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ジェンダーの視点から見るコロナ後の地球社会

青山学院大学<br>地球社会共生学部 助教 <br> 菅野 美佐子 [KANNO Misako]

青山学院大学
地球社会共生学部 助教
菅野 美佐子 [KANNO Misako]

ジェンダーの視点から見るコロナ後の地球社会

第4回 2022/7/23(土)

青山学院大学 地球社会共生学部 助教
菅野 美佐子[KANNO Misako]

 2020年に新型コロナ・ウィルス感染症の世界的拡大が始まってから今年で3年目となり、私たちの生活環境は大きく変化しました。感染予防のために世界中で都市閉鎖(ロックダウン)が実施され、日本でも緊急事態宣言や蔓延防止措置が発動されるなど、雇用や教育、あるいは余暇の過ごし方といった、人の移動や人との接し方に影響が出ています。
ところで、このようなコロナ禍での生活環境への変化には、ジェンダーの不平等性が反映されていることが指摘されています。日本を含む世界の多くの地域では、非正規雇用率の高い女性のほうが男性よりも失業率がはるかに高くなっています。その一方で、コロナ禍でも在宅勤務ができないエッセンシャルワーカーや、看護師などの医療従事者の7割から8割が女性という状況があり、多くの女性が感染のリスクやそれに伴う誹謗中傷のリスクにも晒されているのです。また、在宅勤務や休校やオンライン授業の導入によって家族が家で過ごす時間が増えたことで、女性の家事や育児といった無償労働に従事する時間が長くなったというデータもあります。女性の失業や収入の低下は食費や医療費、教育費の減額に直結し、家族全体、なかでも子どもへの影響が懸念されており、この傾向は発展途上国などの貧しい社会でより深刻となっています。加えて、在宅時間が増えたことで、パートナーや親兄弟による身体的暴力や性的暴行の被害も世界中で増加しており、女性の自殺率の上昇も指摘されています。
以上のようなジェンダー不平等の問題は、新型コロナウィルス感染症の拡大によって始まったものではなく、実は、コロナ以前から多くの社会で見られた問題が、世界的パンデミックのなかで先鋭化して立ちあらわれたに過ぎません。言いかえれば、アフターコロナ、ウィズコロナ時代と言われる今こそ、ジェンダー不平等を生み出す社会を根本的に見直す大きなチャンスと言えるのかもしれません。本講義では、ジェンダー平等を実現するためには、どのような対策が必要なのか、あるいは社会の意識がどう変化していくべきなのかを、日本を含む各国の取り組みを紹介しながら考えていきます。本講義を通じてジェンダー平等を考えることで、それ以外の諸種の格差についても目を向けることにつながればと思います。

プロフィール

青山学院大学 地球社会共生学部 助教
菅野 美佐子 [KANNO Misako]


広島大学大学院修士課程、総合研究大学院大学博士課程修了。博士号(文学)を取得後、日本学術振興会特別研究員(PD)、東京福祉大学講師、人間文化研究機構/国立民族学博物館特任助教を経て現職。専門は文化人類学、インド地域研究。
共著に、『21世紀国際社会を考える多層的な世界を読み解く38章』(旬報社、2017年)、『持続可能な開発における〈文化〉の居場所/「誰一人取り残さない」開発への応答』(春風社、2021年)、『現代アジアをつかむ』(明石書店、2022年)、『南アジアの新しい波・下巻―環流する南アジアの人と文化』(昭和堂、2022年)など。