考察(比較史的考察) | 安村 直己 | 文学部 史学科 教授 | 11名 |
| 「できる」を支える「知る」が身に付くために、どう教員養成をするのか 国際比較検討(でき知る養成) | 柳田 雅明 | 教育人間科学部 教育学科 教授 | 4名 |
| 青山学院所蔵「津川主一コレクション」のデジタルアーカイブ化及び音楽活動の検証(津川主一研究) | 山本 美紀 | 教育人間科学部 教育学科 教授 | 3名 |
| 文化・芸術・スポーツ・学びの相互交流とインクルーシブ社会デザインによる地域創生(未来地域創生) | 高松 朋史 | 経営学部 経営学科 教授 | 13名 |
| スポーツ・アントレプレナーシップ養成プログラム開発~社会課題解決事業の創出~(スポアン開発) | 宮崎 純一 | 経営学部 マーケティング学科 教授 | 5名 |
| 移民統合におけるスポーツの役割に関する研究(地域移民統合) | 奥村 キャサリン | 国際政治経済学部 国際コミュニケーション学科 准教授 | 3名 |
| 「資源の呪い」を解明するミクロ実証分析(資源の呪い) | 山下 直輝 | 国際政治経済学部 国際経済学科 教授 | 2名 |
| 遷移金属系超伝導関連物質の微小ラメラ試料に対する精密物性測定(微小ラメラ) | 北野 晴久 | 理工学部 物理科学科 教授 | 2名 |
| 段階的多光子励起された分子の反応制御と時間分解赤外分光による構造解析(多段励起赤外) | 坂本 章 | 理工学部 化学・生命科学科 教授 | 3名 |
| がん放射線治療の最適条件を探るための酸素プローブ開発研究(酸素プローブ) | 田邉 一仁 | 理工学部 化学・生命科学科 教授 | 2名 |
| 感染症流⾏動態の数理モデリングと数理解析(MDD) | 中田 行彦 | 理工学部 数理サイエンス学科 准教授 | 2名 |
| 画像計測と逆問題解析を用いた複数の独立した粘弾性材料特性の同時評価(粘弾性材料) | 米山 聡 | 理工学部 機械創造工学科 教授 | 1名 |
| キリスト教大学と平和構築(平和構築) | 藤原 淳賀 | 地球社会共生学部 地球社会共生学科 教授 | 4名 |
7世紀以降に律令国家が東北地方に進出していく中で、秋田県内の横手盆地は郡衙や城柵が設置された地域と目され、東北における古代社会の様相を探る上で非常に重要な地域です。そこで本研究では、横手盆地に所在する雄勝城推定区や後三年合戦関連遺跡を主なフィールドとして、自然科学的な手法を用いた考古学的研究を実施しています。
2025年度は、秋田県横手市金沢城跡で実施した地上型3次元レーザースキャナ測量調査において取得した点群データの解析が進められ、囲郭施設が設置された場所の精細な地形3Dモデルを作成しました。さらに同時期に営まれていた可能性のある仙北市相内沢Ⅰ遺跡にも同様の調査を行い、両遺跡の構造的特質を把握することができました。また前年度実施した造山遺跡群におけるレーダ探査調査についても詳細な解析を進め、考古学的検討も踏まえた結果を発表しました。
そのほかに、横手盆地の遺跡から出土した考古遺物の胎土分析を実施するため、可搬型蛍光X線分析装置ELIOを導入し、本装置を用いた考古遺物の分析方法の確立および改良を重ね、本装置による考古遺物分析への適用の有用性を確認しました。可搬型蛍光X線分析装置の特徴はオンサイトでの測定が実施可能なところにあり、2026年度は横手盆地の遺跡から出土した須恵器や土師器について胎土分析のデータを現地で蓄積し、その成果をまとめていく予定です。
数年前までマスメディアやネット上で頻繁に使われていたキーワードの一つはボーダーレス化でしたが、いまでは分断や移民排斥にとって代わられつつあります。本ユニットでは、ボーダーレス化が声高に叫ばれていたころに構想されましたが、流行に乗るのではなく、世界史においてはボーダーレス化にともなう双方向的な文化交流、すなわちトランスカルチュレーションがかならずしも国と国、民族と民族、文化と文化の間の壁を下げる訳ではなく、ときに壁の強化につながるというパラドックスを、複数の時代と地域に関する具体的な経緯に即して浮き彫りにすることを目指しています。
