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2026.04.28
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【理工学研究科】無機材料研究室と物理化学研究室の共同研究により、光・電気・熱を制御できる機能性希土類薄膜の水素化/脱水素化反応機構の解明に成功
重里有三教授(化学・生命科学科、理工学研究科 理工学専攻 機能物質創成コース・無機材料研究室)と鈴木正教授(化学・生命科学科、理工学研究科 理工学専攻 化学コース・物理化学研究室)のグループが、共同研究により、機能性希土類薄膜の水素化/脱水素化反応機構の解明に成功しました。
無機材料研究室では、厚さが数百nmのサマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、イットリウム(Y)等の希土類元素の薄膜は、パラジウム(Pd)を触媒として用いた水素化/脱水素化反応により金属/半導体の相変化が生じるため、光・電気・熱を大きな幅で可逆的に制御できる機能性材料として研究が進められてきました。これらの化学反応機構は解明されておらず、反応速度が決定されるメカニズムも明らかにされていませんでした。
今回、物理化学研究室との共同研究により、諸物性のリアルタイムでのin-situ解析を行い、反応速度の温度依存性を詳細に解析することに世界で初めて成功しました。研究成果は、以下の日本応用物理学会が発刊している"Japanese Journal of Applied Physics"に掲載されました。
【研究メンバー】
■シュー・ガイブン(元:理工学研究科 機能物質創成コース・重里研究室・博士前期課程)
■キム・ミンソク(理工学部 化学・生命科学科 助教・重里研究室)
■鈴木正(理工学研究科 化学コース 教授)
■重里有三(理工学研究科 機能物質創成コース 教授)
【論文タイトル】
Temperature dependence of the hydro-/dehydrogenation reaction kinetics on SmH2 films.
【著者】
Kaiwen Zhu, Minseok Kim, Tadashi Suzuki and Yuzo Shigesato
【掲載ジャーナル】
Japanese Journal of Applied Physics, Volume 65, Number 7, 2026.
DOI 10.35848/1347-4065/ae56c4
研究概要
ある種の希土類元素、あるいは遷移金属とMgの合金において、最上面に5-10nmの極薄Pd膜を触媒として担持することで、水素化/脱水素化反応により金属/半導体と相変化する物質が存在します。これらは調光ミラー材料と呼ばれています。可逆的な水素化/脱水素化反応は、(1)1気圧の3%水素含有窒素ガス(爆発限界以下の安全な水素濃度)中に曝露するガスクロミック方式と、(2)電解液中で電気化学的な H+注入により水素化/脱水素化反応を行うエレクトロクロミック方式があります。重里研究室は多くの材料に関してスパッタ法で成膜を繰り返し、これら(1)、(2)の両方の方式での可逆的水素化/脱水素化反応に最適な材料、並びに薄膜合成条件を探求してきました。しかし、パラジウム触媒を用いた水素化/脱水素化反応の詳細な機構は今まで解明されていませんでした。
今回はSm薄膜の(1)の反応に関する研究成果で、水素化反応はJohnson–Mehl–Avrami-Kolmogorov (JMAK)モデルという核生成や結晶成長に用いられる理論式で説明できることを実証し、水素化物の固相での核生成や成長機構を解明しました。また、脱水素化反応機構はこれとは全く異なり、拡散の理論式(Fickの第2法則)で説明できることを実証しました。
これらの研究により、光透過率・電気伝導度・熱伝導率を同時にスイッチできる新しいデバイスの変化速度の設計・制御や、より安定でサイクル耐久性の良好な相変化の実現、可逆性の向上などに展開させていくことが期待されます。
現在、さらに高エネルギー加速器研究機構 –(KEK-PF)にて、放射光を用いたマルチモーダル解析による(1)、(2)の両方の反応における詳細なin-situ構造解析を進めています。
