TOP

市民の基礎知識としての統計と最近の統計を巡る状況

美添 泰人[Yoshizoe Yasuto]

美添 泰人[Yoshizoe Yasuto]

市民の基礎知識としての統計と最近の統計を巡る状況

第2回 2020/5/16(土)
青山学院大学 名誉教授 美添 泰人[Yoshizoe Yasuto]

社会におけるAI利用とデジタル化は急速に進行している.1980年頃からのコンピュータの能力の驚異的な向上と,21世紀に入ってからのデータ収集技術(センサー,高性能カメラ,モーションキャプチャー,IOTなど)に生じた大きな進展を背景として,統計学の新たな応用領域が生まれ,「ビッグデータ」という言葉が定着した。最近では,企業 経営,医療・健康をはじめ,政府における政策の決定や評価においても,データ利活用の可能性への期待が高まっている。
 日本政府は,2019年6月に閣議決定された「AI戦略2019」において,数理・データサイエンス(DS)・AIを必修化して,小・中・高等学校から大学・大学院,社会人のリカレント教育に至る教育の体系化を提示し,すべての生徒が高等学校卒業時までに,数理・DS・AIの基礎的なリテラシーを習得することを義務付けている.ビッグデータ時代のさまざまな課題に対応するには,統計学とコンピュータ科学の両方にまたがる専門知識が要求される。
 一方,日本における統計教育は,5年前までは,国際的な水準から大きく遅れていた.その主な原因は学習指導要領における統計的思考能力の軽視,その結果として大学における統計教育の水準の低下,さらに統計的素養を持った人材の不足が次第に明らかになった。この問題を解決するために統計関連の学会では政府に対して統計教育の重要性を訴えるとともに,文部科学省の補助事業として統計教育に関する新しい取組みとして「統計教育大学間連携ネットワーク」を組織し,青山学院大学を中心として活動を展開した.政府においても統計的素養の重要性を認識し,内閣官房に統計改革推進会議を設置して公的統計の改善に取り組み始めたところである。
本講義では,最近の統計教育に関する状況を紹介し,市民として身につけるべき統計的素養,すなわち,データに基づいた思考方法について解説する。関連して,政府における統計改革の取組み,特に公的機関における統計データアナリストなどの資格の認証にも用いられる学習達成度評価の仕組みである日本統計学会公式認定「統計検定」について紹介する。

プロフィール

青山学院大学 名誉教授
美添 泰人[Yoshizoe Yasuto]


東京大学経済学部卒業,同大学院修士課程修了(経済学修士),ハーバード大学 Graduate School of Arts and Sciences 卒業(統計学 M.S, Ph.D.). 立正大学教授,カーネギーメロン大学教授,シンガポール国立大学上級講師,青山学院大学経済学部教授を経て,現在,青山学院大学経営学部GB研究所プロジェクト教授,一般社団法人新情報センター会長.社会的活動として,日本統計学会理事長・会長,統計審議会委員・会長などを歴任し,現在,国際統計協会終身会員,内閣官房統計改革推進会議委員など.専門分野は統計科学・経済統計学.主な著書にAnalysis of the Binary Regression Model (Harvard Univ.), 『日本経済と経済統計』,『社会科学の計量分析』,『ベイズ統計学とその応用』(以上,東大出版会),『ミクロ統計の集計解析と技法』,『現代統計学』(以上,日本評論社)がある。