2025年度はその初年度であり、4回の研究会を通じ、日本統治下の台湾と朝鮮、イギリス帝国自治領オーストラリアと南アフリカ、スペイン統治期メキシコ、16世紀後半のヨーロッパにおけるカトリック再宣教と新大陸、アジアにおける布教戦略のあいだの相互規定性についての報告と意見交換をおこない、差異を確認するとともに共通理解に向けての一歩を踏み出しました。
年度末には南薩摩で合同調査を実施し、中世、近世、近代を通じて同地域においてトランスカルチュレーションの在り方がいかに変化したのか、また薩摩半島内でのローカルな差異を現地で確認することができました。
たとえば、各集落は海を通じての東アジア世界との交流という点で共通性を有する一方で、墓制などにおいて顕著な相違を示していますし、幕末の欧米諸国との出会い―それは一面で壁の強化につながりました―が引き起こしたトランスカルチュレーションの現れとしての神仏分離、廃仏毀釈が近世と近代のあいだに深い断絶をもたらしたことが、首を斬られた仏像などから明らかになりました。これらは安易な一般化を拒絶する事例であり、私たちが共通の枠組みを構築する際に慎重に検討する必要を痛感させてくれました。
今年度も4回ほどの研究会と合同調査、および各研究員の個別研究を通じ、最終年度における論集の公刊に向けて歩みを進めていきます。
※写真1~写真2:指宿、山川、頴娃、枕崎、坊津など、南薩摩の港(泊、浦)の集落では、隣接していても、異なる形式の墓が確認される。
※写真3:指宿、山川、頴娃、加世田などでは、島津家やその配下にあった一族の菩提寺の壮麗さから、対外貿易と地域の権力の結びつきが見て取れるが、薩摩藩の徹底した廃仏毀釈により、現在そこには墓所のみが残る。
写真1:山川湊墓地(家屋を模した墓石の囲)
写真2:坊津一条院跡墓所(方形の石の囲)
写真3:今泉島津家墓所(指宿)
Interdisciplinary International Comparative Study of Initial Teacher/Trainer Training
「できる」ばかりを目指す教育で良いのでしょうか。たしかに、幼い子どもが「できた」時、その喜びは子ども本人ばかりか保護者そして教育者にとっても大きいです。できてこそ意味があって、知っているだけでは不十分であることが多いのもたしかです。しかし年齢を重ねていくうち、「できていればわかっていなくとも良い」では、学びが与えられた状況に対応させるだけとなります。このような状況を克服することに資する知見を学術に裏打ちして得たいというのが、本研究において根本となる問題意識です。そこで、本研究ユニットでは、「教員養成 (職業能力開発指導員養成を含む)」に焦点を絞って得られる知見をまず目指します。
「できる」を支える「わかる」が身に付くよう指導ができる者を輩出できる教員養成をどう実現するのか。まさに主体たる人間として自身で「知り」「わかり」「考える」を欠かさない土台にして「できる」ようにする教育者・指導者を輩出するため、何が共通して取り組まれ、その際何の性質を有する教材・施設・設備等どのように活用・運用しているのでしょうか。その目的が十分機能する形として実現する条件を、教科・領域を横断しての国際比較検討によって探求します。
本研究は青山学院所蔵「津川主一コレクション」(以下コレクション)について、1.資料をデジタルアーカイブ化し、その作業を通して、2.津川主一(1896-1971、以下津川)の仕事を検証・批判的分析研究を行うことを目的とするものです。
コレクションは、2016年にご遺族の了承を得て丸山忠璋氏より本学に寄贈されたもので、2025年度には研究目的1「資料のデジタルアーカイブ化」の元となるコレクションのデジタル化を完了することができました。これから、公開に向けてさらに整理を進めていこうとしているところです。
