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EVENT(学外講座)

SCHEDULED

2026.04.25 - 2026.06.20

TITLE

【青山キャンパスアカデメイア】江戸のドレスコード8 浮世絵の純度ー「べらぼう」のあとさきー

 篠田節子『青の純度』(集英社・2025)はクリスチャン・ラッセン(作中ではジャンピエール・ヴァレーズ)の絵をめぐる物語です。バブル期に持て囃された反動で、一顧だにされなくなったその絵。熱狂と冷視。同じことが浮世絵にも言えます。本絵(狩野派・土佐派などの絵)に対する浮世絵(町絵)。週刊誌程度の値段(18文)で手軽に購入し惜しげもなく消費(廃棄)されていたそれへの評価がいま激変し、8800万(歌麿・深く忍恋)、4,3 臆(北斎・神奈川沖浪)の値が付く時代(歌麿の肉筆・深川の雪は11億)。「絵画鑑賞は理屈じゃない。自分が良いと思えばいい」という考えもありますが、「理屈」(時代背景や寓意)を知ることで深みも出ます。この講座では「非言語的な表現」(若桑みどり)としての浮世絵をイコノロジー(図像解釈学)的に分析し、秘められた魅力を探ります。ところで浮世絵は誰から始まるのでしょうか。浮世絵研究の第一資料『増補浮世絵類考』には歌麿、写楽、北斎、国芳、広重ら119名の浮世絵師を掲出していますが、冒頭は菱川師宣。でも近年は岩佐又兵衛説が有力です。浮絵(遠近画法)の奥村政信、錦絵(多色刷)の鈴木春信、8頭身美人画の鳥居清長、12頭身の栄之、6頭身の英泉。浮世絵をビジネスにつなげた蔦屋重三郎。大河ドラマ「べらぼう」の余韻が残る今、浮世絵(スライド)を介してそのあとさき(前後)を考えます。
 これは受講者と一緒に作り上げていく講座です。昨年は受講生が寄せる映画「国宝」などの情報が講座を活気付けてくれました。「江戸のドレスコード8」とありますように、この講座も8年目。これまでの受講生の方々はもちろん、初めての方も大歓迎です。1回完結方式ですので、お休みになっても支障はありません。猛暑を避け、講義は6月中に終了します。その後は猫歩き(散歩)を楽しみましょう。新緑の銀杏並木。講義の前後は陽光に満ちた新図書館で充実した週末をお過ごし下さい。 

講座申し込み

目標、重点を置く学習内容

すぐには役立たないけれども、ちょっぴり人生を豊かにしてくれるもの。「教養」とは、そうしたものかもしれません。何にでも興味を持ち、心をときめかせた幼い日々。「江戸」を介してそこに回帰し、ご一緒に心身をリフレッシュできればと願っています。

受講対象者

どなたでも可能です。初めての方はもとより、最新の研究成果を踏まえることで専門的知見をお持ちの方にも満足していただけるような講義を心がけます。

受講料

21,000円

必須テキスト・参考図書

必須テキスト:特にありません。講義中にご紹介します。 
参考図書:毎回、プリントを配布します。参考文献も講義の折に、入手しやすいものを適宜ご紹介します。

受講に関しての注意事項など

・最少催行人数を設けております。最少催行人数に達しなかった場合には、講座を中止させていただくことがございます。
・講座の録音・録画・写真撮影は、ご遠慮ください。
・講義中は、携帯電話の電源を切るかマナーモードに設定してください。教室内での通話はご遠慮ください。
・好奇心だけをお持ちになり、ご参加下さい。

講座スケジュール(各回の講義予定)

