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学士力としての論理的文章作成能力育成

学士力としての論理的文章作成能力育成

本取組は2008~2010年度に行われ、2011年度以降も本学の学内取組として継続しています。

プログラム概要

現代日本人の母語表現力、特に客観的・論理的な文章理解・作成能力の育成は、ITスキル育成と並んで今日の大学における必須の課題である。現状において、レポートや論文といった客観的・論理的な文章理解・作成能力の低下は著しく、その訓練は不十分である。しかし、「専門領域を問わずすべての大学生にとって必要な素養である」との認識は社会的に定着している。その結果、文章作成能力育成そのものが教育対象として認知され、基礎教養教育の一部として組み込まれ、教員による対面授業形態でのカリキュラム実施が多く見られるようになった。ただし、文章力を養成するためには、講義のみでは力がつかず、演習・実習によるトレーニングが必須となる。しかし、そこまでの対応を教員に任せて実施することは現実問題として難しい。本取組は、自然言語処理技術や情報処理技術を最大限に活用することによってこれらの問題解決を図ろうというものである。すなわち、可能な限り、演習問題を自動生成することができ、学生の記述した文章を自動評価・添削することのできる、文章理解および文章作成支援システムを構築することによって、これらの課題解決に寄与することを目的としている。

代表者:社会情報学部教授 稲積 宏誠

プログラム実施報告

本事業の全体としては、(1)客観的・論理的な文章理解・作成能力育成のために、文章理解支援システム、文章作成支援システム、問題自動生成支援システム等を構築し、技術的に確立させ、(2)システムを有効活用した演習を通じて、自ら考えながら客観的・論理的な文章理解・作成能力を身につけさせる教育システムを構築し、(3)提案された教育システムにより客観的・論理的文章理解・作成能力を全学的に担保し、分野を問わず、個々の学生の専門教育へのスムーズな移行を目指してきた。
また、その達成のための要件は、(1)システムを支えるツール群の開発(校正・推敲、論理構造デザイン、教材作成、出題者ツールなどから構成される)、(2)コンテンツの充実化と教育方法論の開発(日本語教育の専門家との連携による支援体制の確立と、特色GP等で進められてきた他大学の取組のノウハウの導入)、(3)多人数教育システムの構築と充実化(全学的な実施体制を構築)を実現することである。 以上にかかわる展開として、「各種ツール群、コースウェアの洗練化」「ベーシックコースサポート学生の育成」「ベーシックコースの正規運用(社会情報学部、コミュニケーション基礎)」「コースウェアの洗練化とカスタムコース、アドバンスドコース(自学習演習環境と理論学習の融合)設計」「カスタムコースのテスト運用とアドバンスドコースの提案(講習会形式での非正規カリキュラム)」「問題自動生成支援システムの検証」「文章理解」「技術的成果と教育効果についての検証と評価委員会の開催」について、具体的に取り組むことができた。

プログラム成果

今回の取組の目的は、表現手段としての文章そのものを再確認し、正確に伝えるための文章表現法を考えていく環境を提供することにあった。そのために、「文章構成」を考え、「見直し」ながら、「校正・推敲」を行い、また再確認を促すための「相互評価」の環境と、それらの基本ルールを学ぶ「演習問題」を手軽に提供する省力化された環境づくりをテーマに掲げた。すなわち、ICTを有効活用することによるテーマ実現である。ただし、ここで重要なことは、自ら気づき、自ら学ぶ状況を作り出すことであった。
この3年間にその端緒を開くことはできたが、積み残した技術開発もあることから、今後も引き続きこの取組を継続する。
また、今後は現在までの成果を多くの教育現場で活用してもらうことで、技術の向上と現場への貢献を図っていきたいと考えている。