デジタル化が進むにつれ、彼の仕事の広がりを改めて確認できるようになると同時に、仕事全体を貫く「キーワード」や「柱」が見えてきたように思えます。それは、同コレクション内に多くの関係資料を有する「合唱」や「合唱運動」にまつわるものです。それらの内容を確認し精査した結果、「民謡」が津川の仕事の中で重要なキーワードであることが浮かび上がってきました。彼は日本で最初に黒人霊歌を翻訳したり、スティーブン・フォスター作品を日本に紹介したりしましたが、これらもまたこの延長線上にあると考えられます。
「民謡」について、津川は戦後5年たった敗戦記念日の朝日新聞「民謡の役割」(夕刊朝日新聞切抜 1950(S25)年8月15日)で、「米英加ではこれをシンギング・デモクラシー と呼んでおり、―中略― 「だれもが幸福になれる権利」の、具現化の一面なのである」と紹介し、さらに「民謡歌唱運動によって、各民族間に感情の交流が自然に行われる」「これが更に国際間に〔不明〕世界の各民族間に、イデオロギーや世界観の限界を乗りこえて、平和を招来するよすが」と民謡への期待がうかがえます。
2026年度は本研究ユニットの最終年度にあたり、研究成果発表として企画展示やレクチャーコンサートなど、いくつかのイベントを計画しています。それは彼の広い仕事のごく一部を紹介するに止まるものかもしれませんが、彼の生涯を貫く信仰と音楽活動の柱を示すことができればと考えています。
未来地域創生プロジェクトは、日本の社会的課題となっている地域創生について、「文化・芸術・スポーツ」を対象に研究を行っています。「文化・芸術・スポーツ」は日本のどの地域にも存在しうる地域資源です。
本プロジェクトの特徴として、1)「学生参加型プロジェクト」でありイベントを通じて学びを得ること、2)イベント設計として「事前・事中・事後の学び」を重視すること、3) 地域の誰もが参加できる「インクルーシブ社会デザイン」を重視すること、4) 「文化・芸術・スポーツ」に関連づけたインクルーシブ社会デザイン技法、地域創生バリューチェーンマネジメント技法などの理論探究と同時に、ハイブリッド型学び技術、デジタルツイン技術の研究開発など、プロジェクトを支援する技術の探索を行うことが挙げられます。
2025年度は引き続き、前年度の振り返りの上で取り組みを改善し発展させました。文化チームは地域観光資源の対象地域を広げたツーリズムプランの作成や観光素材のデジタル化、芸術チームは学祭展示に加えてメタバース展示に取り組みました。スポーツチームはインクルーシブスポーツイベントの種目・時間を拡大して実行し、技術チームはデジタルブックやイベント広報サイトの完成度を高めました。
最終年度はそれらのノウハウの形式知化、理論化を進め、研究成果として蓄積・公開していきます。
~社会課題解決事業の創出~
研究概要
大学の資源を活用したスポーツ事業を社会連携、地域貢献を実施する学院内プロジェクトと協働し、事業実践における企画、運営に学生たちが関わる活動が研究調査対象となります。この取り組みからスポーツを通じたアントレプレナーシップを獲得するアクティブラーニング形式のプログラム開発が期待されます。
昨年度から引き続き、学内における活動や授業プログラムでの学び、スキル、経験をさらに学外において実践する機会を創出しました。
①「奥能登高齢者ボッチャ大会(民間団体主催活動の運営サポート)」
経営論集60巻3号掲載
②「南三陸技能実習生対象ウォーキングフットボール大会(現地団体主催活動の運営サポート)」
経営論集60巻別冊掲載
③「奥能登被災地支援キッズスポーツチャレンジ(プロジェクト主催企画、運営)」
経営論集61巻1号掲載
成果と課題