*以下のシラバスはあくまでも予定です。講義の進行に伴い変更もあり得ることをお含みおき下さい。

1

4月25日

13:20~14:50

 浮世絵の始祖は誰かー又兵衛と師宣

浮世絵の始祖は誰か。菱川師宣(浮世絵類考)説に対抗し、近年浮上した岩佐又兵衛説。かぶき者が跋扈する1610年代の京都。都市空間を生きる2740人もの人物を生き生きと写した彼の「洛中洛外図屏風」(舟木本)は「浮世絵」そのものだったからです。ただ一部特権階級のためのそれ(肉筆)よりも、版画工房を指揮して享受層を飛躍的に拡大させた師宣(見返り美人図)を推す研究者もいます。大人の絵本『大和絵のこんげん』(『好色一代男』のダイジェスト版)で絵(挿絵)の持つ力を再認識させた師宣。「豊頬長頤(ほうきょうちょうい)」と評される人物表現が特徴的な謎の絵師又兵衛。全長150mに及ぶ「山中常盤物語絵巻」などを鑑賞して「奇想」の画家(辻惟雄『奇想の系譜』)の魅力に迫り、浮世絵の本質を考えます。

2 5月9日

13:20~14:50

 「べらぼう」前夜の浮世絵界ー浮世絵革命

師宣以後、上方の人気絵師となった西川祐信。アニメのような挿絵で八文字屋本の人気を不動のものとした彼は浮世絵の可能性を大きく切り拓きました。歌舞伎役者あがりで「瓢箪足」の團十郎を描き鳥居派の初代となった、鳥居清信(ちなみに今年2月歌舞伎座の絵看板は鳥居派9代目の女流絵師清光のもの・2021年歿)。浮絵(遠近画法)や紅漆絵など革新的な技法を試みた、書肆の奥村政信。絵暦を手掛け、カラフルな錦絵を創始した鈴木春信。一筆斎文調とともに役者似顔絵を確立した勝川春章。北尾派の祖として北尾政美(鍬形蕙斎)、北尾政演(山東京伝)はもとより、他派の鳥居清長や喜多川歌麿ら多くの浮世絵師に影響を与えた、北尾重政。単色の墨摺絵から筆彩色の丹絵、紅絵を経て漆絵、紅摺絵、そして多色刷りの錦絵に向かう浮世絵の歴史。ベロ藍の移入、彫り、刷りの進化がもたらす浮世絵革命。有名、無名の浮世絵師が陸続と登場し、全盛期を迎えようとしていた「べらぼう」前夜のエネルギッシュな浮世絵界を展望します。  

3 5月23日

13:20~14:50

 蔦重の図像学(イコノロジー)ー蔦重は何を遺したのか

「絵を読む」、黄表紙の本質をこう喝破した碩学(せきがく)の中村幸彦は、画中に仕掛けられた多くの謎を解読しました。黄表紙がそうした文学なら、地続きにある浮世絵にも謎が象嵌(ぞうがん)されているという作業仮説。もちろん、多くの約束ごとに満ちた西欧の宗教画の解析に有効だったイコノロジーの手法を浮世絵に適用するのは無謀かもしれません。ただ蔦重成功の一因が「絵」にあったことは確かですし、彼の許で育った異才たちが浮世絵のイメージを一変させたのも間違いありません。たとえば「真を画(かか)んとてあらぬさまを書」き(浮世絵類考)挫折した、写楽。写真のように描くよりもデフォルメ(変形)した方が、むしろリアルという逆説。現代の似顔絵師(たとえば山藤章二)にも通ずる方法。写楽はそれを先取りしていたのかも知れません。そして役者の「余光」(人気)に頼る役者絵をかたくなに拒み、寓意に満ちた新しい美人画を創始した歌麿。その絵や画中に刻まれた文字(含裏文字)に彼は何をメッセージしたのでしょうか。ご一緒に解読して見ましょう。

