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2024.12.19

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【理工学部】POINCLOUX, Samuel助教(物理科学科、松川宏教授研究室)の摩擦に関わる研究内容が"Physical Review Letters"に掲載

POINCLOUX, Samuel助教(物理科学科、松川宏教授研究室)が、フランスの研究者 Audrey Steinberger氏(レンヌ高等師範学校)とJérôme Crassous氏(レンヌ第1大学)との共同研究で、ニット素材の多様な⾃然な形が、幾何学、摩擦、弾性の微妙な関係によってどのように制御されるかを解明し、2024年12⽉12⽇(木)、この研究成果が"Physical Review Letters"に掲載されました。

背景

靴下のようなニット製品は人体の形に適応して圧迫しませんが、好みのセーターも簡単に形が崩れることがあります。ニット素材は、まるで独自の形を持たないように見えます。このようなテキスタイル(繊維製品)は、⾐類として⽇常⽣活に⽋かせないものになっているだけでなく、さまざまな産業分野でも活⽤されています。繊維は航空宇宙分野や医療分野での最新の複合材料として、また、⼟⽊⼯学で⼟壌を強化・浄化するためのジオテキスタイルとしても利⽤されています。近年では、ソフトロボティクスやエネルギー収集など新しい分野でも繊維への関⼼が高まっています。これらの⽤途において、繊維が外⼒に対してどのように変形するかを理解し、予測することが必要です。しかし、繊維は広く使われている素材であるにもかかわらず、絡み合った⽷から成る複雑な構造のため、繊維の⼒学を解明するのは⾮常に難しい課題です。例えば、⼀定の⽷の⻑さからどれだけの布地⾯積が得られるかを予測するのは、⼯業的に⼤きな課題です。また、基本的な⼒学特性である「⾃然な形」、すなわち外⼒がかかっていない状態での物体の形状さえも明確にはわかっていません。

数値シミュレーションのスナップショット。ニット素材の周期的なループ構造を⽰している。クレジット:Jérôme Crassous

内容

POINCLOUX助教らの研究チームは、実験、数値シミュレーション、解析計算を組み合わせてニットの⾃然な形状を予測し、理解するために3つの基本要素(⽷の弾性、ループの形状、⽷同⼠の摩擦接触)に注⽬しました。ニット素材は、ステッチと呼ばれるループが周期的に繰り返される構造を持つ⽷でできていますが、このループには一つの固定した形はありません。ループは変形でき、⽷が交差する点での摩擦⼒によってその変形した形を保ちます。今回の研究では、実験と数値シミュレーションを通じて、ジャージーニットの変形可能な⾃然形状をすべて特定しました。通常の弾性物体とは異なり、ニットの⾃然な形は⼀意に定まるものではなく、連続したさまざまな縦横⽐に変化することができ、縦横比はその最⼤の⾼さで制限されます。そこで、結び⽬理論に基づく理論的な記述に移り、交差点での接触⼒が曲がった⽷の幾何学とどのように相互作⽤するかを詳細に分析しました。その結果、幾何学的な制限と⽷の弾性が変形可能な縦横⽐の糸の範囲を制御し、⽷同⼠の摩擦が変形後の最⼤の⾼さを決定づける要因となることがわかりました。このようにして、摩擦がニットウェアの多様な形状をどのように厳密に制御しているかを解明しました。

数値シミュレーションのスナップショット。ニット素材の周期的なループ構造を⽰している。クレジット:Jérôme Crassous

今後の展開

摩擦は、産業⽤機械のシミュレーションで考慮するのが最も難しい効果であり、繊維の⼒学的反応においては⼤きな役割を果たしています。この基礎研究は、摩擦が繊維の⼒学的反応にどのような影響を与えるかを理解するための⼟台を提供しています。これにより、エンジニアが繊維ベースの次世代材料をデザインする可能性を解き放ち、複雑で⾮線形な⼒学的反応を生かせるようになることを期待しています。

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