特に3月に実施した「スポーツによる奥能登被災地復興支援」は、本年度で第2回を迎えます。ここでは青学アスリートやスポーツマネジメント専攻学生が石川県輪島市、珠洲市、能登町の中学生を対象として様々なスポーツ体験機会を提供しました。地域の子供たちに限らず保護者や高齢者も参加推奨し、近隣には希少な現役の大学アスリートとの触れ合いは貴重な機会となります。さらに指導にあたる大学アスリートには報告の通り「実践的学びの場」となりました。今後も「スポーツによる社会課題への取り組み」は、実践的教材として、キャリアマネジメント教育開発の研究対象として有用であり、アントレプレナーシップ教育開発に向け大いに成果を残すことが期待されます。
スポーツを通じた外国人住民の社会参加と地域交流
現在、日本では少子高齢化と労働力不足を背景として、外国人労働者の受け入れが進んでいます。技能実習制度の見直しや在留資格の拡大などの政策が進められ、外国人住民の数も年々増加しています。しかしその一方で、地域社会における受け入れ体制や、日本人住民と外国人住民との日常的なつながりは、依然として十分に形成されているとは言えません。孤立や言語の壁、文化的な違いに起因する誤解や偏見が、社会的な分断を生み出す一因となっています。
また、メディアでは「外国人による生活保護の不正受給」や「外国人犯罪の急増」といったセンセーショナルな見出しが注目を集める一方で、外国人住民が地域社会において果たしている役割や貢献については、十分に報道されているとは言えません。このような一面的な報道は、外国人住民に対する漠然とした不安感を生み出し、地域における関係構築を難しくしているという現状があります。
こうした社会状況の中で、本プロジェクトは「スポーツ」に着目しています。スポーツは、言語や文化の違いを越えて人と人とをつなぐ力を持ち、誰もが比較的対等な立場で参加しやすい活動です。とりわけ、地域のスポーツクラブや自治体主催の活動は、日本人住民と外国人住民が自然に交流できる場となる可能性を持っています。
本プロジェクトでは、まず各地のスポーツ団体、自治体、企業、国際交流団体などの協力を得て、活動の現状、参加者の構成、外国人住民の参加状況について調査を行います。あわせて、外国人住民がスポーツ活動に参加する際の障壁や、日本人住民が外国人との交流に前向きになる契機についても明らかにしていきます。
本プロジェクトの第1ステージにあたる2025年度には、以下の方々を対象に調査、ヒアリング、見学を実施しました。
① 在日外国人(スポーツと社会参加に関するアンケート調査)
② 外国人を交えたスポーツイベントを企画・実施する地方自治体と団体(インタビュー、イベント見学、参加者のアンケート調査)
③ 地方創生を目指す民間企業(インタビュー)
上記調査の結果について以下の学会で発表しました:
・2025年12月6日 移民政策学会冬季大会「Sports, Migration, and Social Capital in Japan: An Exploratory Study of Initiatives in Hamamatsu, Saga, and Tokyo」
・2026年2月6日 韓国日本学会国際大会「スポーツ参加とソーシャル・キャピタルー在日外国人住民の社会関係資本に関する探索的調査」(共同発表者:谷本英彰、田崎勝也)
これらの調査を踏まえ、2026年度の活動地域を兵庫県淡路島に定め、民間企業との共同研究を開始することとなりました。本プロジェクトの最終的な目的は、日本人住民と外国人住民がともに参加できるスポーツ活動の場を地域の中に築いていくことです。本年度はその実現に向けて、淡路島の地方自治体、スポーツ運営団体、日本人住民、外国人住民を対象とした調査および企画立案を当地域の企業とともに進めていきます。
