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学長就任挨拶

あらためて、神と人とに仕え社会に貢献する教育研究共同体へ

 このたび第20代学長に就任し、4年間、大学運営の舵取りを担うこととなりました。皆さまのご協力とご支援を得て、青山学院大学の発展に尽くしたいと考えております。
 就任にあたっての大前提は「建学の精神の堅持」です。私学のよりどころとしての建学の精神とは何なのか。クリスチャンでもない私が考える「キリスト教信仰にもとづく教育」は、自らの取り組みを、立ち止まって見つめなおす際に、「聖書」の、またキリスト者の教えに耳を傾けることです。マタイによる福音書の5章13節から16節、スクール・モットーでもある「地の塩、世の光」を、またニーバーの祈りとして知られる「変えるべきものを変える勇気を、そして、変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを」を、特に大切に想うことにしています。過去、現在、未来をきちんと見つめていくこと、これが私にとっての「建学の精神の堅持」です。

 いま直面する最大の課題は、来るべき少子化に向けた大学・各学部・研究科の体制をどのように整備するのか、ここまでの青山学院大学の歴史・伝統に恥じない、また更に誇れる存在としての質の維持・発展をどのようにして実現していくかという点です。それはすなわち、研究・教育の充実と人材・後継者育成という原点に立ち返ることだと考えています。つまり、学部、大学院各研究科において、それぞれが、時代の要請に応えるカリキュラムを編成し、最新の研究に基づく高度な専門知識を伝え、学生が多様な世界に巣立っていけるように取り組んでいくことです。そのための基盤整備という観点から、施設設備の整備や学生・教員への支援体制の充実化、国際化や情報化の推進といった共通プラットフォームの整備が大学運営の責任者としての最大の責務です。

 2024年は大学開校75周年、青山学院創立150周年の記念すべき年となります。創立以来、本学はまさに建学の精神にもとづき国際的な視野と社会への貢献を視野に入れ、そのために不可欠な「多様性を尊重する姿勢」や「垣根を越えて協働する力」が自然に養われる風土を築いてきました。こうした自由な校風、豊かな人間性と幅広い教養を育む独自のリベラルアーツ教育や、語学教育の実績にもとづき人文・社会系分野が幅広く展開され、大学の顔となっていました。しかし、見失われがちですが、本学は理工系分野において幅広い領域での顕著な研究実績を上げています。そこで、今後は、青学ならではの研究・教育のスタイルをつくるために、各分野が相互に刺激し合い文理を超えた研究・教育の拡充を推進したいと考えています。特に、現代社会においては、個別の学問領域だけでの問題解決は明らかに限界が見えています。たとえば、各専門領域を結びつけ活性化させることのできる分野の代表的なものとしてのデータサイエンスやAIに着目し、これらを学部・学科の枠を超えて学ぶことができる全学共通教育システム「青山スタンダード」に組み入れています。これにより本学の強みである人文・社会系分野の学問に、データに裏打ちされた高度なアプローチを加えることができ、より大きな研究成果を上げることが期待されます。

 このように、「多様性を尊重する姿勢」や「垣根を越えて協働する力」により研究・教育のさらなる質的向上を目指し、青山学院大学は人の役に立つ、「神と人とに仕え社会に貢献する」教育研究共同体であり続けたいと考えています。


2023年12月
青山学院大学
学長 稲積宏誠

AGU NEWS 特集 新学長に聞く 「真摯な学び」を追究し、新たな青学ブランドの構築を目指す