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リスク評価方法とそれに基づく意思決定について:公衆衛生の観点から

青山学院大学<br>社会情報学研究科特任教授 <br>佐藤 敏彦 [SATOU Toshihiko]

青山学院大学
社会情報学研究科特任教授
佐藤 敏彦 [SATOU Toshihiko]

リスク評価方法とそれに基づく意思決定について:公衆衛生の観点から

第3回 2021/10/30(土)

青山学院大学 社会情報学研究科 特任教授 佐藤 敏彦 [SATOU Toshihiko]

 人は毎日何らかの「意思決定」をしつつ生きています。それらの意思決定の理由や過程は人によりさまざまです。コロナ禍がなかなか収まらないという同じ環境下に生きていても、居酒屋での宴会に躊躇なく参加する人もいれば、電車に乗るのが怖くて家に閉じこもりきりの人もいます。
 私の専門領域の一つである「健康リスク評価学」は、さまざまな客観的な事実からなる「科学的根拠(エビデンス)」を元に、健康事象(病気や死亡等)が起こる確率(リスク)を予測する学問で、「疫学」の一つの領域とも言えます。
 皆さんが実感しているように、コロナ禍において、この「健康リスク評価学」は現在のところ活躍できているとは言えません。「何も対策をしなければこのくらいのリスクがあるけれど、こういうことをすれば、そのリスクがこのぐらいに減少します」ということを人々に伝えることにより、個人や集団(国とか自治体とか)の意思決定を支援することが本来の役割なのですが、残念ながら幾つかの理由でその作業がうまくできていないからです。
 「危機」とは「リスクに対する対応が失敗して不測の事態に陥った状態」とも言えますので、「不測」なものにあふれた現状はまさに「危機」と言えるのかもしれません。講義では上記のようなお話とともに、我々は今どのような情報を頼りにし、それを根拠に何をすべきなのか、というようなお話をしたいと思います。

プロフィール

青山学院大学 社会情報学研究科 特任教授
佐藤 敏彦 [SATOU Toshihiko]

1986年慶應義塾大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学公衆衛生大学院修了、同研究員、東京女子医科大学公衆衛生学教室講師、世界保健機関ジュネーブ本部「政策と情報のためのエビデンス」局サイエンティスト、北里大学医学部公衆衛生学教室准教授、同臨床研究センター教授を経て現職。消費者庁「消費者安全調査委員会」専門委員、厚生労働省「eヘルスネット情報評価委員会」委員等。専門は公衆衛生学、特に疫学、健康リスク評価学、健康情報学。