本研究ユニットは、近年の国際経済学の重要な研究課題である「資源の呪い」現象を、オーストラリア政府が管理するミクロデータを用いた実証分析により解明することを目的として設置されました。豊富な天然資源を有しながら経済成長や産業発展に課題を抱える国・地域の現象を、企業や労働者を結んだミクロ主体のレベルで分析し、資源産業と非資源産業の間における賃金格差や生産性格差の実態を明らかにすることを目指しています。本研究は、本学が推進するSDGs(特に⑦エネルギー、⑧働きがいも経済成長も、⑩人や国の不平等をなくそう)に資する重要な研究課題であり、研究成果を国際社会に発信することにより、国際的な経済・社会問題への具体的な解決策を提供する役割を担います。
研究期間最終2025年度は、研究目的の達成に向けて以下の活動を展開いたしました。
第一に、「資源の呪い」現象のミクロ的基盤を解明するため、オーストラリア政府が管理する政府データベース - Business Longitudinal Analysis Data Environment (BLADE)にアクセスし、企業・労働者連結データを構築いたしました。このデータ作業のプロセスで得られた知見・手法・アルゴリズムは、他のプロジェクトにも応用できる汎用性の高いものになると考えられます。構築したデータベース自体は、分析のための使用申請に基づくものであるため公表することはできませんが、コードなどの技術的な部分につきましては、公共プラットフォームを利用して公開していくことを検討しております。
第二に、メルボルンへの研究滞在期間中に、滞在ホストであるスインバーン大学およびオーストラリア国立大学(ANU)の研究者と国際共同研究を進めました。今回構築したオーストラリア政府データベースを用いて、関税ショックがオーストラリア企業に与える影響など、地経学的リスクに関する実証分析を進めています。またこの研究問題に関して、2026年度稲盛研究助成に「地政学変動下における企業サプライチェーンの強靭化戦略」の題目でグラント申請も行いました。結果は不採用でしたが、科研費の申請など、次に繋げる成果ともなりました。
第三に、研究分担者である神林龍教授(武蔵大学)と共同で、本研究で開発した手法を日本の企業・労働者連結データに適用し、企業内賃金構造とイノベーション活動の関係を実証分析する共同研究を進めました。さらに、同様の手法をベトナムのデータに応用した単著論文も執筆いたしました。
2025年度の主たる成果として、ANUの共著者であるShiro Armstrong教授との国際共同論文を完成させ、国際査読誌Asia & the Pacific Policy Studiesに掲載されました(DOI: 10.1002/app5.70078)。本論文は、2018-2019年の米中関税戦争がオーストラリアの輸入企業に与えた影響を、企業レベルのデータを用いて実証分析したものであり、研究滞在中に構築したオーストラリア政府データベースを活用した成果です。「資源の呪い」研究で開発した企業・労働者連結データ(LEED)の手法をベトナムのデータに応用した論文も国際ジャーナルにも掲載しました。また、スインバーン大学との国際共同研究、豪州政府データベースを使用した分析論文も完成し、現在、国際査読ジャーナルに投稿中です。
以上、当初計画における「国際査読研究論文に採択される質の論文を2~3本」という目標を上回る成果を達成することができました。研究期間は2026年3月をもって終了いたしますが、構築したデータベースおよび開発した手法は、今後の関連研究において継続的に活用していく予定です。
我々は、透過型電子顕微鏡の試料作製手法に利用される集束イオンビーム(FIB)加工を応用し、一辺が10ミクロン未満の微小な試料片(微小ラメラ)の作製手法を確立しました(図1)。この手法は、非常に小さい単結晶の基礎物性評価や単結晶ベースの新機能素子開発において絶大な威力を発揮します。本研究では鉄カルコゲナイド超伝導体や蔡型準結晶などの遷移金属系超伝導関連物質に着目し、微小ラメラ試料への微細配線や非接触精密測定を通じて、トポロジカル超伝導発現に由来する新奇な物性解明や準結晶関連物質の精密物性測定を目指します。