4 6月6日

13:20~14:50

 青の純度ー北斎の射程

「己六才より物の形状を写(うつす)の癖ありて、半百(50歳)の比より数々画図を顕すといへども、七十年前画く所は実に取に足ものなし。七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚の骨格、草木の出生を悟し得たり。故に八十才にしては益々進み、九十才にして猶其(その)奥意を極め、一百歳にして正に神妙ならん歟(か)。百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん」(『富嶽百景』跋文)。絵師としての出発点を73歳に設定し完成は110歳とうそぶいた北斎の長い射程。90歳までに重ねた30回の改号と93回の引っ越し。ベロ藍で青の純度を極め、68歳で病に倒れても「冨嶽三十六景」などの傑作を連発した北斎。安藤広重(講座第5回・広重ぶるう)と比較しながら6期に分かれる長い画業をたどります。

5 6月20日

13:20~14:50

 猫のイコノロジー 国芳

現在の二次元文化と親和性が高く「アニメや漫画の世界観にかなり近」い(堀口茉純・歴史タレント)、歌川国芳。蔦重の没した年に生まれた彼も奇想の画家の一人です。「大歌川派」を率いる巨匠歌川豊国に認められ15歳で入門しながらも、不遇時代の続いた国芳。彼が一躍脚光を浴びたのは、31歳の時でした。「通俗水滸伝百八人之一個」(「九紋龍史進」など5枚)。総刺青の英雄たちが躍動する、国芳の武者絵。その延長線上にある、三枚続のパノラマ大画面。巨大な骸骨や鯨。制約の多い天保期(1830〜44)を戯画で笑いのめす機知。こよなく猫を愛した彼の、国芳版東海道五十三次。「浮世絵におけるバロック絵画」(悳俊彦)と評された国芳の魅力を探り、画に託された寓意を読み解きます。

*以下のシラバスはあくまでも予定です。講義の進行に伴い変更もあり得ることをお含みおき下さい。

1

4月25日

13:20~14:50

 浮世絵の始祖は誰かー又兵衛と師宣

浮世絵の始祖は誰か。菱川師宣(浮世絵類考)説に対抗し、近年浮上した岩佐又兵衛説。かぶき者が跋扈する1610年代の京都。都市空間を生きる2740人もの人物を生き生きと写した彼の「洛中洛外図屏風」(舟木本)は「浮世絵」そのものだったからです。ただ一部特権階級のためのそれ(肉筆)よりも、版画工房を指揮して享受層を飛躍的に拡大させた師宣(見返り美人図)を推す研究者もいます。大人の絵本『大和絵のこんげん』(『好色一代男』のダイジェスト版)で絵(挿絵)の持つ力を再認識させた師宣。「豊頬長頤(ほうきょうちょうい)」と評される人物表現が特徴的な謎の絵師又兵衛。全長150mに及ぶ「山中常盤物語絵巻」などを鑑賞して「奇想」の画家(辻惟雄『奇想の系譜』)の魅力に迫り、浮世絵の本質を考えます。

2 5月9日

13:20~14:50

 「べらぼう」前夜の浮世絵界ー浮世絵革命

師宣以後、上方の人気絵師となった西川祐信。アニメのような挿絵で八文字屋本の人気を不動のものとした彼は浮世絵の可能性を大きく切り拓きました。歌舞伎役者あがりで「瓢箪足」の團十郎を描き鳥居派の初代となった、鳥居清信(ちなみに今年2月歌舞伎座の絵看板は鳥居派9代目の女流絵師清光のもの・2021年歿)。浮絵(遠近画法)や紅漆絵など革新的な技法を試みた、書肆の奥村政信。絵暦を手掛け、カラフルな錦絵を創始した鈴木春信。一筆斎文調とともに役者似顔絵を確立した勝川春章。北尾派の祖として北尾政美(鍬形蕙斎)、北尾政演(山東京伝)はもとより、他派の鳥居清長や喜多川歌麿ら多くの浮世絵師に影響を与えた、北尾重政。単色の墨摺絵から筆彩色の丹絵、紅絵を経て漆絵、紅摺絵、そして多色刷りの錦絵に向かう浮世絵の歴史。ベロ藍の移入、彫り、刷りの進化がもたらす浮世絵革命。有名、無名の浮世絵師が陸続と登場し、全盛期を迎えようとしていた「べらぼう」前夜のエネルギッシュな浮世絵界を展望します。  

