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ゼロマラリアを目指して―グローバルヘルスへの日本企業の取り組み

北 潔[Kiyoshi Kita]

北 潔[Kiyoshi Kita]

ゼロマラリアを目指して―グローバルヘルスへの日本企業の取り組み

第4回 2019/4/27(土)
長崎大学大学院教授、熱帯医学・グローバルヘルス研究科長
北 潔[Kiyoshi Kita]

企画協力:日経アジア・アフリカ感染症会議

マラリアは結核、エイズとともに世界三大感染症の一つであり、蚊が媒介するマラリア原虫によって引き起こされる寄生虫症である。わが国でも平清盛の死因はマラリアだったとの見方もあるように以前からマラリアは存在し、国内での感染者がなくなったのは戦後である。世界を見れば現在でも毎年2億人以上が感染し、40万人以上が死亡している。重要な点は、5歳以下の小児の死亡の5%がマラリアによるものであり、とくにサブサハラ・アフリカでは10%に達する。WHOがマラリアの「撲滅 eradication」をめざしたものの、特効薬であったクロロキンに対する耐性マラリア原虫と殺虫剤耐性の蚊の出現により、プログラムは「撲滅」から「制圧 control」へと後退した。しかし多くの努力によって2000年から2015年の間に死者数は約半分に減少した。このような成果もあり、現在世界の潮流は「制圧」から「排除 elimination」をめざすようになってきた。例えば、 Asia Pacific Leaders Malaria Allianceは2016年から2020年までに6カ国でeliminationを実現して4030万人の感染を予防し、2026年から30年までにはアジア22カ国からマラリアをeliminationするというロードマップを描き、高い目標を掲げている。しかし現実はそれほど甘くはない。死者数こそ半減したが、感染者数の減少は20%にも満たない。最近のWHOのWorld Malaria Report 2018によれば感染者数は2016年から2017年にかけて200万人近く逆に増加しているのである。
 このような状況を打破するには産官学の緊密なパートナーシップにより、それぞれの持つ強みを結集し、マラリアとの闘いに挑むことが必須である。わが国でもさまざまな動きがあるが、日経アジア感染症会議ではマラリア部会を設け、マラリアのeliminationのために必要な検査・診断、創薬、予防のためのベクターコントロールの3つの領域で、企業の技術を統合した包括的な解決策の構築をめざしている。今回の講座ではそれぞれの分野からシスメックス、ネオファーマジャパン、関西ペイントの3社にお願いし、その取り組みを紹介していただき、わが国からのマラリアのeliminationに対する貢献について会場の皆様と議論したい。

プロフィール

長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授・研究科長
北 潔[Kiyoshi Kita]


薬学博士。専門は生化学、分子寄生虫学、熱帯医学、国際保健学。
東京大学薬学系大学院博士課程修了。東京大学理学部・植物学教室 助手、順天堂大学医学部・寄生虫学教室 助手・講師、JICAチームリーダー(パラグアイ国厚生省中央研究所プロジェクト)、イリノイ大学客員研究員、東京大学医科学研究所・寄生虫研究部 助教授、同大学大学院医学系研究科国際保健学専攻 生物医化学教室 教授、同大学医学系研究科 副研究科長・副医学部長などを経て、平成27年度から、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授・研究科長。