2025年度は、鉄カルコゲナイド超伝導体の微小ラメラ試料をさらに微細加工して得られる微小ブリッジ素子を用いて、電流印加に伴う渦糸磁束の侵入を回避した状況でのみ計測可能な超伝導電子対破壊の臨界電流密度を磁場中で初めて測定した成果を発表しました。さらに、鉄カルコゲナイド超伝導体の微小ラメラ試料(図2)を用いて、パルス強磁場中の面間電気抵抗測定から上部臨界磁場の温度依存性を得ることに成功し、パウリ常磁性効果の重要性が磁場印加方向に依らないこと、および鉄カルコゲナイド超伝導体に含まれる微量な過剰鉄が上部臨界磁場の温度依存性に影響することを発見した成果を発表しました。
分子内の電子が光励起された状態(電子励起分子)は、エネルギーや物質の変換、光機能発現などにおいて重要な役割を果たしています。しかし、特に、溶液中や固体中の分子において、さまざまな電子励起状態を有効に利用することは難しいのが現状です。本研究ユニットでは、複数の光子によって段階的に多光子励起された様々な電子励起分子が、時々刻々とその形を変えていく様子を時間分解赤外分光によって明らかにするとともに、そのような分子の光化学反応の制御を目的としました。
2025年度には、研究ユニット予算を元に、超短パルスレーザーと赤外マルチチャンネル検出器の両方をアップデートし、超高速時間分解赤外マルチチャンネル分光システム(写真)の性能を大きく向上させました。
そのシステムを用いて、電子励起されたアントラセン誘導体のS1状態とT1状態の時間分解赤外吸収スペクトルを観測し、密度汎関数法を用いてそれらの電子励起状態の分子構造解析と時間分解赤外スペクトルの帰属を行いました。さらに、段階的2光子励起によって生成するT2状態の過渡赤外測定に取り組んでいます。
また、励起電子を2つの共役分子部で共有する[2.2]パラシクロファンのS1状態に加えて、共役系を伸長した[3.3](4,4’)ビフェニロファンのS1状態における“電子-分子振動相互作用”を解析しました(図)。
がん組織には、酸素が足りない状況が生じ、低酸素状態の細胞が発生します。当研究ユニット「酸素プローブ」は、細胞内や生体組織内の低酸素環境を簡便に検出する手法を開発するために設置しました。2025年度は、低酸素状態の細胞に選択的に集積する人工DNAを開発するとともに、DNAと蛍光色素を複合化することによって、低酸素細胞の細胞核を検出することに成功しました。この分子は新しい低酸素細胞の診断薬として機能することが期待されています。
感染症の流行は人類の脅威の一つとなっています。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的な大流行は記憶に新しく、口蹄疫や鳥インフルエンザなど、家畜や動物の感染症は、畜産業や経済、生態系において甚大な影響を及ぼすことが知られています。感染症の流行は、生物学的・医学的な現象であるだけでなく、社会的な現象とも言えるでしょう。
本研究課題では、感染症の流行動態について、より良い数理モデリングや数理解析を行います。全体の人口集団を感受性保持者 (S)、感染者 (I)、免疫保持者 (R)に分類し、それぞれの人数の時間変化を数理的に記述したSIRモデルは、感染症の流行動態の定性的な側面を捉えることが知られている一方で、基本的なSIRモデルが、感染症の流行現象における様々な要因や描像を反映できているかには多くの課題が残っています。例えば、人口集団は、年齢や感染歴など異なる特性をもつ複数個体から構成される不均一な集団であり、このような異質性は基本的なSIRモデルでは考慮されていません。感染症によっては、感染後に回復してから獲得される免疫が時間とともに消失することも知られています。ウイルスの変異や、人口集団の性質の変容、ワクチン接種を始めとする人為的介入など、感染症の流行動態に影響しうる要因は多岐にわたります。
