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NEWS(教育人間科学部)

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2025.12.02

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【教育人間科学部】荻原祐二准教授が一般的でない名前の世界的な増加傾向を実証 ~個性重視の文化変容を示唆~

ポイント

・これまで国ごとに個別に報告されていた、一般的でない名前の経時的変化を実証的に検討した研究を概観しました。
・一般的でない名前の増加は、これまで検討されたすべての国、ドイツ・アメリカ・イギリス・フランス・日本・中国・インドネシアで共通して見られました。この変化は、ヨーロッパ・アメリカ・アジアという多様な文化圏で共通して見られており、より世界的な傾向と言えます。
・個性や他者との違いを重視し強調する方向に、文化が徐々に変容していることを示唆しています。

(図1)研究結果の概要

発表の概要

青山学院大学 教育人間科学部 心理学科の荻原祐二准教授は、名前の経時的変化を実証的に検討している研究を概観し、一般的でない名前*1の増加が、ドイツ・アメリカ・イギリス・フランス・日本・中国・インドネシアで共通して見られる、世界的な傾向であることを示しました(図1)。

先行研究は、いくつかの国で一般的でない名前が増加していることを示してきました。しかし、それらの知見は、国ごとに個別に報告されており、この現象が世界的に共通して見られるのか、一部の限られた国でのみ見られるのか明らかではありませんでした。

そこで本研究は、一般的でない名前の頻度の経時的変化を実証的に検討した研究を、体系的に概観しました。その際、各研究の対象期間や使用指標、サンプルの特徴なども整理しました。

その結果、一般的でない名前は、ドイツ・アメリカ・イギリス・フランス・日本・中国・インドネシアで増加していることが示されました。さらにこの傾向は、ヨーロッパ・アメリカ・アジアという多様な文化圏で共通して見られました。よって、一般的でない名前の増加は、より世界的な傾向であると言えます。この変化は、個性や他者との違いをより強調する方向に、社会・文化が変容していることを示しており、名前の変化だけでなく、社会・文化の理解にも貢献します。

本研究成果は、2025年11月25日に、国際学術誌Humanities and Social Sciences Communicationsに掲載されました。

(図1)研究結果の概要

研究の背景

先行研究は、いくつかの国で一般的でない名前が増加していることを示してきました。しかし、それらの知見は、国ごとに個別に報告されており、一般的でない名前の増加という現象が、世界的に共通して見られるのか、一部の限られた国でのみ見られるのか明らかではありませんでした。さらに、これらの報告は、心理学・社会学・言語学・人口学・地域研究など、異なる学術領域で個別に行われることが多く、そのために包括的・俯瞰的な理解が十分に行われていませんでした。

そこで本研究は、一般的でない名前の頻度の経時的変化を実証的に検討した研究を体系的に概観し、一般的でない名前の増加が世界的に共通した現象なのかを明らかにすることで、個別の学術領域を超えた学際的・分野横断的な理解を試みました。その際、各研究の対象期間や使用指標、サンプルの特徴などについても整理しました。

研究結果の詳細

その結果、一般的でない名前は、検討されたすべての国、ドイツ・アメリカ・イギリス・フランス・日本・中国・インドネシアで増加していることが一貫して示されました。したがって、この現象は世界的に共通して見られるものであり、一部の限られた国でのみ見られるものではないことが明らかになりました。さらにこの傾向は、ヨーロッパ・アメリカ・アジアという多様な文化圏で共通して見られました。よって、一般的でない名前の増加は、より世界的な傾向であると言えます。こうした変化は、個性や他者との違いをより強調する方向に、社会・文化が変容していることを示しており、名前や名づけの変化だけでなく、社会・文化の理解にも貢献します。

また、日本では1979年以降、一般的でない名前が増加していることが示されています(Ogihara & Ito, 2022)が、アメリカ(1880年~; Twenge et al., 2010)やイギリス(1838年~; Bush, 2020)などでは、より長期間に渡って一般的でない名前が増加していることが示されています。