3 5月23日

13:20~14:50

 蔦重の図像学(イコノロジー)ー蔦重は何を遺したのか

「絵を読む」、黄表紙の本質をこう喝破した碩学(せきがく)の中村幸彦は、画中に仕掛けられた多くの謎を解読しました。黄表紙がそうした文学なら、地続きにある浮世絵にも謎が象嵌(ぞうがん)されているという作業仮説。もちろん、多くの約束ごとに満ちた西欧の宗教画の解析に有効だったイコノロジーの手法を浮世絵に適用するのは無謀かもしれません。ただ蔦重成功の一因が「絵」にあったことは確かですし、彼の許で育った異才たちが浮世絵のイメージを一変させたのも間違いありません。たとえば「真を画(かか)んとてあらぬさまを書」き(浮世絵類考)挫折した、写楽。写真のように描くよりもデフォルメ(変形)した方が、むしろリアルという逆説。現代の似顔絵師(たとえば山藤章二)にも通ずる方法。写楽はそれを先取りしていたのかも知れません。そして役者の「余光」(人気)に頼る役者絵をかたくなに拒み、寓意に満ちた新しい美人画を創始した歌麿。その絵や画中に刻まれた文字(含裏文字)に彼は何をメッセージしたのでしょうか。ご一緒に解読して見ましょう。

4 6月6日

13:20~14:50

 青の純度ー北斎の射程

「己六才より物の形状を写(うつす)の癖ありて、半百(50歳)の比より数々画図を顕すといへども、七十年前画く所は実に取に足ものなし。七十三才にして稍(やや)禽獣虫魚の骨格、草木の出生を悟し得たり。故に八十才にしては益々進み、九十才にして猶其(その)奥意を極め、一百歳にして正に神妙ならん歟(か)。百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん」(『富嶽百景』跋文)。絵師としての出発点を73歳に設定し完成は110歳とうそぶいた北斎の長い射程。90歳までに重ねた30回の改号と93回の引っ越し。ベロ藍で青の純度を極め、68歳で病に倒れても「冨嶽三十六景」などの傑作を連発した北斎。安藤広重(講座第5回・広重ぶるう)と比較しながら6期に分かれる長い画業をたどります。

5 6月20日

13:20~14:50

 猫のイコノロジー 国芳

現在の二次元文化と親和性が高く「アニメや漫画の世界観にかなり近」い(堀口茉純・歴史タレント)、歌川国芳。蔦重の没した年に生まれた彼も奇想の画家の一人です。「大歌川派」を率いる巨匠歌川豊国に認められ15歳で入門しながらも、不遇時代の続いた国芳。彼が一躍脚光を浴びたのは、31歳の時でした。「通俗水滸伝百八人之一個」(「九紋龍史進」など5枚)。総刺青の英雄たちが躍動する、国芳の武者絵。その延長線上にある、三枚続のパノラマ大画面。巨大な骸骨や鯨。制約の多い天保期(1830〜44)を戯画で笑いのめす機知。こよなく猫を愛した彼の、国芳版東海道五十三次。「浮世絵におけるバロック絵画」(悳俊彦)と評された国芳の魅力を探り、画に託された寓意を読み解きます。

補講日は6月27日(土)を予定しております。

講師紹介

篠原 進 青山学院大学名誉教授
専門は日本近世文学、メディア論。主な著書は『新選百物語』(監修・白澤社・2018)。共著『ことばの魔術師 西鶴』(ひつじ書房・2016)。「二つの笑いー『新可笑記』と寓言」(『国語と国文学』2008年6月)。「水銀幻想ー浮世草子のドレスコード」(『日本文学研究ジャーナル』21号・2022年3月)。「世之介の黒歴史ー戯作と転合書ー」(『日本文学』2023年7月)。*コメンテーター「ヒストリア 井原西鶴」(NHK 2012 年3月)。同「BS歴史館 井原西鶴」(同2012年5月)。

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