感染症の流行現象は、ミクロからマクロに至る様々なスケールで起こる相互作用が惹起する現象であり、仮想的な実験系である数理モデルを作り、その性質を調べることで、現実の人間社会における流行動態の理解や解釈、対応策の策定を目指すことが可能であると考えられます。
本研究では、個体の免疫が完全でない場合や消失する場合、感染症に対する感受性が個体毎に異なるような場合に興味を持って、数理モデルの定式化や数学解析を行います。感染症に対する個体レベルの反応を組み入れた数理モデルから、基本的な数理モデルでは表現が困難であった感染症流行動態の特徴を明らかにすることを目指しています。
2025年度は、個体の感受性の違いや感受性獲得の履歴を考慮した感染症数理モデルの定式化について検討を行い、数理モデルがもつ平衡点の存在に関する数学解析を行いました。感受性の獲得に関する履歴を考慮しない場合におけるモデルの平衡点の分岐について一定の結果を得ています。また時間遅れ(タイムラグ)を含む感染症の数理モデルにおいて、数理モデルの大域的安定性や周期解の存在をはじめとする力学的性質が調べられました。
本研究の目的は、画像相関法により得られる高精度な変位・ひずみ分布を活用し、複数の材料特性を同一試験条件下で同時に同定する逆問題解析手法の基盤技術を確立することにあります。特に、線形粘弾性材料を対象として、独立した二つの材料特性である緩和せん断弾性係数と緩和体積弾性係数を同時に同定する新たな方法の構築を目指しています。そのために、仮想仕事の原理に基づくバーチャルフィールド法を拡張し、測定誤差の影響を最小化する適切な仮想変位・ひずみ分布を自動的に決定する手法の確立を進めています。また、粘弾性体特有の時間依存性に対応するため、数値ラプラス変換を用いた解析技術の導入により、広い時間領域にわたる材料特性評価を可能とすることを狙っています。
今年度の活動としては、従来法において課題となっていた複雑な非線形方程式の解法を回避するため、粘弾性と弾性の対応則に着目した新たな解析枠組みの検討を行いました。この対応則により、時間領域で記述される粘弾性体の応力―ひずみ関係をラプラス変換面に写像することで、弾性体と同様の形式で取り扱うことが可能となります。さらに、実験により得られる離散的なひずみデータに対して、高速フーリエ変換の原理を応用した数値ラプラス変換手法を導入し、履歴積分を用いることなく応力を算出できることを示しました。これにより、ラプラス変換面におけるバーチャルフィールド法の適用可能性が大きく前進しました。
研究成果としては、離散データからの数値ラプラス変換手法の確立と、それを用いた応力算出法の有効性を示した点が挙げられます。これにより、従来困難であった粘弾性体の逆問題解析の簡略化と高効率化に道筋をつけました。加えて、構成式に依存しないデータ駆動型の材料特性同定手法の検討も進め、多数の測定データから直接的に材料特性を導出する可能性を示しました。現在は代表者を中心とした体制で研究を継続しており、今後はラプラス変換面における仮想仕事の原理の適用および複数材料特性の同時同定手法の確立に発展させていく予定です。
本プロジェクトは、キリスト教大学が平和構築を行うために必要な社会倫理学的課題を明らかにすることを目的としています。その目的を達成するため、3年間で以下の5点について研究を行います。
- キリスト教が2000年の歴史の中で、平和と戦争をどのように理解してきたか。
- その歴史の中で、特に重要な神学者たちが平和と戦争をどのように論じてきたか。
- キリスト教的伝統の理解に基づき、キリスト教大学、特に青山学院が(大学設置前も含め)太平洋戦争に際してどのように対応してきたのか。
- 戦後日本のキリスト教において、平和・戦争への理解はどのように変化してきたか。
- 現在の国際関係の状況を分析し、戦争を起こすことなく平和を構築するために、キリスト教大学として何をなすべきか。
2025年度は、計6回の研究会を実施しました。各回の内容は以下の通りです。