今回の研究で対象にしたのは、あくまで頻度に基づく一般的でない名前であり、日本において頻繁に用いられている「キラキラネーム*2」ではありません。日本では、「キラキラネーム」という言葉が、明確に定義されずに曖昧に用いられており、使用者や状況によってその意味や印象が異なっています(荻原, 2022a, 2023)。そのため、「キラキラネーム」が世界的に増えているかどうかは、「キラキラネーム」をどのように定義するかに依存します(荻原, 2022b)。「キラキラネーム」を広義の「頻度が低い名前」として用いるのであれば、「キラキラネーム」は世界的に増加しているとも言えます。一方で、「伝統から逸脱した名前」や「読むことが難しい名前」といった要素を含めたものとして用いるのであれば、「キラキラネーム」が世界的に増加しているかどうかは、現時点では明らかではありません。

本研究の限界点は大きく2つあります。第1に、今回扱った研究の中には、サンプルに偏りが見られたり、対象期間が十分に長くないなど、検証が十分とは言えない国があります。今後は、より詳細な検討を追加していくことが望まれます。第2に、本研究では7つの国を検討しましたが、十分な数とは言えません。今後は、他の国でも同様の変化が見られるのかを検討する必要があります。特に、ヨーロッパ・アメリカ・アジア以外の異なる文化圏での検証が望まれます。

発表者によるコメント

荻原祐二准教授(教育人間科学部 心理学科)

日本では、一般的でない個性的な名前は「キラキラネーム」という日本独自の言葉で表現されることが多いため、そうした個性的な名前の増加は、日本でのみ生じていると考えられているかもしれません。しかし、個性的な名前の増加は日本以外のさまざまな国でも共通して見られており、日本に特有という訳ではありません。

一般的でない個性的な名前については、社会の注目度や関心は高いものの、エビデンスに基づく検討が十分に行われていないことも多く、現実を反映していない言説や誤解も多いです。今後も、一般的でない個性的な名前に関して実証的な検討を続けることで、名前や社会・文化の理解に貢献していきたいと考えています。

用語説明

*1 一般的でない名前
同研究では、名前の頻度を定量的に扱った研究を対象としています。対象とした研究では、頻度が多い名前トップ10やトップ50等の一般的な名前の割合を用いたものが多かったことが示されています。同時に、地域内で重複がない名前や、特定の割合以下の名前といった、低頻度の珍しい名前を指標として用いている研究も分析されていました。

*2 キラキラネーム
広義では、「頻度が低い名前」とされています(荻原, 2022a, 2023)。狭義では、「漢字が用いられている場合に読むことが難しく、伝統から逸脱した、頻度が低い名前で、肯定的または中立的な文脈で用いられる名前」とされています。しかし、使用者や文脈によって定義は異なっており、キラキラネームに関して主張や議論を行う際には、キラキラネームの定義、少なくともキラキラネームが何を意味しているのかを簡潔にでも説明をしてから、論を進めるべきと考えられます。

論文情報

雑誌名 Humanities and Social Sciences Communications
論文タイトル Uncommon names are increasing globally: A review of empirical evidence on naming trends
著者 Yuji Ogihara
DOI 10.1057/s41599-025-06156-1
論文リンク https://doi.org/10.1057/s41599-025-06156-1
掲載日 2025年11月25日

※本研究は、日本学術振興会による科学研究費(若手研究 19K14368)の助成を受けて実施したものです。
※論文はオープンアクセスですので、どなたでもお読み頂けます。適切な方法に従っていれば、図表を掲載して頂くことも可能です。
※本リリースにおいて用いられている図も、適切な方法に従っていれば、掲載して頂くことが可能です。
※記事や番組等において紹介して頂く際には、論文情報の説明や論文へのリンクを可能な範囲で掲載して頂くことができますと大変幸いです。

発表者

荻原祐二(筆頭著者 兼 責任著者)
青山学院大学 教育人間科学部 心理学科 准教授

※著者には開示すべき利益相反はありません。
※報道原稿のうち、研究内容の事実関係および取材時の発言内容に該当する部分の正確性について、可能な範囲内で、公表前に確認させて頂くことができますと幸いです。

お問い合わせ先

○研究に関するお問い合わせ先

青山学院大学 教育人間科学部 心理学科 准教授
荻原 祐二(おぎはら ゆうじ;筆頭著者 兼 責任著者)
Mail: yogihara@ephs.aoyama.ac.jp
   ※「@」を半角記号に変更の上、ご連絡ください。

○取材に関するお問い合わせ先

青山学院大学 政策・企画部 大学広報課
TEL:03-3409-8159
Mail: agu-kouhou@aoyamagakuin.jp
   ※「@」を半角記号に変更の上、ご連絡ください。

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