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平和、開発と安全保障:SDGs16の実現に向けた国際協力と課題

田中(坂部)有佳子[TANAKA(SAKABE) Yukako]

田中(坂部)有佳子[TANAKA(SAKABE) Yukako]

平和、開発と安全保障:SDGs16の実現に向けた国際協力と課題

第2回 2021/5/15(土)
国際政治経済学部国際政治学科 助教 田中(坂部)有佳子 [TANAKA(SAKABE) Yukako]

2020年にノーベル平和賞を受賞した国連世界食糧計画(World Food Programme)は、世界が紛争と飢餓の悪循環に陥っている、と述べる。人びとが暴力により家を追われ生活の糧をなくして飢餓に陥る、そしてそのような状況が社会的緊張を生み出すことにより暴力が増加すると考えられるのである。結果、食糧不足は特に紛争下にある国々で顕著であるといわれる。
紛争がもたらす問題は飢餓に留まらない。紛争下では治安の悪化、経済活動の低迷、著しい人権侵害、大規模な人の移動なども生じ、国家の破綻すら招きかねない。新型コロナウィルス感染症のパンデミック(世界的流行)により、多様な危機に苦しむ人びとがさらに増えると予測されている。こうした複合的危機によって最も危険にさらされるのは一般の人びとである。持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる「誰一人取り残さない」という基本理念のみならず、私たちが置かれた安全保障上の立場や協力の可能性を踏まえても、暴力的紛争への対処は国際社会が避けて通れない課題となっている。
昨今、暴力的紛争を予防することが注目されている。国際連合と世界銀行の共著『平和への道』(Pathway for Peace: Inclusive Approaches to Preventing Violent Conflict, 2018)によると、紛争の種は不平等、排除と不正義にあるという。それらを取り除くべく、あらゆる人々を包摂する制度と紛争の発生に人々が対処・回復できる能力を培うことが、対立を暴力化させない手立てであると同著は論じる。そして、近年急増する若者人口や社会的に排除されがちな女性など脆弱な社会グループへの着目、急激な都市化への対処、科学技術の有効活用といった提言が挙がった。各地で取り組みは進んでいるだろうか、それらは有効なのだろうか。
 この講義では、暴力的紛争が発生する背景・要因とそれらに対処する諸手段を紹介したのち、紛争下にある人びとへの国際組織、国家、市民社会から企業まで多様なアクターの関わりとSDGsがもつ役割を考える。特にSDGs16の特徴を捉え、他のゴールと関連付けることで、本講義のタイトルにある平和、開発、安全保障の関係を明らかにする。そして紛争を未然に防ぐ試みを取り上げ、どのような協力が紛争・対立を軽減し人々の能力を引き出せるかを検討したい。そして予防への関心の低さ、危機にさらされる人びとへのアクセスの困難や新たな緊張の創出への懸念など、実例から浮き彫りとなる課題を挙げ、次へのステップを議論したい。

プロフィール

青山学院大学国際政治経済学部国際政治学科 助教
田中(坂部)有佳子[TANAKA(SAKABE) Yukako]


青山学院大学国際政治経済学部助教。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程修了。博士(政治学)。在東ティモール大使館専門調査員、内閣府研究員、国連アフガニスタン支援ミッションオフィサーなどを経て現職。業績に『なぜ民主化が暴力を生むのか:紛争後の平和の条件』(勁草書房、2019年)、共編著『国際平和活動の理論と実践:南スーダンにおける試練』(法律文化社、2020年)など。