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アジアの生活と文化

タイの食文化―彩り豊かなカノム(菓子)の変遷

第4回 2017/6/3(土)

青山学院女子短期大学 現代教養学科准教授 宇都宮 由佳

タイは、日本と同じ米を主食する国である。13世紀スコータイ王朝ラムカムヘーンの碑文には「水中に魚あり、田に稲あり」と記され、魚介類が原料の調味料、ナムプラー(魚醤)、ガピ(エビ発酵調味料)などがある。この他、プリック(唐辛子)、マナオ(タイのライム)、ヤシ砂糖などを用いて、「辛くて、酸っぱくて、甘い」複雑な味を生み出している。「トムヤムクン」(エビの辛酸っぱいスープ)は、世界三大スープの一つといわれ、日本でも「グリーンカレー」とともに親しまれている。最近では食材のパクチー(コリアンダー、香菜)が注目されている。

タイ人の食事は、1日3回(朝・昼・晩)、間食は平均2回で、食後にデザートを食べる習慣がある。

菓子はタイ語で「カノム」といい、元々は「カーオ(米)」「ノム(甘いもの)」からきている。そのためタイの伝統菓子は、「カーオ(米)」が主材料のものが多く、日本のウイロウやチマキ、煎餅やオコシに類似したものが多様にある。タイの山地民には、各民族で独自の形状をした杵と臼を用い、正月に向けて餅つきをする文化もある。カノムは、日常的に食べるだけなく、仏日や祭りの際に家族や親戚とともに作り、精霊、祖先の霊へささげ、僧侶や寺へ寄進されている。

米以外に、卵を主原料とした菓子もある。これは、大航海時代に伝来したポルトガルの影響を受けたもので、「フォイトーン」(卵黄液を沸騰した砂糖液に糸状に落としていく菓子)は金色で非常に甘く、現在タイを代表する菓子の一つである。同様のものが日本にも南蛮由来菓子「鶏卵素麺」として現存しており、両国にはこのように類似する点が多く見られる。

食文化は、自然環境、社会環境(政治,経済,宗教,文化)により形成され、異文化との交流、技術発展により変化していく。

今回、1990年代からの実態調査の結果を踏まえつつ、タイの人々の食文化、特にカノム(菓子)について語りたい。そして、食を通してタイの生活文化を知っていただければ幸いである。

プロフィール

青山学院女子短期大学 現代教養学科准教授
宇都宮 由佳 [Yuka Utsunomiya]

大妻女子大学大学院修士課程修了。同大学院博士課程単位取得退学。博士(学術)大妻女子大学人間生活文化研究所助手、同大学家政学部助教を経て、現在、青山学院女子短期大学 現代教養学科准教授。
専門分野は、食文化、生活文化、生活情報。
主な著書に『文化を食べる、文化を飲む』(ドメス出版,2017年)、『流れと要点がわかる調理実習』(光生館,2015年)、『高等学校家庭科 生活産業情報』(実教出版、2014年)等(分担執筆)がある。

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